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超人の面白読書 101 高橋寛人著『危機に立つ教育委員会』

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今一番hotな話題の新刊がクロスカルチャー出版からリブレ第2号として刊行された。A5版、並製、105頁、定価1,260円。関西のテレビ局で2013年12月7日夕方にニュース番組の特集コーナーでこのhotな話題、“教育委員会のあり方”について専門家と現場の意見を織り交ぜて報道していた。
本書は、教員の人事・教科書の採択・学校の統廃合をはじめ公立の教育機関の管理運営全般を行う教育委員会について、教育行政学の専門家が、教育の本質とのかかわり、公安委員会との比較を通じてやさしく解説。この1冊を読めば、教育委員会の仕組み・歴史、そして意義と役割がよくわかる。年表や参考文献付。学生にも最適の書。

目次

第1章  教育委員会に対する批判と不満

第2章  教育委員会の意義と特長  

第3章  教育委員会と公安委員会の歴史

第4章  公安委員会との比較から教育委員会を考える

第5章  まとめ

中教審の答申が出て、首長の権限が強化され教育委員会の力が弱まるような教育制度改革案に対して、存続の方向を具体的に示したのが本書だ。ぜひ手にとって読んでほしい。

追記 紀伊国屋書店12月11日のベストセラーでは8位。14日は28位。
http://www.kinokuniya.co.jp/disp/CKnRankingPageCList.jsp?dispNo=007002002001008

追記2 著者の高橋寛人先生から「今後の動向」のタイトルでメールが入った。

12月17日の文部科学大臣の会見で、次のように述べました。


記者)
 教育委員会の改革についてですけれども、自民党の中で部会の下に委員会を設けて検討していくことになりましたが、党内の意見がまだまだ割れている状況で、大臣の中の来年の通常国会に出すスケジュール感として、いつ頃までにはその辺も含めてまとめていきたいといったお考えは、現時点でございますか。

大臣)
 やはり是非、来年の通常国会には、この教育委員会改正案を出したいと思っております。予算関連法案ではありませんので、それでも遅くとも3月の頭ぐらいには取りまとめていただく必要があるのではないかと。
 ただ、今、御指摘のように、これは閣法ではありますが、与党の中でも自民党、公明党を含め、必ずしも中教審で諮問された、中教審の答申そのものも全て一本化になっているわけではなくて、いろいろな付記事項も結構入っております。A案だけで全てまとまったということではなく、B案についても付記されておりますが、この中教審の答申をもとに、是非、与党の中でできるだけ早く、しかし、丁寧に議論していただきながら取りまとめていただき、政府・与党一体となって、次期通常国会、早めに出すような準備ができるように、私も先頭に立って対応していきたいと思います。

追記3 本書の書評が信濃毎日新聞1月19日日曜日、神奈川新聞1月26日の読書欄に掲載された。
近年、「形骸化している」「責任の所在が曖昧だ」などと批判され、改廃論議にさらされる教育委員会。著者は、教委がなぜ自治体の一部局ではなく合議制の行政委員会の形を取っているのかに着目し、警察の民主的な管理運営を目的とした公安委員会との比較から、あるべき姿を探る。
「民主主義を前提としながらも、民意や多数決がそのまま教育に反映しないような制度を設けることが必要」と指摘。民意を盾に教育を政治に従属させようとする首長らの動きをけん制する。

追記4 教育長と教育委員長統合、と今朝の毎日新聞朝刊のトップ記事。自民、公明両党は5日、自治体の教育委員会制度改革を巡り、教委を教育行政の決定権のある最終責任者(執行機関)のまま残す一方、教育委員長と教育長のポストを統合して機能強化するる案の検討に入ったと報じた。
先の中教審の答申の首長権限強化がやはり薄らいだ格好だ(2014.2.6 記)。

追記5 教育専門雑誌『内外教育』(時事通信社) 1月24日号に書評が掲載された。
大阪大学大学院教授 小野田正利氏の連載 普通の教師が生きる学校 モンスター・ペアレント論を超えて 独立の行政委員会という意味 教委「改革」の岐路(5)
教育行政学者の横浜市立大学教授・高橋寛人著「危機に立つ教育委員会」(クロスカルチャー出版)が、昨年末(昨年11月末の間違い―筆者註)に緊急出版された。この本では戦後に、いずれも行政委員会として発足した警察行政における公安委員会と教育委員会の比較が、分かりやすく説き明かされている。戦前の警察制度は、内務省による全国統制によるほか、司法警察だけではなく各種の行政警察の機能を持ち、国民の自由と権利抑圧する機関として、教育と並んで大きな負の歴史をもっていた。戦後改革において、公安委員会(都と都道府県に設置)は任命制ではあったが、警察の民主的な管理運営と政治的中立性を確保するために、住民代表からなる合議制機関として今日まで存続した。
高橋さんは教育の営みの本質から、教育行政には専門性・中立性・安定性・継続性が重要であることを強調し、現行の教育委員会制度の優位性を具体的に示し、一般行政からの独立性としての教委の意義とともに、中央段階でも国家教育委員会の設置の必要性や、教育委員が住民代表として選ばれるべきであることなど教委の発展的改善策を主張する。

