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超人の面白読書 112 中村忠夫著『西脇順三郎の風土 小千谷を詠んだ詩の数々』 3

序文で太田昌孝名古屋短大教授は、本書を出すそもそものきっかけは著者が院長を努める中村内科消化器科医院の「院内報」に書いた順三郎と小千谷だったこと、出版を勧めたことなどが「慧眼と実感」のタイトルで手短にまとめている。そのなかで太田昌孝先生(西脇順三郎と民俗学が研究テーマ)が、本書の「ジューピテル」の項で、順三郎が田中満太郎氏(元木津小学校長)に一般に馴染みのない植物について教えられて、それが「あんばるわりあ」や「旅人かえらず」に見事に結実していると指摘、著者の「実感」の大切さを再認識させられたと書いている。
さて、本書の第一は西脇順三郎の難解な詩についての言及だ。カイギャク、イロニー、ウイット、パロディー、遠いものの連結だと書き、西脇詩の特徴を挙げ、その中によく使われる「脳髄」を医学的な見地でカイボウしている。かくいう筆者も若いときからこの「ひとつの脳髄」にとりつかれている一人だ。そして今もってあるイメージが筆者の脳裏から離れないでいる。それは俳優伊丹十三がバラエティー番組「11PM」で脳ミソから長いながーい管を取り出しているシーンで、なかなか途切れない、そのうち途切れて脳ミソが空っぽになる。すると、耳元あたりを叩いて跳ねるとカランコロンと音がする。このナンセンスユーモアが「ひとつの脳髄」と結びついているのだ。
本書で著者が書いている。

精神科領域の言葉で「観念奔逸」という医学用語がある。私たちの脳の中では、あるものを考えるとき、過去の経験やそれまでに得た知識を総動員して概念的な知識と言語を元に思考がなされている。西脇詩の特徴は頭の中に飛来する概念が、次から次へと形成され、豊富な知識に裏付けされた言葉が次々に繰り出され、詩に表現するという極めて難しい作業の表出である。思考が脇道にそれると概念の統一性がなくなり、躁病の人や酔っぱらいに見られるような支離滅裂な現象が起こり、それを精神医学用語で「観念奔逸」と呼んでいる。西脇詩には一見このような現象に見間違えることがあるが、敢えてそのように見せることで詩をさらに面白くしているのかもしれない。現代詩ではこの「意識の流れ」を背景に詩が成り立っていることを西脇先生は詩論のなかで述べているのである(本文P.33)。

長々と引用したが、著者のいう“遠いものの連結”は、西脇詩には顕著かもしれないが、多少なりとも詩人には見られる現象のように筆者には思われる。閃きの所産は個人差があり、俗にいう直感力が働かないと良い詩が成立しにくい。ミューズ(詩神)が降りてこないと詩作ができないのだ。詩人谷川俊太郎もよくそんなことを言っている。〈続く〉

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