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超人の面白読書 43 江越弘人著『幕末の外交官 森山栄之助』

Img004_4森山栄之助は幕末に活躍した通詞・外交官で、ペリー、ハリス、ヒュースケン、プチャーチン、エルギン卿、オリファント、オールコック、オイレンブルグ、パークスなどの外国からやってきた人たちと外交交渉をし条約締結にその生涯を捧げた人である。本書はその幕末(NHKの大河ドラマ『篤姫』が高視聴率を取っているが、時代的にはちょうどこの時代)徳川家定、家茂、慶喜の時代に流暢なオランダ語や英語を駆使して外交交渉にあたった先駆的な通訳官兼外交官、森山栄之助の自伝である。今までジョン万次郎やジョセフ・ヒコなど漂流民が米国船に救助され通訳者として帰国した人たちは井伏鱒二などの小説でもお馴染みだ。この森山栄之助についても吉村昭の『黒船』や『海の祭礼』に描かれてはいる・・・。森山栄之助(多吉郎)という人物を評価していくことが、幕末から明治にかけての時代を正しく理解することにつながるのではないかと考えると著者は「はじめに」で書いている。それこそ外国側の記録では知られているが、日本側では川路聖謨(としあきら)の『長崎日記』『』下田日記』のほかに見ることができないらしい。治外法権、関税など不平等条約の烙印を押され、後の明治政府がこの条約改正に躍起になっていたことは歴史の知るところだ。筆者などは英語研究の草分け的存在の方に興味を惹かれるが、それよりもこの地域史研究者の忘れられた人物に焦点をあてた本書は面白い。少し前に筆者は石川榮吉著『欧米人の見た開国期日本―異文化理解としての庶民生活』の書評を試みた。本書はこの幕末期日本に来た欧米人が時の政権に開港を迫る通商・外交交渉の舞台を一通訳官を通して描いたとも取れるが、父親もオランダ通詞といういわば通訳官一家の家族(結婚や離婚、妻や子供のことなどで不明な点が多い)、外国奉行などの上司、通詞仲間、弟子の福地桜痴(源一郎)らの人間模様も描いている点も見逃せない。時々散見される繰り返しが気になるがすぐ読めてしまう200ページ足らずの本だ。先駆者はそれなりにいろいろと苦労したのである。
(弦書房 定価1800円+税 2008年6月刊)

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