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超人の面白読書 102 キャサリン•サンソム著  大久保美春訳『東京に暮す』 4

日本人がモダンになろうとする試みのなかには、ナイーブで微笑ましいものもあります。若者の中には、「モダンになる」ということがどういうことかも知らないで「モダンになろう」とする人たちがいます。彼らは帽子を斜めにかぶり、杖を振りながら街を闊歩したり、髪はショートカットで、器用な手でさっと縫いあげた格好のよいモダンな服を着た女の子たちと何時間も喫茶店にすわっていたりします。2、3年前に初めてこの風変りな若者が街に現われた時には「モボ」「モガ」と呼ばれましたが、これは「モダンボーイ」「モダンガール」(原文ではモボ、モガに傍点)の略で、後者は日本人には発音がとても難しい「girl」の日本式の読み方です。日本語にはL(エル)の音がないのでR(アール)で代用し、すぐ後に母音のu(ユー)が入ります。今では「モボ」「モガ」がすっかり定着したので、若者の中には西洋の服装だけでは満足せず、他の面でもモダンになろうと考える人たちもでてきています。
日本人が「モダンになろうとする」のが滑稽だとしたら、火消しや人力車の車夫の服を着てホテルのロビーにすわっている外国人も滑稽です。ところが今日では、日本人の服装や習慣を面白半分に真似る外国人があまりにも多いので、少なくとも東京では、外国人が何をしても驚かれなくなりました。(本文P.176-p.177)
これは著者が悲惨な戦争に突入する以前の昭和初期の東京の流行を的確に捉えている文章である。85年以上経った今でもこの日本人特有の省略の仕方は健全で、時には相当な威力を発揮する場合もあるが、この当時の言葉の縮め方もすごく、音韻的にも洒落ていた。外来語の省略形の典型的でしかも社会を映し出している語、「モボ」「モガ」も外国人の目からは自分たちにも真似る人も多かったとみえて、半ば呆れながら可笑しく活写している。銀座の喫茶店『パウリスタ』辺りで奇抜な服装をしてブラジルからのコーヒーを飲みながら屯していたのかしら。〈続く〉

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