2019/09/14

超人の面白読書 142 第1回中央公論新人賞 深沢七郎著『楢山節考』(新潮文庫版) & 次席 鈴木一郎「神童」(『中央公論』昭和31年11月号掲載複製版)を読む 3

『楢山節考』の解説で文芸評論家日沼倫太郎は深沢七郎の世界を次のように書いている。
「深沢七郎氏にとって世界とは、それ自身としては何の原因もない「自本自根」のものすなわち無であり、空間の拡がるかぎり時間の及ぶところ、何時はじまって何時終わるとも知れない流転である。万象はその一波一浪にすぎない。あらゆる事象は「私とは何も関係もない景色」なのである。このような作家が、作中に登場させる人物たちをあたかも人形か将棋のコマのように扱ったとしても無理はないだろう。心理とか感情とか一切みとめない。物として処理する。これは前述の『楢山節考』をみてもはっきりしているので、向う村の後家は、亭主が死んでも3日もたたぬのにヤモメになったばかりの辰吉と結婚しなければならない。いや、しなければならないのではなく、するのがあたりまえなので、当人たちにとっても、村人達にとっても、後家とヤモメが一緒になるのは〈自然〉だし、またみごもった赤子を「捨(ぶ)ちゃる」相談を夫婦でするのも〈自然〉なのだ。このような深沢氏は、近代の人間中心主義的な思想とはまったく対蹠的な地点に立っている。これは深沢氏が徹底したアンチ・ヒューマニストであることを示している。」

また、日沼氏はこうも書いていた。「全体として、酸鼻とも明るさともつかぬイメージをみなぎらせているのが『楢山節考』なのである。」
さて、現在の『楢山節考』は、さしずめ年金も充分に受けられず貧老・弧老を余儀なくされている高齢者か。孤独死は充分に社会問題化している。『楢山節考』は、63年前の小説にもかかわらす、今なお色褪せていず却って現代に警鐘を鳴らし続けているように筆者には思える。いろいろと考えせてくれる小説なのだ。筆者もまた、文芸評論家の正宗白鳥が〈人生永遠の書〉と絶賛した意味を少しは理解できる年齢に達した証左なのかもしれない。万物は流転する――。

2019/09/13

超人の面白読書 142 第1回中央公論新人賞 深沢七郎『楢山節考』(新潮文庫) & 次席 鈴木一郎「神童」(『中央公論』昭和31年11月号掲載の複製版)を読む 2

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深沢七郎の『楢山節考』は、映画化され狂言の演目にもなった超有名な作品だ。恥ずかしながら“姥捨物語”としては知っていたものの、きちんと読んでいなかった。古本屋の棚で見つけてふと読んでみたくなったのだ。大分黄ばんでいて破けてしまいそうな新潮社の文庫本だ。奥付を見ると昭和39年7月30日発行、昭和57年5月30日 31刷とある。先々週の日曜日だか何気なくETVの番組を観ていたら野村万作の狂言をやっていた。で、しばらくその〈古典芸能・狂言〉の出し物、「楢山節考」を観ていたのだ。ラストシーンの一部だった。その狂言にも刺激を受け、翌日から通勤の電車の中でこの文庫本を読みはじめ、4日くらいかけて読み終えた。
民間信仰の棄老伝説を題材にした『楢山節考』は、異界の表情を余すことなく伝えていて、時として一種不気味で恐怖心を抱かせるシーンも。描写力に優れそら恐ろしいほど。それは単なる小説というフィクションを超えて、大袈裟にいえば、私たちが出逢う“人生の秋”のリアリズムを感得するものだろうか。姥捨て、口減らし、非人情、ニヒリズム、虚無、不要な人間の物質化等々この短編小説は、多くを暗示している。構成も方言を巧みに挟み、唄を挟み、山あいの日常を描くが、不気味なトリックも潜んでいる。特に楢山まいりを早めるため石で前歯を折るシーンが何度か出てくるが主人公おりんの強い性格を感じると同時に、かなりショッキングなシーンだ。辰吉がおりんを背板に乗せて楢山へ山道を歩く描写もまた、寒々とした空恐ろしい光景だ。卓越した言葉の喚起力もあり見事に小説に昇華した傑作だ。辛口文芸評論家正宗白鳥が、“人生永遠の書”と絶賛したことも頷ける。選考委員の一人、三島由紀夫は「特異な題材の特異な扱い方」と評した。


