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超人の面白読書 106 井上貴子著『霊峰に育まれたスイスのワイン』 3

次に時計とオルゴールのヌーシャテル州では、イギリスの作家ジェームス•ジョイスがチューリヒ滞在中ここのロゼワイン、ウィユ•ドウ•ペルドリを取り寄せていたエピソードを紹介、それだけ美味しいということの証左だ。さらに、熊のマークの名醸ワインのベルン州、世界一のチーズを誇るフリブール州、ラインの滝やハイジの村があるスイス東部地方のぶどう産地をほど良く描く。またもや歴史が古いー。この地区のぶどう畑の基礎は7世紀に修道士たちが築いたという。世界のリゾートがあるティチーノ州のメルローワインの話。 メルローは1907年にフランスからもたされ、今やこの州の主品種という。このあとヴァレー州のミゾット館に住み着いた晩年のリルケー恋人に贈る薔薇を摘んだときに、その棘で指を刺して、その傷が基で生涯を閉じたという逸話の持主ーは、実は慢性肺血症だったというエピソードを紹介、彼の墓標に刻まれた4行詩も挿入されている。彼が愛した薔薇にも似て、人生の悲哀も歓喜も含み熟知したものだけにしか味わうことができないワインであったのかもしれない、と著者は書く。
乾杯のマナーでは、乾杯は健康を祝する行事だが、スイスでは心から相手の健康を願うのであれば目線を逸らさないことや乾杯の「トースト(toast)」は美しい女性の名前に由来していることなど教えられた。その他チーズホンジュのつくり方、25年に一度、スイスのヴヴェで開催される「ぶどう作り人の祭り」を見られたこと、古城の夫人やワイン博物館「エーグルの城」の話。本書の圧巻は幻の氷河ワインの件で感動的だ。標高が高いところではワインつくりができず、その代わり標高の比較的低い地域から樽で運び貯蔵して村人に供給する。このシステムは、19世紀後半から始まって今日まで続いているから驚きだ。ワインは飲むだけではなく(呑んべえをたくさん量産するだけ!)、その用途は料理など幅広いことだ。そして最後の章に入る前に大事なことがー。それはスイスのtasting大会で特別入賞を果たした著者のことだ。本場の実力者揃いのなか、日頃の業績が認められた著者の喜び様は計り知れないほど。その模様は二度開陳され行間に溢れていた。そして、スイスワインの神様の話もあるが、ここは著者も感謝を込めて書いているが、やはり生産者に乾杯して締めよう。Viva vins! 筆者は本書を少し持ち歩き過ぎた感もあるが、“熟成”した分味わい深かった。本書に触れていない他のスイスのワイナリーもほしいところ。続編が待たれる。読後にとっておきのもう一つの話がー。それは次回に。
井上貴子著『霊峰に育まれたスイスのワイン』A5判変形判(縦17cm×横15cm) 並製 208頁 定価:1,800円+税 2001年 産調出版刊

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