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超人の面白読書 27 最相葉月著 『星新一 1001話をつくったひと』 9 最終章  

本書の書評もいよいよ最後だ。『セキストラ』や『ボッコちゃん』は文庫を買って読み直した。シンイチの作品には科学の眼がある。奇抜な発想、奇想天外、ブラックユーモアなどが盛り込まれたショートショート。今もって通じる都会的現代的なセンス。決してドロドロとしていないのだ。敢えて言えば普通の小説が描く情念的なものはない。言ってみれば軽いのかも知れない。頭で考えて捻り出し、簡潔で乾いた文体でこれを覆う。装置とも言ってもよい。
こうして「エヌ氏の会」の会の励ましもあって1001話は完成する。しかし、これを産み出す過程は並大抵ではなく、枯渇しないよう泉の源泉を汲み取る作業を悪戦苦闘しながら続けた。薬を飲みながら書く姿は痛々しい。恐らく何故ここまでして書かなければいけないんだと自問したはずだ。遅筆作家はいくらでもいるがシンイチは締め切り日はきちっと守ったという。

1.知識の断片を、できるだけ多く、広く、バラエティに富んでそなえておくこと
2.その断片を手ぎわよく組合せ、検討してみること
3.その組合せの結果がどうなるかを、すぐに見透かしてみること
(本文P.284)

これはアイザック・アシモフの『空想天文学入門』をシンイチが圧縮して要約したものという。科学的発見の方法について論じたものだが、シンイチが無意識にやっていた創作方法だと著者はみる。

本書は前半はシンイチの父・星一、星製薬とその周辺、後半はSF作家・星新一と周辺、それらは一大SF史となっている。星新一に憑かれた人が書かせた執拗なまでの人間ドキュメント、それがノンフィクション作家・最相葉月の真骨頂だ。そのトーンはエレジー、悲歌。秀作である。
雑誌『文学』2007年7−8月号(岩波書店刊)はSFを特集していてこの本にも言及している。そして今、本書『星新一−1001話をつくった人』は新潮文学賞など受賞の対象になっている。

最後にシンイチの娘・サリナはプロのサーファーとしてハワイに住みそしてサーファー日記なるものを書いている。DNAは受け継がれているのだ。また、星製薬の方は人手でに渡って小さくなったものの、いろいろと変転しながら現在まで続いているようだ。


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