20年前に夫を亡くした女主人公のおりんは69歳。とある山あいで息子辰吉とその孫けさ吉をはじめ4人と暮らしている。息子の嫁は若くして谷底に転落して亡くなり、まもなく向かい山から後妻玉やんをもらう。村のしきたりとして楢山まいりがあり、おりんもその事を積極的に受け入れ、後妻にも日常的になすべきことを教え、来るべく楢山まいりに備える。貧しく食物が乏しいから楢山に捨てられる日を早めるため石で前歯を折ることも。孫が近所の女に手を出し子を孕んでやがて生まれることにはおりんも覚悟を決める。また、芋を盗む不届き者など小さな共同体は少しざわめく。そんなある日裏山で宴が催される。それは村の習わしに従って楢山まいりの送迎会を開く。おりんが作った料理や亀に入った酒が長老から村の衆一人ひとりに振る舞われる。そこで楢山まいりの掟を聞かされ、それが村の習わしと悟り、やがておりんは倅の辰吉の背板に乗せられ楢山まいりに出る。途中村人が作った道を行くも山越えの谷には死骸が散乱、楢山はすぐそこにあるも深い谷には行く道を阻める何かが―。不届き者が供走していてその親を背板から谷底めがけて突き落とす。そこはカラスの巣があるらしく餌食にされるのは目に見えている。それを見たおりんの息子辰吉は、自分にはそういうことはできないと自問する優しい心はあるが・・・。すでにおりんは自ら背板から離れ一人旅立っていた。粉雪が舞っていた。辰吉は家に帰ると玉やんに「粉雪が待って運がいい」としきりに言うのだった。


これが大雑把なあらすじだ。とある山あいは信州か甲府か、それはフィクション仕立てで、その雰囲気を醸し出せばば足りる。しかし、筆者はまた違った意味でこの小説の舞台に親近感を抱く。原風景が似ているのか心がざわつくのだ。幼少期、母の里に連れられてそれこそ春はワラビ取り、秋は松茸取りと山歩きを余儀なくされた。山を知る母親はすぐ嗅ぎつけて目的を果たすが、連れ出された子はやたらに山道をさ迷ってばかりで得るものが皆目ない。また、開墾地なので何かと不自由さはあるものの、“裏山”の小川のせせらぎには、この小説にも登場するヤマメもとれ、水は見事に澄んでいて手を組んで飲んだほど。山から山へ、それこそ母の青春期には背板に生活の足しになる物を背負って、また、時には幼子を背負って歩いただろうことは想像がつく。また、700メートルの山の頂上から眺める山暮らしの過酷さは想像を絶する思いもするのだ。そう、母の青春期は昭和初期。親戚宅への使いなのか若い頃の母は、隣の山、向こうの山の集落へ何里も歩いたと言っていた。それこそこの小説にある岩肌のみえるところや竹藪などが生い茂ったところ、あるいは人が入り込めない原生林のところもあったはず。夜道にそういうところを通ることは肝試しではないが、明かり一つぶら下げて通ることがいかに大変だったか想像がつきそうなものだ。山あいの開墾地には口減らし、ひょっとしたらあったかもしれない、なかったかもしれない・・・。遠い昔、昔。死者をやさしく弔うためにも唄は必要だった――。この地方には有名な念仏踊りもあるし。今はゲンパツ被害、大きな大きなゲンコツを腹いせに喰わしたいくらいだ。筆者は幼少期にバスの終着点から山あいにあった母の実家へとぼとぼと歩いた光景が、今もって時折夢に現れる。夢の中では遠く感じられたが、大人になって同じ道をバスで通過するとバス停が3、4つほど縮まった不思議な現実に遭遇するのだ。


