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超人の面白読書 94 アメリカの文芸誌「A PUBLIC SPACE」最新号でスウェーデンの女流詩人の作品を読む

毎日新聞7月の文芸時評で文芸評論家の田中和生氏が、今回の芥川賞受賞者の作品に触れてリアリティがなく言葉が独り歩きしている、と指摘。取ってつけたリアリティが見抜かれてしまったということかー。作家の資質が問われるこういう作品を選ぶ戦後生まれの選考委員の文学観はいかがなものかとも取れる書きっぷり。興行的な色彩が濃い芥川賞をチクリ。小気味いい。

さて、海の向こうのアメリカから文芸誌の最新号が届いた。これで16号目。文芸誌ではよく続いているが実情は苦しいらしい。2.3ページを読めばアマゾンドットコムなどに支援を受けていることが解る。柴田元幸責任編集の雑誌「モンキービジネス」ともコラボしている。相変わらずグローバルかつローカル的、斬新な造形作家の作品もフォローしている感じだ。ニューヨークはパリよりもアートな街でファッショナブルでエネルギシュ、それはこの雑誌にも反映しているようだ。高級的な「ニューヨーカー」よりこの雑誌が目指すところはタイトルが示す通りだろう。A PUBLIC SPACE。ガス・パウエルの「negative space」のカット写真は、さりげない日常を映し出していて面白い。都会の一断面はオランダのストリートみたい。ここには華やかさはないがどの写真にも一つの視点が感じられる。
内外の短編、エッセー、詩で構成された164ページ。寄稿者は次の通り。SAMUEL AMADON、JOSHUA BECKMAN、MARK A. COLEMAN's JON COTNER、JILL DESIMINI、GUILlERMO FADANELLI、GRAHAM FOUST、ELIZABETH GAFFNEY、MICHAEL HOFMANN、NINA HORSTMANN、KATHLEEN JAMIE、DAVE KONOPKA、JACK LIVING's KRISTINA LUGN、SIMONE MUENCH、GUS POWELL、C.F.RAMUZ(1878-1947)、DONALD REVELL、ADRIENNE RICK(1929-2012)、WARD ROBERTS、MARIANA SANTOS、ROBIN SCHIFF、JILL SCHOOLMAN、ANNIE SLONIKER、PETER STAMM、JOEL STREICKER、ROBERT SULLIVAN's SUZANNE SULLIVAN、PAUL VERLAINE(1844-1896)、ELIZABETH CLARK WESSEL's の30人。この中で詩、特に翻訳された詩の一つに注目して私訳を試みた。

クリスティーナ・ルグン作
エリザベス・クラーク ウェッセル訳

今来てほしい

今来てほしい
遅くとも今来てほしい
電卓を持って
グランドピアノも
持って来て
バンドエイド アスピリン オーデイコロン それに防腐剤用の石けん
ソーダ水のびん ジンのびん ウィスキーのびん
それに歯磨き用のマッグ
アジャックスのびん 使われないままのピルの大きなパック 観葉植物
ピザ
とマスクを
今来てほしい
遅くとも今来ないと
嵐がさらっていく
明かりを消して
しょく台をつけて
電話のジャックを抜いて
マットレスを吹き飛ばして
涙を乾かせ言い聞かせて
陽がオペラハウスに沈むと
そう家に帰る時間
そのときあなたが来る
真心と散弾銃を携えて
だからもう腹を立てない
凝った居間で
だからもう窓の棚に立たない
ちょっぴりお馬鹿に見えて
犬が手に登った
だから地下鉄にもう忍び込まない
やっかいな唄を携えて
自分の壊れている唇に
今来て頂戴 遅くとも今来て頂戴
でないと我慢できないから
本当にしつこいから
普通の女だから
全く健康的で適当に太ってて
かなり家庭的で世話好きしかも神経質
親切心があって甘ちゃんしかも大変怖がり
好奇心や自分には気が付かない気分もあって

クリスティーナ・ルグン氏は1948年スウェーデンのチエルプ生まれ。詩人で劇作家。2006年からノーベル賞委員を務める。8冊の詩集、18冊の戯曲があり、セルマ・ラーイェーフ賞やベルマン賞を受賞。ストックホルムに自分の劇場を持つ。孤独、死や中年の危機をイロニー、シニシズムやブラックユーモアを交えて描く。自分の名前の「Lugn」が英語の「calm」を意味することから冗談でこの二重の意味を使う。例えば1984年の作品に『Lugn bara Lugn 』(calm/Lugn Just Calm/Lugn)がある。筆者的には初期の『Om jag inte』(If I Not)(1972)や『Hej då, ha det bra』(Good Bye, Have A Great Time(2003)を読んでみたい。ハルキ ムラカミのファン?ある新聞社のインタビューではハルキ ムラカミの『ねじまき鳥クロニクル』をトランストロンメル氏(2011年のノーベル文学賞受賞者)も読んでいて褒めていた由。(一部ネット情報から)
このライトヴァース的な詩にもユーモアがたっぷりだ。原文ではピリオドが結構多いが、日本語訳ではあえて反映させていない。流れが途切れないようにとの配慮からだが、果たしてどうか心もとない。


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