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超人の面白読書 95 ノルウェーのベストセラー作家カール・オヴェ・クナウドゴルド最新作『Min Kamp』(English title : My Struggle)“わが闘争”の紹介や書評を読む 4 

雑誌「ニューヨーカー」に書評を書いている文芸批評家でハーハード大学教授のジェームズ・ウッド氏(この批評家についてはこのコラムの最後に触れたい)は書評の最後をこう締め括っている。結局死と生は日常では繋がっていて一体になっている。下記はその書評の私訳。
ヴァルター・ベイヤミンは1930年代に書かれた自分のエッセーでこう書いている。語り手が問題にしているのは古典的な物語は死について作られているということだ。聴き手は自分たちの手を温めるてくれる火がある。しかし彼が言うには最近では家庭は冷たく空虚であると。ベンヤミンが指摘しているが、現代の死は安全に病院、死体立会所や葬儀屋へ引きずられてしまう。死の知らせの代わりに私たちが新聞などでいとも容易く手に入れるのが情報だ。まさしくそれが知らせなのだ。語る技芸が稀なら情報の普及がこの問題では致命的な役割を占めるはずだ。私が時折考えるのはベンヤミンが話している、晩年のトルストイが勉強中に使用した革製の寝椅子は死すべき運命の意向を表す象徴だったはず。トルストイの母親はこの寝椅子でトルストイを産み落とし、母親はトルストイが2歳の頃死んだ。幼少の頃に5人が死んでいるが、13人の子供たちのほとんどもこの寝椅子で生まれた。ある日同じ家具に横たわりそしてそこで死んだことは可能でなかったか。生のリズム、死のサイクルとして気づいていない時はそんな勉強中に書くのは難しかったはずだ。
現代の小説の多くはトルストイのイワン・イリッチのように死を拒絶する人たちによって書かれているようだ。アメリカでは特に多くの新しい小説(映画には言及しないが)には子どもっぽく捉えにくい性質がある。そこには莫大な情報によって私たちが生きのびることや人生の終焉に目をくらまそうとする。私たちの死する運命を思い出させてくれる真面目な現代作家がいるだろうか?43歳になるノルウェー人の小説家カール・イヴェ・クナウスゴルドは確かにそういう作家だろう。長編しかもとても生き生きとした本である『わが闘争』(ドン・バートレット訳、アーチペラゴ刊)は、大変力強く死に対して精力的なので、ベンヤミンの理論にはとても大きく眩暈のするような付録の類に思えるのだ。
『わが闘争』は現在クナウスゴルドの母国で有名だが、小説ではなく6巻ものの自伝の最初の巻。ヒットラー的なタイトル(ノルウェー語で『わが闘争』)は教養小説の普通の場所ではなく、二つの激しい戦いにもなっているのだ。一つはクナウスゴルドが10代の頃家を出て酒に溺れて死んだ父親を扱っていることだ。父親は気難しく距離感のあった教師だった。浸透すればするほど闘いは死そのものと関係し、書くことが武器にも戦場にもなるのだ。
書くことは時間の流れから一瞬を救済することだが、また、真面目に書くこととは剥き出しにもなり、検証されたり劇化されたりするのだ。この意味では死の旅を引き延ばしているようにみえる。
『わが闘争』(2009年にノルウェーで出版された)より早くにクナウスゴルドは自分のコンテキストを素早く紹介している。2008年3月午前8時を過ぎた頃、ノルウェー人の小説家はストックホルムのアパートで椅子に腰掛けている。スウェーデンのバンドドゥンゲンを聴きながら、また、書いてしまったことについて考えながら。このナレーター(カール・クナウスゴルドと称し、はっきりと実生活の著者と同じと分かるが)は30歳代の後半で3人の子供がいる。〈続く〉


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