〈楢山節〉の唄

かやの木ぎんさん
ひきずり女
姉さんかぶりで
ネズミっ子抱いた
夏はいやだよ
道は悪い
むかでながむし
山かがし
塩屋のおとりさん
運がいい
山へ行く日にゃ
雪が降る
楢山まつりが三度来りゃよ
栗の種から花が咲く
おらんの母ャやん
納戸の隅で
鬼の歯ァ33ぼん
揃えた

歌詞はこの短編小説のメインストリームを奏でていて哀しい。

2019/09/11

超人の面白読書 142 第1回中央公論新人賞 深沢七郎著『楢山節考』(新潮文庫) & 次席 鈴木一郎「神童」(『中央公論』昭和31年11月号掲載複製版)を読む

一難去って初秋の空茜カラー

南の太平洋上で発生したばかりの中型の台風が、忽ち日本列島に近づき関東地方を直撃した。風台風で神奈川や千葉で被害が出た。特に南房総、君津、鴨川、八街、市原市など約50万世帯に今もって大停電が続いている!復旧に手間取っているらしい。この分でいくと、来年7月下旬から8月一杯かけて開催される東京オリンピック・パラリンピックも台風で延期となりかねない。確率は高いはず。そもそも1964年の東京オリンピックはその意味も考慮に入れて10月に開催したのでなかったか。放映権やらでビジネス化した最近のオリンピックは、莫大な開催地の施設建設費用もありまた、開催後の経済低迷も過去の開催地をみれば明らかで、果たしてオリンピックをやっていいのか甚だ疑問が残る。筆者など初めからこれだけ投資するならもっと福祉政策に力を傾けた方が国民の利益に叶うものだと思うのだ。
さて、文学とりわけ小説の話だ。今回は1956年(昭和31年)、第1回中央公論新人賞の深沢七郎『楢山節考』、次席の鈴木一郎「神童」を取り上げてみたい。前者は新潮文庫、後者は雑誌『中央公論』(昭和31年11月号掲載)を読んでの書評だ。

2019/09/10

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 15

大原ケイ氏の「すべての本を、すべてのチャンネルで、すべてのアカウントに 挑戦し続けるアメリカの出版社」は、有名な出版人の訃報から書き始めて、アメリカの出版概略史、「ビッグ5」出版社の実態とその規模、再販制度と取次の特徴、出版社とってアマゾンとは、出版不況知らずのアメリカ、で終わる。ここで特徴的なのは、“インプリント”という出版形態だ。出版社が出版物を刊行する際に用いるブランド名。アメリカの出版社は合併や買収が盛んに行われ、どう繋がっているのか分かりづらいことも。特にここ20、30年で大分競争が激しくなって入れ替わりが大分あった印象を受ける。大原ケイ氏が掲げた表、「ビッグ5」の売上額(P.201)は107億ドル。

出版社 年間総売上額 コングロマリット(本拠地)
ペンギン・ランダムハウス 33億ドル ベルテルスマン(ドイツ)
アシェット 27億ドル レガルディエ(フランス)
サイモン&シュスター 18億ドル ヴァイアコム(アメリカ)
ハーパーコリンズ 15億ドル ニューズ・コーポレーション(アメリカ)
マクミラン 14億ドル ホルツブリンク(ドイツ)
7社 107億ドル 5社

