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超人の面白読書 93 田中慎弥著『共喰い』 6

中上健次が『岬』で芥川賞を取った時に、筆者は即座に雑誌「文藝春秋」を買い四畳半のアパートで寝ころびながら読んだ記憶がある。 その場面は鮮明に覚えているのに、肝心の出だしの文章や内容が一向に思い出せないでいる。それで思い切って文庫本を買ったのだ。初版は昭和53年12月なので大分昔だ。しかし古本は新刊本より少し高価だった。そして出だしの二三ページを読み直してみた。残念ながら記憶に残っていなかった。飯場での話、路地・・・。

さて、選評である。芥川賞候補は5回目、明らかに力強さを増し、文章が躍動し作品の密度が高まっている。冒頭の海に近い淀んだ川の描写には暗い力がひそみ、それが全篇を貫いている。(黒岩千次)血と性の生臭い悲劇をくぐり抜けた先のカタルシスまで、弛むことなく緊張が続き、濃密な空気を持続させている。(高木のぶ子)この文章には遠近法があると感心した。しかし、それは、世にも気の滅入る3D。何故だろう。時折、乱暴になすり付けられたように見える、実は計算されたであろう色彩が点在して、グロテスクなエピソードを美しく詩的に反転させる。(山田詠美)
山田詠美が指摘しているように、生理用品は拘置所が出してくれるのだろう、と遠馬は思った、この最後のところは蛇足だろう。「なあんもない。」で終わっている方が余韻があっていい。(続く)

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