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超人の面白読書 95 ノルウェーのベストセラー作家カール・オヴェ・クナウスゴルド最新作『Min Kamp 』 (English title : My Struggle) ”わが闘争”の紹介や書評を読む 3

今年一番の収穫と誉れの高い本だが、残念ながらまだ日本語訳が出ていない。一家族の死と愛がテーマのこの長編にはヴァルター・ベンヤミンの『パーサージュ論』やマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』を想起させたり、アヴァン・ギャルド的な書きぶりなどいろいろと指摘されている。そして何よりこの長編小説はそもそも小説のジャンルに入るのか、あるいは自伝あるいは回想のジャンルなのかも論争の的らしい。原作の題名には「小説」と表記されているというが。事実第6巻はヒットラーの『わが闘争』との比較検討も施されたエッセイも含まれているという。米語版版元の一つ、Archipelago Booksの創始者は小説と回想記の中間に位置すると語っている。アメリカのノルウェー文学の批評家は作者はこの本で自分探しをしているようだし、また、現実的になることや自分に閉じこもろうとしているのではと推測する。保守的なノルウェー人は父親が粉々になってしまうことまで描き出したことにショックを隠しきれず、恥かしいと感じているという。しかし小説家は心の状態を描く職業で自分の恥部を晒すことも度々起こるのだ。日本には伝記のジャンルも回想記のジャンルもないが、それに近い私小説の類はある。
現に作者は出版前の原稿段階で親族に見せたが、顰蹙を買い叔父からは名前を替えろと言われたり、母親からは電話で書くのをやめて、子供たちのことも考えてと言われたりしている。作者は自分の母親に3巻以降は読まないよう忠告したにもかかわらず母親はそうしなかったと語っている。父親のことなど家庭の醜い出来事を検証すれば他人が判斷できるはず。だからこの6巻ものの長編小説を書き終えた作者の言葉には晴れ晴れした歓喜にも似た声を聞くことができる。小説を書き終えてもはや作家でなくなったことへの喜びがあったのだ。これから先書くかどうかは分からないと語り、自分は本の印税も入ったので、スウェーデンの片田舎へ移り住み小さな出版社も見つけたという。書いている時は地獄だったが書くことができたから嬉しいとも。
ここまで「ニューヨーク タイムズ」や先週号の雑誌「ニューヨーカー」を参照しながら足早に綴った。〈続く〉

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