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超人のジャーナリスト・アイ 88 最近の新聞書評欄斜め読み

最近の書評欄を斜め読み。

1. 佐野眞一著『甘粕正彦 乱心の曠野』新潮社 1900円

7月13日付毎日、朝日、日経の3紙に載ったノンフィクション。読売も目を通したが残念ながらなかった。四大紙制覇の偉業達成はならなかったものの、各紙の評者はノンフィクション作家佐野眞一の資料渉猟には脱帽していて、甘粕正彦、特に大杉栄一家暗殺事件の新事実に肉薄していた。久々に読ませる一冊かもしれない。この謎の人物については大分前に李香蘭こと山口淑子の私の履歴書に書かれていたか。

2.ギュンター・グラス著依岡隆児訳『玉ねぎの皮をむきながら』集英社 2652円

一昨年の8月頃にショッキングな作家の告白が海外のメディアを賑わし、ポーランドでは賞を剥奪だと躍起になっていた事件をご記憶の読者諸氏も多かろう。ダンツィヒ、今のポーランドのグダニスクに生まれ、美術に目覚めそして文学の道、左派知識人となった一人のノーベル賞作家の自叙伝である。その作家の名はあの『ブリキの太鼓』で知られるドイツ人のギュンター・グラス。彼がこの本でナチスの親衛隊であったことを告白したのだ。特にポーランドの人たちの反応が荒ましかった。毎日新聞の書評欄にドイツ文学者の池内紀氏が、「自伝が出る前の大騒ぎであって、本が出るやいなや、騒ぎは急速に終息、自伝そのものが語りかける圧倒的な叙述がメディアの煽り立てる空騒ぎを一挙に消し去った」とこの本の意義を強調していたのが印象的。

3.小川国夫著『止島』講談社 1700円

4月に亡くなった小川国夫の短編集。
何週間か前に神保町のとあるバーで店の女主人が、小川国男さんに書いてもらったのよ、と店の奥から出してくれたのが「青銅」と書かれた喫茶店のマッチ。静岡県の藤枝出身のカトリック作家、地味だが感性豊かな作品が多い。その風貌はかつての太宰治っぽく、はないか―。昔読んだ記憶はあるが・・・。

4. 片山杜秀著『音楽博物誌』アルテスハブリッシッング 1900円

読売新聞の本よみうり堂の「著者来店」で紹介された平成の怪人の異名をとる評論家。博覧強記、こういう人もいるのだ。オタクである。凄いのはこの写真で見る限り目標は、戦前の右翼の巨魁、大川周明の評伝を書くことです、というあたり。表情からは想像がつかないのだ。日本政治思想史専攻の慶大准教授、刈部直と同類っぽいか―。
5. 岩田靖夫著『哲学とはなにか』岩波新書 735円

第Ⅳ章「他者という謎」が感慨深かったと毎日新聞書評欄の評者。本書の白眉はヴィーゼルの言葉とか(そうか、ひょっとすると『夜と霧』 ?) "理解"とか"知識"とかのレヴェルを超えた、人間的な「開き」の境地として提示されているという。市井の哲学者木田元はある出版社のPR雑誌に哲学について連載しているが、哲学をわかりやすく書いていてオモシロイ。その根源的な問いは知識の羅列だけでは解決できない、地下水のごとく言葉が汲み上げてくるものではないか―。

 上記の追加記事を書いていたら、第139回芥川・直木賞が開かれ、芥川賞が楊逸(ヤンイ―)さん(44才)の「時が滲む朝」(文学界6月号)に決まったのニュース。中国人では初めての受賞。先週の土曜日、TBSの情報番組「王様のブランチ」で筑摩書房役員の松田哲夫氏がこの作家を予想していた。筆者はまだ読んでいない。

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