« 超人のクラシック音楽鑑賞 東京丸の内「熱狂の日」ポーランドのヤツェク・カプシク指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア演奏のウィーンの舞曲を聴く | トップページ | 超人の面白文学発見 トルコのノーベル賞作家オルハン・パムク氏来日、大学のシンポジウムで大いに語る »

超人の面白読書 40 伊集院憲弘著『客室乗務員は見た!』(新潮文庫)

  Img015_4
JAL、3年ぶり黒字(JALは最終利益169億円、ANA、641億。売上高はJAL、22304億円、ANA、14878億円)、収益力、ANAに及ばずの記事がつい先日新聞の見出しを飾ったばかりの今日、その日本航空が従業員の給料5%をカット、近いうちに燃料費の高騰で航空運賃の値上げもあり得ると発表したと某テレビのニュース番組が報道していた。
 
 あるPR雑誌の最新号を読んでいたらジャズ評論家のコラムが目に留まった。そのタイトルが"ミルクとビールの謎は空を飛ぶ"だ。このコラムニストはジャズ喫茶で働いていたまだ若い頃、ウェイトレスのオーダーのミルクとビールをなぜかよく間違えたらしい。そんなこともあってかこの本のミルクとビールの聞き違いの話には実感がこもっていた。気圧の関係や飛行機のエンジン音などもあるが、milkとbeerの聞き間違いは単語が短い、アクセントが前にある、口を余り開けず話すなどが原因らしい。そんなことが地上を離れた飛行機の中でも起こっているとこのコラムニストは、客室乗務員の押さえようのないエリート意識が見え隠れしている話などを付け加えながら面白可笑しくこの本を紹介していた。それにしてもあの馬鹿丁寧な、慇懃無礼の物言いは何とかできないものかと筆者も飛行機を利用するたび思うのだ。心の眼がアサってに行っていて、マクドナルドのマニュアル的な物言いではないが不快感が過ぎるのだ。
 さて、元JAL社員で客室乗務員の著者が綴ったエッセイ、『JAL機の懲りない人たち』 を改題した 『客室乗務員は見た!』(新潮文庫 2007年10月 7刷)は、国際線や国内線で起きた典型的なマナー違反など大きな事故に繋がりかねないデキゴトを紹介していてその悪戦苦闘振りと滑稽さが面白い。少しはスカトロジーを味わったか―。この手のネタはよく週刊誌に出てくるけれども、軽く読めるので電車内での読書に持って来いの本なのだ。
 フライトタイム、イレギュラー、アンルーリー、キャビン、ライフベスト、チーフパーサー、コールボタン、スチュワーデス(客室乗務員。現在はキャビンアテンダント、または、フライトアテンダントと呼ぶ―本文P.21)、ボーディングブリッジ、ディスパッチルーム、ブリーフィング、キャプテン・ブリーフィング、シップ、スポット、タキシング、ジャンプシート、コーパイロット・デューティ、ミール、コックピット、ブラッディマリー、タービュランス、バードストライク、ストウエッジビン、ギャレー、FINAL WARNING、スキットル、メディスンキット、ファーストエイドキット、ホットカップ、アッパーデッキ、アームレスト、レイバック、グースネック、ダブルアサイン、アントレなどのカタカナ語は本文から拾ったものだが、機内ではいろんなフライトに関する英語、カタカナ語が使われているのだと改めて感心したのだ。一部解らない単語もあったが大概想像がつくものだ。
 驚嘆に値するデキゴトも一部散見されたが、全体的には密閉した機内の異空間のデキゴトは想像つくものだろう。飲食、娯楽、買物、トイレ、病気、対人関係、航空会社のサービスと言動、気象変化そして緊急事態時などだ。確かにこの本にも多くのページを割いているマナーの悪いルール違反者の言動(常顧客VIP、社長夫人、酔客など)には辟易するが、出産、機内事故(本文の中国人妊婦の産気づいたあとの出産シーン、そのテキパキとしたサポートや母親の不注意で赤ん坊が指を落とされた事故処理など)などの人道的な援助が緊急に必要な時のスタッフの懸命な努力には頭が下がる思いである。
 傍若無人! “特殊”なお客様、お客様、レッドカードです、お客様に緊急事態発生、お客様のために尽くします、わがクルーの恥ずかしい話の5章仕立ての283ページ。経験豊富でかつ客室乗員訓練指導にも長らく当たられた著者の文章にはその心遣いが行間に息吹いている。すらっと読める本だ。たまにはこういう文庫本もいい。シェイクスピアのハムレットの有名な台詞、To be or not to be. That is a question.に関する話もあったがそれは本文で―。


|

« 超人のクラシック音楽鑑賞 東京丸の内「熱狂の日」ポーランドのヤツェク・カプシク指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア演奏のウィーンの舞曲を聴く | トップページ | 超人の面白文学発見 トルコのノーベル賞作家オルハン・パムク氏来日、大学のシンポジウムで大いに語る »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/77059/41206266

この記事へのトラックバック一覧です: 超人の面白読書 40 伊集院憲弘著『客室乗務員は見た!』(新潮文庫):

« 超人のクラシック音楽鑑賞 東京丸の内「熱狂の日」ポーランドのヤツェク・カプシク指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア演奏のウィーンの舞曲を聴く | トップページ | 超人の面白文学発見 トルコのノーベル賞作家オルハン・パムク氏来日、大学のシンポジウムで大いに語る »