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超人の面白読書 124 日比嘉高著『いま、大学て何が起こっているのか』

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去年の6月に文科省が国立大学に文系廃止や教員系学部の改組を促した通知を出して話題になった。このコラムでも何度か言及しているテーマである。本書はその直前の5月下旬に刊行された本。いま、大学に起きている様々な事象を取り上げ、文学研究者の立場からコミットしている。内容の大半は著者のブログから書籍化したもの。全部で151ページの小さな本で、余白も充分にありかなり読みやすくレジュメ風。議論を煮詰めてまとめたというより、アンテナを高くして時折鋭敏に反応している感じだ。しかし面白い。遊び、アソビ、あ・そ・び、遊戯、モラトリアム(なんと懐かしい言葉!)―。自由でのびやか、種を創ることの意義があちこちに散りばめられていて、原石を磨く方向性を指南しているけれども、昨今の大学改革については舌鋒鋭い。

はじめに
Ⅰ 大学はどこに向かうのか
第1章 国立大学から教員養成系・人文社会科学系は追い出されるかもしれない
第2章 大学をめぐって、何が起こっているのか
第3章 「大学改革」が見ていないものは何か
第4章 大学の「グローバル化」とは何か
第5章 語学教育と覇権
第6章 「大学は役に立つのか?」に答えるならば 総集編
第7章 「大学は役に立つのか?」日本文学研究の場合
Ⅱ 変化するキャンパスと社会
第8章 東京大学「軍事研究解禁」騒動とデュアル・ユース
第9章 教室が「戦場」になった日?―新聞による大学授業への介入を考える
第10章 なぜ「はだしのゲン」を閲覧制限してはいけないのか?
第11章 遊びの世界、仕事の世界
第12章 生涯学習は私たちの社会の新しい管理形態なのか―教育再生実行会議・ドゥルーズ・学びの両義性
あとがき

目先だけを追って人生に躓かないためにも、性急な結果より過程を、技術を身につけることばかりに集中するよりももっと広く深い教養を、ロボット的になるよりより人間らしく生きることのほうに、大学の再生産装置・変換器の有用性を見出している。グローバル化とは英語を話すことだけではなく、多言語・多文化そして多様化を認識しあう、いわば、地球人としての自覚が必要で、お上がこうやれと命令するものだけでは押し付けの教育政策に他ならない。そこから社会に貢献できる優れた人材が輩出するのだろうか。本書を一読しての感想だ。本書と関連するが、昨日読んだ新聞に最近の大学改革について優れた例えをした先生の記事が載っていた。非常にわかりやすいので引用してみたい。

「コンビニチェーンに例えると話が早い。製品開発はすべて本社(文科省)がやるから、各店舗(大学)の店長(学長)は陳列方法だけ考え、売り上げを上げろという命令です。われわれ教職員はバイト店員にすぎない」(東京新聞2016年2月14日 読書欄 書く人 『文系学部解体』の著者、横浜国立大学教授室井 尚氏のインタビュー記事より)

追記 著者・編者つながりで 関連書籍紹介。
河原典史(立命館大学教授)・日比嘉高(名古屋大学准教授)編クロス文学学叢書第2巻『メディアー移民をつなぐ、移民がつなぐ』(2016年2月15日刊 クロスカルチャ―出版 定価3700円+税)が好評発売中です。※表紙は背文字も見えるように工夫して表示。

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