追記6 書評紙「図書新聞」2014年2月15日号8頁に紹介された。評者はジャーナリストの桜井祐三氏。
2008年に大阪府知事に就任した橋下徹氏(現大阪市長)は、教育委員会が民意を反映していないとして教育委員会不要論を持ち出し、教育基本条例を制定した。現行法律上不可能な教育委員会を知事や市長の支配下に置き、教員の人事権や分権・懲戒処分といった権限まで首長の手中に収めるものだった。教育への政治的介入を排し、中立性を確保するために戦後、GHQの指令で設置された教育委員会は、“民意”を盾にした独断的な首長のコントロール下に置かれるという異常事態となったのである。
教育委員会に対しては、政治的中立性が確保されていないという批判が数多くなされてきた。事実、教科書の採択や日の丸・君が代の問題をはじめとして、教育委員が教育委員会本来の政治的中立性を旨とするあり方から逸脱するケースが多発する。だがここにきて、市民の側ではなく行政の長である知事や市長が教育委員会を批判し、それを骨抜きにする挙にでた。
本書はこうした危機的状況に対して、教育委員会の意義とその役割、その仕組み、さらに歴史や問題点などをはっきりわかりやすく解説した一書である。人間の思想信条を形づくる教育の中立性の意味を深く掘り下げるために、いま必読のハンドブックだ。

追記7 政府・自民党は、教委を教育行政の責任を負う「執行機関」として存続させる一方、現行制度では別々に置かれている教委トップの教育委員長(非常勤)と、教委事務局を率いる教育長(常勤)の役割を統合し、首長が任免する役職を新設する見通しで合意。首長や教委メンバー、有識者らで構成する「総合教育施設会議」(仮称)もつくるとしている。
法改正をめぐっては、教育への過度な政治介入を招きかねないとの懸念の声もあり、首相は首長の権限をどこまで強化するかについて「政治的中立性を確保する観点も加味し、与党で議論している」と述べた(2014年2月18日付東京新聞朝刊)。

追記8 著者の高橋寛人先生が下記の日本教育行政学会主催の公開討論会に出るようです。ご関心のある方は参集されたい。

日本教育行政学会主催 公開研究集会
「子どもの最善の利益」を尊重する教育行政の在り方とは―「教育委員会」制度をどう改めるか―

2014年3月16日(日)

東京大学「本郷キャンパス」赤門総合研究棟 A200教室

午後1時~4時

【概要】
オープニング : 企画の趣旨説明
基調報告 : 「学校と教育委員会が双方向で学びあう―子どもを中心とした
        学校づくりと首長・国の役割」
        坪井由美(日本教育行政学会第17期会長/愛知県立大学教授)

論点提起① : 「中央教育審議会における審議の経過と答申の論点」
         村上祐介(中央教育審議会臨時委員/東京大学院准教授)

論点提起② : 「危機に立つ教育委員会―教育委員会制度の意義と必要性」
         高橋寛人(日本教育行政学会第16期研究推進委員長/横浜市立大学教授)

                    (休憩)

全体討議

※筆者もこの公開研究集会を聴講した。教室は満杯、教育委員会改革についての関心の度合いが高かった。

追記9 昨夜NHKの社会問題を取り扱うことでは定評のある番組「クローズアップ現代」で教育委員会改革を取り上げていた。タイトルは教育現場の“閉鎖性”を変える?~大阪・教育改革の波紋~。

追記10 教育委員会改革の与党合意案(骨子)
•教育委員長と教育長を一本化し「教育長」を新設。任期3年で首長が議会の同意を得て任免し、罷免要件は今の教育委員と同じ
•教委は引き続き教育行政の最終決定権を持つ執行機関とする
•首長が主宰する総合教育会議を自治体に設置。教育行政の「大綱」を策定する他、予算•条例に関わる重要な教育施策の方向性、緊急事態への対処を協議
•教科書採択、学校の教育課程の編成、個別の教職員人事は教委の専権事項とする
•いじめ自殺などの再発防止を国が教委に是正できるよう、地方教育行政法を改正(2014年3月13日付毎日新聞朝刊より)

追記11 教育委員会改革関連で著者高橋寛人先生のインタビューをまとめた記事「識者評論」が地方紙に掲載された。信濃毎日新聞、長崎新聞、東奥日報など10紙以上に。記事の内容は教育の政治に従属させることは民主国家にとって自殺行為といえるに始まって、教育行政には長期的な視点と政治的中立性が不可欠と見解を表明。今回与党改革案の「総合教育会議」が新設され重要事項がこの会議で決まれば教育委員会が形骸化し、教育に対する首長の関与が強まり教育が政治に左右される危険が大きいと。また、改革案の新「教育長」に一本化されれば新教育長の権限は強大であり、その抑制策を考えたいと。教育委員会の不要な役割を奪いかねない総合教育会議は不要であり、新教育長を住民目線からきちんとチェックできるよう教育委員の住民代表制を高めることが求められるとこの記事を締めくくっている(214.3.27 記)。

追記12 教育委員会改革関連の記事。2014 年4月5日(土)付朝日新聞朝刊で教育委員会改革問題を扱った記事が掲載された。「教委見直し案 国会提出 議論性急 戸惑う首長も 」との見出しで教育委員会改革の政府案について、首長の権限強化、新•教育長や総合教育会議の新設で事実上教育委員会の権限は弱体化すると報道。全国の知事•指定市長にもアンケートを試み、また、著者の高橋寛人先生にもこの政府案が採択されればどうなるかシュミレーションを行っている。その結果、高橋寛人先生は、新制度では教育の政治的中立性や専門性は保てなくなるとコメントしている(2014.4.7 記)。

追記13 本書が教育雑誌『教職研修』2014年5月号と『教育と文化』No.75号 2014 springに書評が掲載された。一読していづれも良い書評(2014.4.23 記)。

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