これでいくと全米の総売上額262億3000万ドル(2017年、全米出版社協会発表)のうち「ビッグ5」の示す割合は41%になる。
日本とアメリカで大きく違うところに著者と出版社の関係がある。少し長いがわかりやすく書かれているので引用したい。
「もともとアメリカの出版社は著者から直接持ち込まれた原稿は受け付けず、目利きであるエージェントを介した作品でなければならないところがほとんどだ。本という形にする価値のあるコンテンツかどうかを判断する出版社のプロはしばしば「ゲートキーパー」と呼ばれる。狭き出版への門を守る門番だ。出版社を通して出される本は、刊行時に紙の本とEブックのフォーマットが同時に発売となり(最近はそこにオーディオブックが加わるようになってきた)、Eブックの値段は10ドルを切ることはない。その一方で、セルフ・パブリッシングによるEブックは数ドル~10ドル未満の値段がつけられることが多く、ISBNを持たないタイトルも多いため、一体どのぐらいの部数が買われ、いくらぐらいの市場規模になっており、どの著者がどのくらいの印税を稼いでいるのか、わかりづらくなっている。」
刊行した本の4冊に1冊しか黒字化できず、その1冊がベストセラーになり、大ブロックバスターと呼ばれる大ヒットにつながる。大原ケイ氏は、それがアンドレ・シフリンの『理想なき出版』(2002年、柏書房)の“書籍ビジネス”だというがまた、この翻訳本の原題“Business of Books”のタイトルの付け方に違和を唱えている。“アメリカの最近の書籍ビジネス”くらいにおさえておけば良かったはずなのに、意訳し過ぎた感は歪めない。

また、1994年に登場したオンライン書店アマゾンに不利な卸し条件をつきつけられたり、勝手な値段を付けられたりするのを防ぐには、それなりのサイズ、つまりタイトル数を揃えた大きな組織であれば、いいなりになって潰されることは起きにくいからだ。それがアメリカの出版社が巨大化し続けた理由だという。規模は違うが日本でも同じようなことが起きている。「すべての本を、すべてのチャンネルで、すべてのアカウントに」とは、あらゆる限りの方法で読者に本を届ける努力をするという意味だという。“What els is new?”(他に何か新しいのは?)と挨拶がわりに質問をぶつけてくるアメリカの編集者たち、オリジナル溢れる本の企画を考えていることは間違いない。それは「何か面白いものない?」と筆者たちが使っている言葉と同義語のような感じを受ける。

以上、雑誌『世界』(8月号)の特集2 出版の未来構想の読後感を少し時間をかけて述べた。日本は、マーケット縮小のなか新ツールで読書傾向が変貌、出版界は紙媒体の生き残り、電子本の更なる開発それに“マーケットイン”的な新たな出版流通を構築していかなければならない。特に取次の役割と書店の活性化、「活きた」知恵と絶えざる「生きた」努力が求められる。その意味でもドイツやアメリカの現状報告(イギリスやフランスの報告もほしかったが)は、大いに参考になるはずだ。
読書論、読者論それに書店論に言及できなかったが、別の機会に書いてみたい。みなさん、真摯に本と向き合っていて頭が下がる。本は決して生活必需品ではないが、心の糧を得るには必需品なのだ。

追記 返品枠付き「買い切り」方式 需給バランスみて適正配本 徳間書店・平野健一社長に聞く、というタイトルで出版界注目の記事が掲載された(毎日新聞2019年9月5日夕刊)。その記事を読むはこちら→

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2019/08/26

超人のジャーナリスト・アイ 173 自由の女神像の台座に書かれた詩人エマ・ラザラスの詩の改変

毎日新聞8月15日の朝刊によると、アメリカのトランプ政権の政策責任者が、ニューヨークの自由の女神像の台座に書かれた有名なエマ・ラザラスの詩を一部改変してアメリカの公共放送(NPR)のラジオで朗読した。永住権(グリーンカード)の制限を発表した移民局のクチネリ局長代行が、13日NPRの電話インタビューで、ラザラスの精神は失われたのかと問われて、「疲れ果て、貧しさにあえぎ、自立することができて、公共の負担にならなければ」と改変した詩を紹介したという。詳細は下記の記事を参照されたい。

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移民象徴的な詩を改変するとは。呆れてしまう。良識はどこへ行った?

