« 超人の面白読書 73 三浦哲郎著『忍ぶ川』 4 | トップページ | クロカル超人が行く 142 横浜野毛 ジャズ喫茶『ちぐさ』 »

超人の面白読書 73 三浦哲郎著『忍ぶ川』 5

 印象深かったところを本文から引用した。小説の舞台はもう半世紀前だ。しかしそこには貧しくとも愛情豊かな人間の基本的な営みがあった。まだのどかで家族の信頼が篤かった時代―。私大生には近親の避けて通れない血の陰がつきまとってはいるものの、誰かの言葉ではないが、それが単純なストーリーに陰影をもたらしていると(評論家秋山駿の言葉)。続編の『初夜』には子供をつくることへの怖れが、そして父親の死をきっかけに子供を持つ決心をする。それにしても最初は流産せざる得ない状況だったが、本気で子づくりに精を出すあたりの、特に生理が来たか来ないかの女の生理現象にともなう心理描写は見事といっていい。『忍ぶ川』の続きの『帰郷』まで読了した。いい小説を堪能した。
 近現代文学の傑作をしばらく読むつもりだ。大分前に梶井基次郎作『檸檬』も丸善本店で立ち読み、斜め読みしたが。小説に京都の丸善(今はない)が描かれていて、丸善京都支店が閉店間近に記念にとこの本を買っていく人が多かった評判の文庫本だ(筆者もこの現場を見たが)。初めは店の人も気づかず、そのうち平積みやら本物のレモンを置いたりして商魂逞しさが全面に出て来た。それで嫌気がさした。筆者は天の邪鬼だから。しばらく忘れていたら、毎日新聞(2010年10月3日)の書評欄に川本三郎評・柏倉康夫著『評伝梶井基次郎―視ること、それはもうなにかなのだ』が掲載されていた。静かに愛されている作家で、この評伝は力作と締め括っていた。

|

« 超人の面白読書 73 三浦哲郎著『忍ぶ川』 4 | トップページ | クロカル超人が行く 142 横浜野毛 ジャズ喫茶『ちぐさ』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/77059/49682458

この記事へのトラックバック一覧です: 超人の面白読書 73 三浦哲郎著『忍ぶ川』 5:

« 超人の面白読書 73 三浦哲郎著『忍ぶ川』 4 | トップページ | クロカル超人が行く 142 横浜野毛 ジャズ喫茶『ちぐさ』 »