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超人の面白読書 91 羽田 正著『新しい世界史へ―地球市民のための構想』 6

現行世界史の通奏低音は、ヨーロッパ中心史観と国ごとの異なった歴史の重視であることと書いたあと、著者は新しい世界史構築の考え方を提示する。「世界はひとつ」だがそこに住む人の個性、境遇、考え方は様々なのだから、多様な世界史の理解と叙述がある方が自然なのではないか。同じ地平に立ってさえいるなら、全員が同じ方向を向く必要はない。世界史の書き方は複数あるべきだ。そして具体的な方法を述べる。
2 三つの方法 目指す方向、この項で著者は外交官兼原信克著『戦略外交論』の中から引用して次のような五つのキーワードを参考にしながら三つの方法を提示する。
①法の支配(いかなる権力も広義の法の下にある)
②人間の尊厳(人間を大切にする)
③民主主義の諸制度
④国家間暴力の否定(平和の追及)
⑤勤労と自由市場(正当な報酬と自由な交換)

(1)世界の見取り図を描く
(2)時系列史にこだわらない
(3)横につなぐ歴史を意識する

以下この3点を詳述する。そして、本書の主張の小見出しではこの本の言いたかったことが綴られる。
地球社会の歴史は、「世界はひとつ」と捉えるとともに、世界中の様々な人々への目配りを劣らず、彼らの過去を描くものでなければならない。新たにそのような世界史を構想するべきだ。最後に近い未来の実現化に期待しつつ、著者はこう締めくくる。
最近、人文学の領域で、新しい世界史の構想と同じような動きが軌を一にして起こっている。新しい世界史と似た考え方に基づく世界文学の構想や国民文学という枠組みの相対化、中国哲学やフランス思想など国民国家別に分類された哲学思想研究の見直し、宗教や美といった概念の再検討など、いくつもの新しい傾向を指摘することができる。これら新しい学問がまとまってやがて大きな知の潮流となり、目に見える成果を次々と出しはじめてやっと、人々の世界の見方は変わってゆくだろう。

本書は構想力の本だ。決して難しいことを述べているわけではないが、イスラーム世界の歴史研究者として今までの欧米中心史観から脱却すべきと説いているのだ。だが、実現にはそれなりの労力が伴うのも事実だろう。かつて筆者は当時の橘女子大学(現在の京都橘大学)の著者の研究室でお会いしたことがある。当時から歴史研究者の間では若いが優秀な学者だと聞いていたのだ。

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