2019/08/16

クロカル超人が行く 237 箱根登山鉄道宮ノ下駅『富士屋ホテル別館 菊華荘』のカレー

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写真説明。
①耐震工事中の富士屋ホテル本館 2020年夏完成とか
②富士屋ホテル別館菊華荘(明治28年、明治天皇第8皇女、旧名富美宮允子内親王ご静養所➡昭和9年、高松宮別邸➡昭和21年、富士屋ホテルが払い 下げを受ける。明治大正期の歴史的建造物)
③菊華荘待合室
④牛カレーセット前菜(野菜にかかったドレッシングが美味)
⑤名物富士屋ホテル牛カレー(甘くとろけるようでいてちょい辛、絶品)
⑥デザート アップルパイ(この手のものはほとんど口にしない筆者だが、そんなに甘くない上品な味わい)
⑦木の温もりが感じられるシンプルな天井・欄干
⑧レストラン内(古き良き時代の家屋が残る佇い
⑨日本庭園
⑩泳ぐ鯉
⑪箱根登山鉄道車両(姉妹提携のスイスのレーテッシュ鉄道で運行されているグレッシャー・エクスプレス(氷河特急)と同じ塗色)


盆台風過ぎてはカレー箱根山

2019/08/12

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 14

日本では出版関係は、東京特に千代田区、文京区、新宿区辺りに集中しているが、ドイツでもいくつかの都市に集中しているようだ。放送・出版・音楽ソフトなどのメディアミックス・コングロマリットのベルテルスマン(ペンギン・ランダムハウス社などを傘下にもつ大企業。売上額は163億5600万ユーロ)の本部はノルトライン=ヴェストファーレン州ギュータースローにある。ドイツの大手出版社はスプリンガーナトウレ、クレットグループ、ウェスターマン出版グループ、ランダムハウス、バスタイ・リュッペ、エス・フィッシャーなどだが、多くの出版社はベルリン(146社)、ミュンヘン(114社)、シュトゥットガルト(76社)などの都市にある。最大チェーン書店のタリアの本部は北のハンブルグ、マイヤーシュ書店は西のアーヘン、取次店KNVはシュトゥットガルトに(P.193)。

ここでアメリカも入れた出版関係3ヵ国比較。

               日本              ドイツ          アメリカ

人口       1億2,680万   8,279万       3億2,720万

出版社   3,435             3,000            2,600

書店数   12,026           6,000            5,000

売上      7,152億        1億2800万    2兆7803万

(書籍) ✳1ユーロ➡120円、1ドル➡106円で換算。

この表で見る限り日本は書店数が多い割には書籍売上額が少ない。意外なのは、ドイツが書店数が日本の半分と少ない割には書籍売上額が日本の1.5倍以上。因みに、ドイツの人口は日本の約65%だ。ちょっとした表からでもドイツ人は読書好きということが分かる。また、この特集2で出版流通部門を担う取次店は、日本、ドイツ、アメリカではその機能が違う。スピッツゲール典子氏が書いているように、価格拘束保護の下取次店は存在するが、日本ほど取次店の存在は大きくないようだしまた、非再販のアメリカよりは確かな存在意義を見出だしているようだ。書籍やデータの即日配送など。アメリカは出版社と書店との直接取引が大半で、その他のルートとしては出版社と読者を直接つなぐブック・クラブがある。因みに、出版取次会社は、日本には日販、トーハン(かつてはトーハン、日販だった)、大阪屋栗田(今は楽天傘下)、中央社、日教販、八木書店など20社ほど(かつては48社ほどあった)、ドイツ及びスイス、オーストリアのドイツ語圏にはKNV、リブリ、ウンベルトの三大書取次会社、アメリカにはイングラムやベイカー&テイラーがある(アメリカの書籍取次会社には、日本似た取次店の「ホールセラー」と中小出版社に代わって書店の受注、発送、営業も請け負う「ディストリビューター」がある)。しかし、前にも書いたように、日本のような委託販売や配本制度はない。


