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超人の面白読書 46 堤未果著『ルポ 貧困大国アメリカ』 5

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第3章は公的医療の話だ。医療にかかる費用が具体的で示唆的である。今日本でも病院が経営困難に陥ったり(銚子市立総合病院などひどい問題だが)、医師不足特に産婦人科医はなりてがいない、僻地には医師も看護師も不足しているなど日本の医療環境もお寒い状態だが、それより高齢者の医療負担増は深刻だ(悪知恵を働かす医療政策者がいて“後期”高齢者を対象に医療費負担しかも年金から天引きのオプションつき。さすがに施行後評判悪さと行政側の認識不足がマスコミの餌食にされ、ついには政府が一部手続き改正に追い込まれたのだ)。早く死ねと宣告されているようなものなのだ。年金生活が頼りの高齢者にとっては特に顕著だ。この国の医療福祉政策の呆れるほどの無策振りと現実感覚の欠如をみると、アメリカの医療の話を決して対岸の火事とは思えないのだ。今年度などは文科省があわてて大学の医学部定員を増やす始末である。過去には医師溢れなどといわれた時代もあったというのにである。重労働に耐えかねた医師が複数で退職した貝塚市の救急医不足に市が打ち出した苦肉の策は法外な報酬での医師募集広告だ。曰く、年収3000万円保障というもの。その後どうなったかは筆者は知らない。
 さて、アメリカの公的医療の話である。ここは数字で示したほうが良さそうだ。びっくりするほど高い。それほどまでにアメリカの保険会社が牛耳っていて日本の健康保険制度の仕組みがないのだ(民主党のヒラリー・クリントンがやろうしていた)。以前から聞いてはいたが、本書を読んで尚更その思いを強くしたのだ。医療費高負担でついカードに手を出し挙げ句に多重債務者に成り果て最後は自己破産で終わるケースが多いらしい。そうかと思えば、日本の日立みたいな規模のマンモス病院があって(350の病院を所有)28万人が働き年商200億ドルを稼ぐ世界一の病院だそうだ。 日本で盲腸手術にかかる入院費は12000円なのにアメリカはじめ世界の都市の入院費用はこうだ。ニューヨーク、1日平均243万円、ロサンゼルス、1日平均194万円、サンフランシスコ、1日平均193万円、ボストン平均169万円、香港、4日平均152万円、ロンドン、5日平均114万円となっている。これで見るかぎりではロンドンが意外に安いか。
 アメリカは保険会社の寡占化が進み高い保険料を払わせられるがそれ以上に何かと理由をつけて支払わないのだという。病院はといえば、たくさんある保険会社の書類に忙殺される有様らしい。保険会社天国アメリカか。先程触れたマンモス病院は株式会社で人の生命より企業の利益を優先している病院で常に目標必達のノルマが課せられているという。
出産の場合も日本のような一律35万円の出産一時金制度がなく、自己負担、その入院出産費用は1万5000ドルが相場。所得による格差のしわ寄せが妊婦にまで直撃していると著者は書く。また、高齢者の公的医療保険「メディアケア」は「ソーシャル・セキュリティ・タックス」という社会保険税を10年以上支払うと65才で受給資格が得られる仕組みで、受給者は毎年100ドル支払うと医療費の20%を自己負担するだけで60日までの入院は一律800ドル収めればよいことになっているが、20%自己負担は変動するし病院側の「メディアケア」サポート額も変わってくるという。長期療養の心臓病や糖尿病には向かないらしい。国と州が折半出資の「メディアケイド」(低所得者医療扶助)もあるが、高すぎる医療費と保険会社が支配するアメリカ医療システムの中で予算を圧迫し問題になっているという。入院すらできない、いや、たとえ入院したとしても回転率が問題で早く退院させられるとインタビューをした人の話に切迫感がある。こう見てくると、新自由主義も例の“格言”が徘徊していると思わざるを得ないのだ。富める者は益々富み貧しき者は益々貧しくの構図、格差と貧困の構図が明確に認識できる。
本書はルポルタージュなのでたくさんの人にインタビューを試みているが、他人の痛みが分かり合える社会の到来はありえるだろうかという疑問が残る。次の章の軍のリクルーターの話もひどい。続く。

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