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超人の面白読書 93 田中慎弥著『共喰い』 4

「ほじゃけえちゃ、琴子探してあっちィこっちィ行ってみよったら、社の鳥居のとこに子どもらあが溜っちょってから、馬あ君まだか、千種ちゃん待っちよるのに、言うもんじゃけえ上まで行ってみたら、あの子がおったけえちゃ、ほんとは琴子がよかったんじゃけどよ遠馬、ほじゃけど、お前も分かろうが、ああ?我慢出来ん時は、誰でもよかろうが。割れ目じゃったらなんでもよかろうが。お前、あの子、まだ殴っちょらんそか。」
晩飯はまだなんかと訊く口調で行ってまた歩き出し、父に何も言えないまま、遠馬も反対方向へ走り出す。

上記は本文中からの引用。下関弁での親子の会話、方言の軟らかい味わいが読み取れそうだが、そのベールを剥ぐととんでもない行為の、残忍さ、悔しさ、やるせ無さが滲み、言葉の表象が無化している。方言でこの感の事情を巧みに表現しているあたり、やはり表現力に尋常でないものを感じる。作者田中慎弥氏は『源氏物語』を愛読、何度も通読したという。その感じがトレースされて現代に蘇生したと言ったら大袈裟だろうか。むしろ西村賢太らと同様に身辺雑記風の私小説、Ich Roman 文学のジャンルに属すると理解した方がよさそうだ。それにしてもムズムズ、ジメジメのイメージー。(続く)

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