2019/08/08

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 13

シュピッツナーゲル典子氏の「ドイツ出版界の対応と適応」の小見出しは、ドイツ出版産業の現状(🔷書店、🔷電子書籍、🔷出版社、🔷価格拘束の保護)、経営戦略にもとづく二大書店の合併、取次大手破産に打撃を受ける小出版社、出版社はどうあるべきか、とドイツの出版界が直面している問題を浮き彫りにしている。中でも“即日配送”を試みてきた大手取次店の一つ、KNVがロジスティクスセンターの配送システムの不手際による突然の倒産の知らせは、流通改革に新たな可能性を見出だした矢先のできごとで、関係者にとってはショックを隠せない様子。特に中小出版社が痛手を被ったようだ。ドイツではアマゾンのシェアが50%から70%と推定され、売上額が10億ユーロ以上とドイツでも今や脅威の存在。日本の取次店(日販やトーハンなどは大手出版社が株主!)もアマゾンの下請け的なことを止めて書店即配サービスを積極的にやったらいいと思うのだ。コストやロジスティクスそれにシステム構築と実現に向けたハードルは高いが、中小書店も維持させて出版文化の多様性を活かすためにもアマゾンに果敢にチャレンジしてほしい。日販などは生協と組んで、インターネットを使い客注品をいち早く届けるシステムを稼働させてはいるが、出版社としては客注先がみえにくい難点も――。ここで思い出した。某大手書店の役員が埼玉にロジスティクス センターをつくり出版社と直仕入れして取次会社抜きの販売ルートを考えていたことだ。(続く)

2019/08/06

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 12

さて、ここまで書いてきて今更ながらIT産業の凄まじい発達――それもわずか四半期くらいの時期に――には脅威すら感じてしまう筆者だが、それはアメリカから忽ちのうちに全世界を駆け巡り、今や世界を一変させたばかりではなく、人々の暮らしに広く深く浸透してしまった。コミュニケーション ツールがコンピュータ、パソコン、スマホのSNSと益々コンパクトになり、掌サイズで操作ができるようになって便利になったのだ。今やツイッターで世界を動かす某国の大統領を見れば分かるというもの。そしてそれは出版業界をも様変わりさせた。紙媒体と電子媒体の攻防である。

次にドイツとアメリカの出版界の現状報告をジャーナリストと常日頃から出版社との版権売買などを手がけているエージェントの二人のエッセイから手短に感想を述べてみたい。今回の特集2ではイギリスの現状報告がないが、英語圏の代表格のアメリカをピックアップすれば足りる。昨夏北欧、ヘルシンキとストックホルムを訪ねた際に書店(ヘルシンキのど真中の「アカデミア」、ストックホルムはセントラル ストックホルムから地下鉄で20分のところにある「アカデミー」とアーランダ空港内のペーパーバック中心の書店)に立ち寄った。スウェーデンでは大分前に再販制を撤廃していて、大手出版社の何社かがコングロマリット的な複合企業体を形成している。また、書店は大手チェーン店が支配的らしい。ネット書店の「Bokus」もその一つ。筆者も試しに本を購入したことがある。また、コングロマリットのBonnier社から直接電子本も購入したことも。概して本は高め、品数は豊富でやはり英語圏や独語圏の翻訳ものも多い。カズオ・イシグロや村上春樹は人気で棚に陳列してあった。

ドイツの出版界の話は、雑誌『図書』でも何回か取り上げていてご存知の方も多いはず。現にこのエッセイでもドイツでの読書傾向を調査した資料に基づいて、「昨今の生活スタイルの変化が読書に費やす時間を減らしている」と同じことを書いていたが、やはり現代人は何処も同じで“忙しすぎる”のかも。それより何よりドイツの出版社、取次店、書店の“直近”の動向が知れて勉強になった。(続く)

