« 超人の面白読書 27 最相葉月著 『星新一 1001話をつくった人』 6 | トップページ | 超人の面白読書 27 最相葉月著 『星新一 1001話をつくったひと』 8 »

超人の面白読書 27 最相葉月著 『星新一―1001話をつくった人』 7

戦後シンイチは父一がロサンゼルスで急逝後に会社の後始末を任され苦労したが、シンイチ自身は相当堪えたのかこのことについてはほとんど語らず封印してしまう。そのことは妻の香代子も聞かされていないと著者は書く。著者はシンイチが残した段ボール箱を整理した成果を世に問い、生き証言を取りに高齢者を尋ね歩くことでこの時期の闇の部分が次第に明らかになっていく。特に星製薬会社の借金の詳細、会社再建、社長・シンイチと側近、従業員解雇と組合問題、乗っ取り屋の大谷氏(ホテルオータニの所有者で不動産屋)に明け渡し清算して会社から一切手を引いてしまうあたりなど読者を引き込ませる筆力は増してノンフィクションの醍醐味すら感じた。この頃からシンイチの銀座通いが始まるのだがー。
会社が傾く予兆はすでに戦中の満州である製薬の開発に着手しなかったことが大きかったと福島の実家の人間に取材して語らせている。それはペニシリンの開発だったという。その必要性を知っていたかは知る由もないが、シンイチは東大農学部の農芸化学でペニシリンの開発を専攻する。だが、戦後衆議院選挙に当選して代議士になる父の秘書を大学時代にやったり、先述したが父の死後星製薬の後始末に嫌気がさしていた頃に、五反田にあった書店の二階で開催していた空飛ぶ円盤研究会なる会に入会する。この辺からシンイチは人生のカーブを大きく切ることになる。この会や同人誌で頭角を表し、SF界の大御所・江戸川乱歩に認められSF作家デビューを果たす。
本書で印象深いことのひとつが、シンイチがSF作家、ショートショートの書き手になることに背水の陣を敷いていたという事実だ。そもそも母方の祖母・小金井喜美子(森鴎外の妹で翻訳家・歌人)の文才の血筋を引いていることも当然あると思うのだ。シンイチのSF作家の過程とその周辺を著者は何章かを割いて丹念に追っている。その人間模様は日本SF史のパノラマ。実は筆者はこの書評でシンイチが出会った人間のカタロギングを試みようと思っていたのだ。それだけでもSF界のみならず日本の作家群像が浮かび上がって来るのだ。<続く>

|

« 超人の面白読書 27 最相葉月著 『星新一 1001話をつくった人』 6 | トップページ | 超人の面白読書 27 最相葉月著 『星新一 1001話をつくったひと』 8 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/77059/16234069

この記事へのトラックバック一覧です: 超人の面白読書 27 最相葉月著 『星新一―1001話をつくった人』 7:

« 超人の面白読書 27 最相葉月著 『星新一 1001話をつくった人』 6 | トップページ | 超人の面白読書 27 最相葉月著 『星新一 1001話をつくったひと』 8 »