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超人の面白読書 76 カレル・チャペック著『北欧の旅』

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 人間は北指向の人間と南指向の人間とに分かれるという。若い時代に読んだ作家・評論家・北欧文学者の山室静氏の評論の中に、私は北指向といった言葉が書かれていて大変印象深かった。今もって耳の片隅に残っている言葉だ。次にヴィトゲンシュタインが哲学的命題に取り組んだところもノルウェーの山村。これも北。
 そんな昔を思い出してくれた旅行記が新訳で出た。カレル・チャペック著『北欧の旅』。時は1936年(昭和11年)、第二次世界大戦前のヨーロッパ、そのほぼ中央に位置している旧チェコスロバキアが生んだ著名な作家の一連の旅行記の一つである。主にスウェーデン、ノルウェーの旅が中心だが、注目に値するのは、ジャーナリストでもあったチャペックが、この旅の途中でスペイン内戦に触れて書いていることだ。それは訳者もあとがきで触れている。ここには作家の憤怒がある。また、学名で書けるくらい植物に造詣が深く、それはこの『北欧の旅』でも遺憾なく発揮されている。特にノルウェーのベルゲンからノールカップの章で顕著だ。もちろん園芸関係の本も出した作家だから当然といえば当然だが(そう言えば、山室静氏も植物好きだった)。
 カレル・チャペック自身による挿し絵―2、3ページに1枚程度描かれている―は、読者に一服の清涼感とほのぼのとした安堵感を与えていることもこの本の特徴で、さながら“旅の絵本”の様相である。〈続く〉


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