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超人の面白読書 76 カレル・チャペック著『北欧の旅』 4

 オスロの章ではノルウェー人は300万人(もちろん当時)もいないのにリクスモールとランスモール(現在ではブ―クモールとニーノシュクと呼ばれている)の二言語があること、即ちディグロシア(一言語内に二変種併用*P.90の註参照)に言及したあと、チャペックは言う。わたしの考えでは、ノルウェーの言語状況から一つの教訓が生まれる。―言語が、その時代に話され考えられるように、そしてエリートか一般大衆か、町か田舎かを問わず、民族全体の言葉となるように、作品を書くこと。わたしは、これが用意でないことを知っている。だが、それだけ努力するからこそ、文学は芸術と呼ばれるのだ。
 ベルゲンまでの旅では、ベルゲン鉄道、旅の途中の駅や村、山岳地帯、渓谷とフィヨルドと自然の美しさを讃ながら微細に書き進む。このベルゲン鉄道の起伏に富んだ風景は、世界有数の風光明媚なところでよく知られている。筆者もこのベルゲン鉄道については古くはノルウェー人からもらった絵葉書や地理本で知っていたし、また、今では地上波・BS放送の番組でもよく見かける。ベルゲンの街並みを詩情豊かに描いた絵を見ると、兄ジョセフはもちろん画家だが、チャペック自身もなかなか絵の才能に恵まれた作家だ。特に中世のハンザ同盟の面影を残す木造倉庫、何という味わい、一見メルヘン風―。読者諸兄よ、本文106〜107ページをごらんあれ。20101130132048_00001 ホーコン・アダルスティン号の船内の人間模様を半ばユーモラスに半ば皮肉を交えて描いているが、これはこの作家の得意とする人間観察の賜物だろう。アメリカの宗教団体に注ぐ冷ややかな目、イッケ・アルコール(船内にはアルコールがない。アルコールを扱う専売公社がある寄港地は限られている)、当意即妙的な会話、妻の女優オルガとのちぐはぐな会話等々ホーコン・アダルスティン号には人生の色々なものが積み込まれているようだ。それをこの作家が嗅いで目に余るものは吐き捨てている。ある意味では船旅は退屈だけれども飽きさせない、この間の挿し絵がそれを物語っている。


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