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超人の面白読書 36 樋口一葉作・伊藤比呂美訳『 にごりえ』

Nec_0056_2樋口一葉作・伊藤比呂美現代語訳『にごりえ』を読んだ。原文は明治28年作の文語体。しかも訳者も言っていたが、句点があまりなく読点で続く様は、一枚の綴りものを読み上げているかのようだ。そこを伊藤比呂美の現代語訳はひらがなの多用、句読点や会話体の工夫で読みやすくしていた。ここには訳者の創意工夫がある。すらすら読めてしまう。物語は東京の本郷周辺の新開地が舞台、暗い過去を持つ酌婦がやがて死をとげる悲劇仕立ての短編小説。24才で逝った一葉の代表作だ。最後の転調してクライマックスにさしかかる場面は三度ほど読んだ。主語は何処へ行ったか、雰囲気が知らせた−。説明があまり施されてないので少し解りにくかったからだが、この場面展開にはドキッとさせられた。

現代語訳は訳者の苦心で一気に読めるけれども、内容は濃い。一葉独特の色合いがある。リズムがある。女性の抑圧を書いていて今でも通じる社会的なテーマだ。不倫、りんりんりん―。ヒロインお力は何か言いたげだった・・・。作者の思いがこもった写実小説の傑作。現代語訳で更にその思いを強くした筆者だ。“にごりえ”それとも「地獄絵」、当時の日常が浮かぶが会話の妙技もいい。現代語訳で読むのも悪くない。
 さあ、今年のテーマ、通読する源氏物語をどっちで読むかだ。すでに岩波古典文学大系の本は机上にあるのだ。

追記。ついでに『たけくらべ』の現代語訳も探してみたが、生憎その書店には在庫していなかった。松浦理英子訳でやはり河出文庫であるらしい。その前に出張帰りの新幹線の車中で岩波文庫版の原文を読んでみた。遊郭、吉原舞台の美登利と信如の成就せぬ恋物語だ。このリズムは声を出して、ということは音読でずっと読み通したい気にかられた。調子がいいのだ。まだ読みかけだが。
2月28日付毎日新聞夕刊の「雑誌を読む 2月」政治から文学まで新しい感覚の見出しで京大教授で国際政治学者の中西寛氏月評の最後で、芥川賞作家川上未映子『乳と卵』は樋口一葉に影響を受けたと述べる独特の文体でそれぞれの思いのすれ違いを回復していく過程を通じて抑制された希望を描いていると書き、また、弟を大学進学させるため大阪・北新地で働き、カントやウィトゲンシュタインの哲学書に学んだ川上の感性は新しいに違いないと書いていた。歌手でもあり多才な女性だ。書店には今が旬の本が渦高く積んであるが、その中にあってひと際目立つのはこの本のタイトル『乳と卵』と洒落た装丁だ。筆者はまだ読んでいない。それより古典的短編の秀作の作者樋口一葉-あの文豪森鴎外が馬に乗って通りかかった彼女の長屋の前で最敬礼したというエピソードの持ち主-の作品が先だ。有名過ぎて教科書的にしか読んでいなかったのだ(2008年3月2日 記)。

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