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超人の面白読書 53 白洲次郎著 『プリンシプルのない日本人』

200903221501000200903221502001今朝神奈川県大磯町にある『吉田茂邸』全焼とのニュースが飛び込んできた(このところ歴史的建造物の火事が相次いでいる)。火事の原因が漏電なのか放火なのかはまだ判明していない(家には鍵がかかっいたとの新たなニュースも報道された)。戦後の政治の裏舞台を演出した場所だけに貴重な文化財の損失だ。この『吉田邸』には幼い時に行ったことがある麻生首相も、非常に残念とテレビでコメントを出していた。筆者はかつて二三度この場所を"通り過ぎた"ことがある。
そしてもう一人、戦後史の重要な場面をこの邸の持ち主であった吉田茂首相と共にした白洲次郎―(白洲次郎もこの邸を訪れていた)。筆者はそのテレビドラマ「白洲次郎」をまだ第1回目だけしか見ていない(個人的な事情があって見れなかった)。今再放送に期待して続きを見たいと考えている。

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 3週間前に、青柳恵介の『風の男 白洲次郎』を面白く読んでちょっとした書評を書いた。そして続きを書こうと挿入された写真を何度か眺めた。終戦直後の白洲次郎、祖父の白洲退蔵、ユニークな父の白洲文平、ハイカラな自動車、終生の友人ロビンとのツーショット、新婚当初の正子夫人との写真、なかなかユニークな草案、ジープ・ウェイ・レターの図、吉田茂とGHQの高官との写真、S.G.ウォーバーグ社にある肖像画、play fastと書かれたTシャツ、三宅一生氏デザインの服をまとった写真、晩年の白洲夫妻などだ。写真も生きた証言になっているのだ。

 白洲次郎著『プリンシプルのない日本』(新潮文庫 平成20年11月20刷)は、著者自身が『文藝春秋』に発表したものをまとめたものの文庫化だ。戦後の1951年から約5年くらいの発言集だ。友人今日出海の野人・白洲次郎の巻頭から始まって、白洲次郎・河上徹太郎・今日出海の座談会「日本人という存在」で終わり、辻井喬のプリンシプルのあった人を加えている。ほとんどは時事的な問題に対しての白洲次郎の簡単にして明瞭な見解の軌跡である。講和会議に出席して(草稿文を英文から日本文に直して演説させた有名な話)、まっぴら御免、占領政治とは何か、プリンシプルのない日本、吉田茂は泣いているなど雑誌に書いた直言集。一読して痛快と言うか、非妥協的な産物が徘徊し、気に食わないから吼える、文句を言うなど直截的で解りやすいのだ。プリンスプルとは日本語で原理原則、あるいは筋を通すことだと言い、それを貫き通した英国風カントリージェントルマンを地で行った人だ。だから筋金入りの西洋かぶれだが、その生き様が面白く、現代に受けるのかも知れない。スケールの大きいな、時代を先取りした国際人だ。祖父銀蔵、父文平、正子夫人、そして吉田茂、役者に遜色はないのだ。だから面白い。小林秀雄、河上徹太郎、今日海、高見順、川口松太郎、大岡昇平、水上勉、中野好夫、千田是也などの文人との知己も多かったと解説で青柳恵介が書いている。茶坊主と陰口を叩かれても一向に気にせず、戦後のある時期日本の将来に賭けた男は、風の如く疾走したのだ。知り合いの作家には、なぜ直接自分の意見を言わない、とズバリと突き、日本人と議論していてしばとしばそのプリンシプルが解らないと言い、電力の問題や経済のこと、政治や社会、教育、それに憲法のことなどが語られている。吉田茂爺さんには特に思い入れが強かったようだ。とにかく白洲次郎言行録はおもしろい。
筆者が特に感銘を受けたシーンは、母の49日に兵庫県丹波地方にある菩提寺での納骨のシーンが書かれた文章だ。その日はちょうど台風の日でコンデションは最悪、母を想う白洲次郎と末妹の様子が珍しく湿り気を含んだ文章で書かれていた。
「葬式無用、戒名不用」の遺言2行が白洲次郎らしいと書いた作家・詩人の辻井喬氏は、2週間前の毎日新聞書評欄の好きなものコーナーで吉田茂の性格に言及して、こういう人も好きだと書いていたのが印象的だ。人間の出会いの妙を改めて想った。最後に筆者が知らないだけかも知れないが、彼が書いたキングス・イングリッシュを読みたいものだ。

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