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超人の面白読書 68 NHK テキスト『知る楽 こだわり人物伝』など 続

 筆者の書棚には森有正関係の本が何冊かあったが、今はどこかにしまい込んでいて出て来ない。このテキストは森有正の思索の展開を「孤独」、「絶望」、「時間」、「出発」の4つの言葉を軸に作家片山恭一氏が自由に語る形式を取っている。暗く寂しい感じのエッセーだが、根源的な問いがここにはある。39才からパリで客死する65才までの26年間、デカルトやパスカルの専門家はまた、留学・研究先では異邦人、孤独の中から独自の森有正ワールドが生まれた。抽象的な言葉の根源を尋ねることによってより内面的な有り様がみえてくる、それを紡ぎ出す、思索後の新たな論理展開と彼独自の倫理観がみえてくるのだ。片山恭一氏の解説も解り易い。だが、哲学は言葉の定義が問題だ。そこが難しい。キルケゴール、ハイデガー、レヴィ=ストロース、ミシェル・フーコー、サルトルなどの哲学者や文化人類学者の名前も出てくる。結局は西洋人、東洋人を超えて自分は一体何者なのかをこの「孤独」、「絶望」、「時間」、「出発」の4つの言葉を通じて答えを引き出していく己に課した旅だと思うのだ。これは語り手の片山恭一氏がうまく引き出している。あとは各々がこの時代を生きていくために(全うな人生を生き抜くために)含蓄のある言葉を充分に噛みしめてよく考えよと言っているような気がするのだ。森有正は蘇ったか―。今の先が見えない時代に示唆を与えてくれる哲学者の一人だろう。

 毎日新聞書評欄(2010年3月28日)のこの人・この3冊は川口喬一筑波大学名誉教授の選でジョージ・スタイナーの著作、『言語と沈黙』、『文学と人間の言語 日本におけるG・スタイナー』、『バベルのあとに』を取り上げていた。この選者はコメントの最後にこう締めくくった。脱領域の漂泊者を標榜する彼にして、自分の出自にこだわるこの西洋文化中心主義には疑問が残ると。ジョージ・スタイナーを上回る評論家が日本で生まれないだろうか?

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