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超人の面白読書 66 不破哲三著『マルクスは生きている』

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 去年の秋から鞄に入れたままずっと持ち歩いていた本が、やっとのこと読み終えた。不破哲三著『マルクスは生きている』(平凡社新書 2009年6月第3版 本体価格720円)である。もう20年以上前になるが、その時―日本ではバブル期、ベルリンの壁崩壊、その後に東欧諸国での革命、ソ連体制崩壊など体制崩壊が続き、自由主義の嵐が吹きまくった、その影響もあってもはやマルクスものは全然流行らなくなり売れなくなったと、ある親しい大学の研究者と話していた―には、現にマルクス・エンゲル全集など左翼系ものを刊行している出版社はこれから大変だとあちこちで噂が立ったほどだった。あれから20年以上経った今、バブルは弾け金融資本主義の行き過ぎの修正・再生の目処は充分に立たないまま、二体制(政治体制は共産党一党独裁と経済体制は市場経済)維持の中国の台頭が現実化し始め、同時にエネルギー問題、地球温暖化問題、南北問題、民族・宗教問題を含めた地域紛争、貧困と格差それに教育問題、地震などの自然災害問題等々が浮上している。一昨年の暮れには派遣切りで職を追われた人達の救済がマスコミで大々的に報じられ政治問題化した。まさしく“マルクスは生きている”、くさむらの下で眠ってはいない、資本主義体制の暴走に警鐘を鳴らし続けているのだ。
 この本はマルクスと現代を切り結び、資本主義の病理を分析して労働者の真の解放を説いたマルクスワールドの現代的意義を、長い間政治の舞台で活躍した著者ならではの切り口で解き明かしてくれる。それは政治的闘争で培った、謂わば、生きた理論の重層化に他ならない。その舌鋒はやわらかくみえても鋭い。政治評論家の森田実氏に言わせれば、我々とは頭の構造が違うのだという(ネットで読んだ)。
 さて、本書をみてみよう。第1章 唯物論の思想家・マルクス 唯物論は現代の常識 弁証法の方法と自然の全体像 社会観―マルクスは何をもちこんだか 第2章 資本主義の病理学者・マルクス マルクスは「搾取」の秘密を解きあかした 労働者の苦難の根源をついて 資本主義の「死に至る病」―周期的な恐慌 究極な災害―地球温暖化 第3章未来社会の開拓者・マルクス 未来社会への変革のカギは? マルクスの未来社会論の特徴点を見る ソ連とはいかなる存在だったか マルクスの展望と現代社会 以上が目次。著者はあとがきでマルクスのさまざまな誤解を解くことも考えて、マルクスの理論は、マルクス自身の言葉によって、その骨組みやすじ道を再現することを基本としたと書き、この本から何か新しいものを少しでも読みとっていただきたいと期待する。
 筆者的には物理学の話も面白いが(本当に理解できたか疑問)、マルクスが日本の情報をオールコックの『大君の都―幕末日本滞在記』から得ていたことの事実やソ連時代のスターリンの言及に特に興味がひかれた。著者は毎日新聞(2009年6月26日の夕刊)のインタビューでBBC放送が96年に「過去1000年の最も偉大な思想家は誰か?」のアンケート調査に、「マルクス」と答えた調査結果を紹介していた。筆者の書棚には廣末渉編『資本論を読む』(1986年刊 岩波書店)や世界の名著『マルクス エンゲルス』(古本屋を探してⅡ、Ⅰという順に再購入した)読みかけのまま鎮座している。著者不破哲三氏は現在80歳、著書は150冊を超えるという。なかなか手応えのある新書である。しかも平凡社新書からの刊行だ。

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