« 超人の面白読書 86 吉村昭著『三陸海岸大津波』 3 | トップページ | 超人の面白読書 86 吉村昭著『三陸海岸大津波』 5 »

超人の面白読書 86 吉村昭著『三陸海岸大津波』 4

 さもその場にいたような書きっぷりで妙に臨場感がある。これは緻密な現地調査や証言などを踏まえた上で描いた作家の想像力の賜物なのだ。情景は死体がごろごろしている地獄絵だ。残酷物語そのもの。逃げ遅れて10メートル、20メートル以上ある大波に襲いかかられまた、引き波に多くの住民がさらわれてしまったのである。この光景は被災地後の海岸近くに立ってみれば分かる。

改めて目次を眺めてみよう。

まえがき
1 明治29年の津波
前兆
被害
挿話
余波
津波の歴史
2 昭和8年の津波
津波・海嘯・よだ
波高
前兆
来襲
田老と津波
住民
子供の眼
救援
3 チリ地震津波
のっこ、のっけとやって きた
予知
津波との戦い

参考文献
あとがき―文庫化にあた って
再び文庫化にあたって
解説 記録する力 高山 文彦

 あとがきや解説を再読。次に目を留めたのは、やはり著者もあとがきで触れているように『風俗画報』の絵だ。明治29年の津波―挿話の章で3枚挿んである。〈唐桑村にて死人さかさまに田中に立つの図〉、〈広田村の海中魚網をおろして50余人の死体を揚げるの図〉、〈釜石町海嘯被害後の図〉、〈溺死者追弔法会の図〉、〈志津川の人民汽笛を聞て騒乱する図〉や〈釜石の永澤某遭難の図〉は当時の大津波被害の様子をリアルに伝えている。ビジュアル的に秀作揃い。交通の便が悪い〈陸の孤島〉に入ってリポートした記者魂を著者もあとがきで褒めていた。それは3.11以後危機に立つ地方紙にも見られ、新聞の原点を否応なしに見せつけられた思いだ。その一つ、石巻復興新聞の健闘ぶりはその典型的な例だろう。

|

« 超人の面白読書 86 吉村昭著『三陸海岸大津波』 3 | トップページ | 超人の面白読書 86 吉村昭著『三陸海岸大津波』 5 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/77059/51993582

この記事へのトラックバック一覧です: 超人の面白読書 86 吉村昭著『三陸海岸大津波』 4:

« 超人の面白読書 86 吉村昭著『三陸海岸大津波』 3 | トップページ | 超人の面白読書 86 吉村昭著『三陸海岸大津波』 5 »