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超人の面白読書 107 西脇順三郎を偲ぶ会編『西脇順三郎物語』―小千谷が生んだ世界の詩人― 続

ここでは本文から二つ、西脇詩のエキスが書かれている文章を紹介してみたい。

「『アムバルワリア』(穀物祭)は日本のモダニズムを最もよく代表する詩ですが、例えば、このなかに「馥郁タル火夫」(よい香りがするボイラーマンという意味)という詩があり、「ランプの笠に関して演説する」という言葉が出てきます。「ランプの笠」と「演説」(自分の考えを話す)という言葉は普通には関係がありません。だからこの言葉を読んだとき、言葉の意味がよく分からないので、読んだ人の頭の中ではしばらく意味が浮かんで来ない空っぽ(無)のときが生まれます。実はこれが順三郎の中心にある詩の考え方なのです。難しくいえば、詩の言葉を読んでも詩を読む人の心には何も浮かんでこない「無」を作り出す、ということなのです。ありふれた言葉を少しの間でも意味のない言葉に変えることができれば、人に絶えず普通の生活のなかで、ありふれた言葉を見直すことができ、心を新鮮に保つことができるというわけです。よく見かける花も、コップが笑っていると書かれると、意味がよく分からないので、私たちの心のなかはしばらく空白(無)になりますが、意味が分かれば、見なれた花でも、新しく見直すことができるわけです。順三郎は生涯にわたって、「無」を絶対のものと考えて詩を書いていった詩人なのです。」(本文P.27-P.28)

もう一つは本文から書き写すのに疲れたので画像で見られたい。(下の画像をタップしピンチアウトす ればそれなりに読めます)最も有名な詩「天気」をわかりやすく解説している。(本文P.64-P.67)

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(覆された宝石)のやうな朝

執筆者の太田先生も書いているように、雪深い小千谷に育った西脇順三郎には光に対する強いあこがれがあったー。

青少年のために綴った西脇順三郎のこの本は、大人も充分に楽しめる本になっているだけでなく新しい発見もあったのだ。例えば、詩集『SPECTRUM』(虹の七色を作り出す器具)の「谷間」と「二つのクリスマスソング」は、本邦初公開の執筆者澤先生の訳だ。筆者も恩恵に預かった一人だ。
1920年代に英国に留学、エリオットやジョイスなどと交遊を持ち、英文で処女詩集を出し、英文学者と詩人の二足の草鞋を履いて一世を風靡した知の巨人が、最後は故郷小千谷の病院で亡くなっている。この本の主題から多少脱線するが、筆者的には西脇順三郎の英国留学(先人には幕末期の馬場辰猪、明治期の夏目漱石など歴史の舞台に登場する傑出した人物が多く留学)の詳細も知り得たら、更なる文学的源泉が分かるかもしれないしまた、絵画には相当造詣が深いが音楽の分野はどうであったか知り得たら、西脇ワールド理解がもっと深まると思うのは筆者一人だけではあるまい。一説には愛知県の私大の先生がある資料集を携えて留学時期の西脇順三郎の足跡を訪ねる旅に出たと聞いている。そして、この英国から小千谷にいる先生との交換書簡を地方の新聞に掲載されるとも。すでに不定期に掲載されているとの情報も・・・。残念ながら筆者はまだ読んでいない。大変興味あるところだ。
青少年向けの本だが多くの人に読んでもらいたい本である。今は雪深い小千谷だが、この本を読んで詩人西脇順三郎が故郷をこよなく愛したことがよく分かる。二三日前の朝のNHK天気予報の一コマで1メートル以上積雪のある小千谷の真人(まっと)地区(西脇順三郎の詩「エピック」のなかには“真人のはずれまで”の詩句がある。本文P.74)が映し出されていた。

追記 毎日新聞に「季語刻々」を連載中の俳人で佛教大学文学部教授の坪内稔典(よしのり)氏が、昨日の夕刊に3月で退職する前の現在の心境を語った。確か坪内氏は『西脇順三郎物語』の執筆者の一人、澤正宏先生と親しい人だ。その坪内稔典氏が「最もみずみずしい言葉を使うのは小学生。だから、小学生と通じる言葉を身に着け、俳句を通じて、70歳であっても小学生と同じ地平に立ちたい。そんな老人になりたいんです」と言っていた。ここでは俳句だが同じ短詩型文学の詩と置き換えてもよい。そういう感受性の最も豊かな小学生に『西脇順三郎物語』をぜひ読んでもらいたい。(2015年2月13日 記)

追記2 『西脇順三郎物語―小千谷が生んだ世界の詩人ー』の執筆者の一人、澤正宏先生の講演と論考を併載した『21世紀の西脇順三郎 今語り継ぐ詩的冒険』が エコーする〈知〉  リブレ(ブックレット形式)シリーズの1冊として2月27日にクロスカルチャー出版から刊行される。A5判・105頁 定価1,296円(本体:1,200円+税)。下記はその表紙。クロスカルチャー出版のホームページから。(2015年2月21日 記)

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