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超人の面白読書 29 大山恵佐著『努力と信念の世界人−星一評伝』最終章

  この後星一は日本一の星製薬会社を設立して広告の斬新さと出稿料日本一、模範工場、組織と効率、販売網の確立、子弟教育のための学校設立(現在の星薬科大学)、モルヒネ製造成功、ドイツ化学界への寄付・貢献と隆盛を極めていくが、その盛業の中後藤新平失脚の政界陰謀に巻き込まれて阿片事件を引き起こされ、会社は解体寸前まで追い込まれるほど大打撃を受けることになる。そこは星流頑張りと任務断行期成団なる全国組織を打ち建てて役員、社員、販売店が一丸となった協力・支援体制を強化していくのだが。何分にも役人、官憲、検察官それに高利貸しの星潰しの騙しの構図は巧妙で、終には言わば経営者としてやってはいけないことをやってしまった、脇の甘さが露呈した形だ。勿論同業他社の新興勢力妨害も想定内だ。結局阿片事件の裁判では無罪になるのだが、会社の再建がこれまた大変だったらしい。戦時中は満州で事業するも依然ほどの勢いはない。戦後すぐに参議院議員に当選しているが。本書は星一がペルーのツルマーヨに30万ヘクタールを購入した土地(大正7年に購入、主にコカ栽培)にアメリカ人の協力者を伴って近々現地に出かけることになっているところで終わる。そのツルマーヨの土地は日本の四国ほどある土地。だが、星一はアメリカのロサンゼルスで客死。この後長男の星親一は会社を継ぐが売却してしまうのだが(大谷栄太郎に乗っ取られた)、それは本書の領分ではないのでここでは言及しない。

  著者は1.失敗の人、得意の人の冒頭で言っている。「星に阿片事件という出来事が、起こらなかったならば、おそらく彼は東洋第一は勿論のこと、世界有数の化学製品の製造会社になっていたに違いない。中略。事業家としての星の人生は明らかに失敗であったといえよう。星の手腕、識見、人格、さらにその非凡の努力からすれば、星の事業の結論は余りにもさびしすぎる。しかし、一個の教育者としての星、組織者としての星、海外投資者としての星を見るときは全く別の見地に立たなければならない。星の精神、星の理想は、個人星を超越して立派に成功をおさめているといえよう。星の科学的な工場管理は他のあらゆる工場の追従する虜となり、星の社会主義的会社経営は、今日の新しい時代の事業運営の最も高度の標本となることであろう。星はこれを半世紀前から実施していた。経営者は、自己の利益や個人的享楽を全く求めない。ひたすら社会と大衆に奉仕することを念願としている。これは次の時代の経営者の当然の心構えとなる日も遠くないであろう」
現在の私たちは本書によって失敗から何を学ぶかが問われているのだ。解説者・横田順彌氏によると、星一の生涯は大変魅力的だが、自伝、評伝の類は過去に数冊しかない。星新一著『明治・父・アメリカ』や『人民は弱し官吏』、元雑誌「ダイヤモンド」記者の京谷大助著『星とフォード』そして作家・夢野久作の父・杉山茂丸著『百魔』くらい。作家の小島直記はその杉山茂丸著『百魔』を読んで作品化を考えていたらしい。筆者はこのスケールの大きい星一の生涯を映画化したら面白いと考えている。また、基本的文献を踏まえて明治・大正・昭和を通した本格的な評伝も期待したいね。それは薬学部が新たな隆盛を極めている今日、新たに近現代製薬史を紐解くきっかけにもなるはずだからだ。
  そして、最後に星一にもSF小説があった話。星のアイデア、尾崎紅葉と硯友社創設の一人で冒険・科学小説家、江見水蔭が原稿にした『30年後』(大正7年 新報知社刊)だ。これは長編ユーモア風刺SF作品で、30年前、日本を離れ南海の孤島で生活していた老人が帰国してみると、日本をはじめ世界は科学の力で、おどろくべきユートピア社会にかわっていたという内容だ(横田順彌氏の解説より)。

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