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超人の面白読書 97 河合武著『不思議な国の原子力ー日本の現状ー』 8

この本は51年前に書かれた本だが、新聞記者が原子力問題について書いた先駆的な本だ。これは長崎、広島に原爆が投下されてから約10年後、新エネルギーとして原発を導入する動きがあって、その導入時期や何をどう進めるか、国民を愚弄しながら強力に推進する一部の財界人や政界人それに官僚が決定していくプロセスを一担当新聞記者の目を通して明らかにされたものだ。原発を導入することで莫大な利益を得ようとする財閥系会社、その前に原発先進国のイギリスやアメリカに翻弄される政治家の姿も明らかに。しかし、著者も書いているが、安全性や万が一事故が起こった場合の補償問題が議論されていたけれども、きちっとした見通しを立てずに見切り発車していたことが分かるのだ。著者はこのことに警鐘を鳴らした。この本は私たちに原発を導入することで何が変わるのか、何が問題として残るのか、よく示してくれていると思う。図らずも40年後に起こってはならない炉心溶解(メルトダウン)という前代未聞の原発事故が福島県浜通りに建造された東電福島第一原子力発電所で起こったのだ。その当時誰が予想しただろうか。そして放射能が降って福島の地域住民は今もって避難を余儀なくされているのだ。その数16万人とも。次々と明らかになって来る事故当時の政府、東電の対応、どうも適切な判断で事に当たったというよりは事実隠しが先行した格好に思えてならない。今こそ先駆的なこの本を手にとって読み返すことが必要かも知れない。大いなるヒントを読み取れるからだ。残念ながら絶版なので図書館で借り出して読むしかないが・・・。

蛇足だが昭和36年(1961)に角川新書の一冊として発売されたこの本の巻末の広告を見ると、下記のようなタイトルが並ぶ。新書版なので一般受けするものが主体のはずだが。
市村其三郎 現代人の日本歴史 120 辰野 隆 凡愚春秋 110 朝日新聞社会部編 日本人 120 江口 清 天の手袋―ラディゲの生涯と作品― 100 山田 続 老子 130 片岡弥吉 長崎の殉教者 120 河盛好蔵 江毛つれづれ草 110 幸田 文 身近にあるすきま 110 ※数字は当時の書籍価格。60年安保直後の世相が解るか―。

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