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超人の面白読書 54 佐伯一麦著『芥川賞を取らなかった作品たち』 続

第1章 太宰治「逆行」
第2章 北條民雄「いのちの初夜」
第3章 木山捷平「河骨」と小山清「をぢさんの話」
第4章 洲之内徹「棗の木の下」
第5章 小沼丹「村のエトランジェ」
第6章 山川方夫「海岸公園」
第7章 吉村昭「透明標本」
第8章 萩原葉子「天上の花―三好達治抄―」
第9章 森内俊雄「幼き者は驢馬に乗って」
第10章 島田雅彦「優しいサヨク嬉遊曲」
第11章 干刈あがた「ウホッホ探検隊」
[巻末対談]文学章の選考はスカウトであり、福祉だ

 目次から作品名を取り出してみた。著者ははじめにで世間の評価を別にして、自分の評価で文学作品を読む目を持ってもらいたくて、平成18年から20年にかけて仙台文学館で連続講座を持ったと書く。受賞したかどうかに関係なく「良い作品は良い」。それをもう一度読み直すのがこの本の趣旨だという。残念ながら筆者はこれらの12作品をほとんど読んでいない。芥川賞は今年で第140回を数えるが、去年の第139回・平成20年の上半期は『時が滲む朝』を書いた中国人の楊逸氏。外国人初の受賞だ。ごく最近では非漢字文化圏のイラン人の文学新人賞が決定したとのニュースも入っている。隔世の感を禁じえない。
 さて、芥川賞は昭和10年に文藝春秋社の菊池寛によって芥川龍之介の業績を讃え創設された。毎年上半期は7月、下半期は1月に発表されている新人登竜門の最も権威ある文学賞だ。その選考にもれた作品を読むのだ。なかなか意欲的な試みだ。筆者的に興味を引かれたところを本文から引用してみよう。

それにしても芥川賞の選評で「古風」と言われたら、二度と立ち上がるのは難しいくらいの、新人にとってはきつい言葉です。僕が小説を書きはじめた頃に「自分の作品は古風なところがあるから」と、ある編集者に弱音を吐いたら、その人が「自分から古風と言ったら、あんたはもう作家になんかなれないよ」と烈火のごとく怒ったんです。古風と言われるのは、作家にとっては一番屈辱的なこと。才能がないと言われるより大変なことなのかと思いました。

著者も書いているが、ここに取り上げた12の作品の作家は、最後の2人の戦後生まれの世代を除けば、戦前生まれの作家だ。否応なしに「戦争」の体験が小説に反映している。そこをどう読むかがキーポイントだろう。川端康成、小林秀雄、井伏鱒二、佐藤春夫、永井龍男、丹羽文雄、瀧井孝作、大江健三郎などの選考委員の言葉はその人なりの文学観を語っていて大変興味深いのだ。最近の選考委員には女流作家も入っている。筆者は特に北條民雄「いのちの初夜」、 小沼丹「村のエトランジェ」、吉村昭「透明標本」、萩原葉子「天上の花―三好達治抄―」くらいは手にとってみたい。著者のコメントも解りやすく、会場の参加者の声もよく反映している。ただやはり取り上げる作品にはどうしてもその選んだ人の意向が出る。この本は著者自身が読み込んだ愛おしい作品たちの開放である。未読の作品の概説も知りえて、一気に読めてしまう一冊だ。巻末の芥川賞候補作一覧も大いに参考になる。本文244ページ。
 ところで、佐伯一麦著『ノルゲ』はまだ読書の途中だ―。


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