2019/08/04

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 11

ドイツ方式をモデルてして出版流通システムを大改革して書き手→出版社→取次店→書店→読者のいわゆる正常ルートの割合を、取次店のシェアを少なくして、出版社→書店→読者のルートの比率を高くするなど見直すことも必要になってきている。しかし、前にも書いたが、それでは再販制度を堅持しながら、出版社、取次店、書店の取り分、マージンをどう分配するのか、ドイツ方式だと出版社負担が増える。リスクを背負って出版活動をしている出版社にとっては頭の痛い問題だ。原材料費や人件費の値上げをも考慮し、仮にマージンを下げて本の値段をあげたとしたら、読者は高い本を買わざるを得なくなる。買い控えが起こるかも。特に硬派ものは益々売れなくなる・・・。取次店は大手ばかりに目を向けるではなく、出版文化の担い手として中小にも目を配って促進活動を強化することができるのか。星野氏が書いているように、取次店は読者や書店を意識したプロダクトアウトからマーケットインへのパラダイム変換をしようとしているらしい。パターン配本を抜本的に見直し、販売意欲のある中小書店をサポートできる目配りのある独自のシステムを構築してほしい。また、書店は独自の責任ある仕入れ能力を高め、責任販売を実行し返品を最小限に食い止める活動ができるのか。出版社は資金繰り的な安易な企画を止めてインパクトのあるしっかりした本づくりができるのか。そのような基本的なことが問われているような気がするのだ。

星野氏は締め括る。「本」の作り方や流通の仕方がどのように変化するのかを見極めながら、その時々に合わせた仕組みを編み出していく者こそが、次の時代の「出版人」であろう。(続く)

2019/08/02

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 10

[近代出版システムの形成と衰退]のところで星野氏が次のように書いている。「日販やトーハンなどの総合取次は、雑誌や書籍を書店に運んでいるだけではなく、書店から販売代金を回収し出版社に支払う決済機能や、大手や老舗出版社に対しては納品された出版物の代金を売れる前に一定割合を支払ったり、大手書店が新規店を出すとき、納品した商品代金の支払いを一定期間猶予するなど金融的機能、さらには書店が経営破綻しても出版社への支払いは保証する信用保証機能など、出版取引に関わる広範な機能も提供してきた。まさに日本独特の出版プラットホームだった」。また、物流コストの値上がりや雑誌販売の減少により現状維持が困難になり、物流コストの一部負担や卸値率の引き下げを出版社に持ちかけているという。そんな中、取次大手のトーハンが支援に乗り出すなど取次店の口座開設が以前より容易になったことで独立系の“ひとり出版社”が多くなったようだ。既存事業者なのか新規開業者なのかには関わりなく、時代の変化に対応して自ら新たな仕組みを作り出していこうとする人々が登場しやすい時代なのだ。執筆者はこれを前向き、ポジティブに受け取っている。明治、大正、昭和、平成の長いレンジの出版流通史を繙けば、その時々の新たな“出現”とエボックを見出だせるが、今の時代の変革はそれより巨大なうねりであることは確かだ。

さて、雑誌の衰退やデジタル化でその販売が見込めなくなった総合取次は、その活路を再び書籍販売に大きく舵を切ったようだ。それは星野氏が示した直近の日販やトーハンの事業計画を見れば明らかだ。執筆者が雑誌の崩壊とあえて書く所以でもある。(続く)

2019/08/01

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 9

このドイツ方式だと出版社の書店へのいろんな仕掛け、事前プロモーションが必要になってくる。手間隙かけないとせっかく売れると考えてつくっても書店店頭に並ぶとは限らない。しかも、返品は出る。至近の例を出していえば、出版社としては原材料費の紙などが値上がりしている現状を考慮に入れると定価付けや発行部数のよみも難しいし、秋の消費税値上げも響くはず。それでいてオンラインショップ、アマゾンなどの売り込みを在庫を切らさないように常に働きかけをしていかなければならない。アマゾンなどは直仕入れを提案しているが、現状では取引条件が弱小出版社にとってはメリットがあまりないようだ。実売数を示さず、“クリック数”で機会損失が大きいと巧妙に直取引を促しているようだ。(続く)

2019/07/31

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 8

はじめに――「出版危機」はマイナスなのか、近代出版システムの形成と衰退 完璧なプラットホームだった「取次システム」、プラットホーム崩壊が出版社にもたらすもの、ポスト「取次」時代の出版流通、書籍で成り立つ出版流通に、ドイツモデルから見る今後の出版流通 日本のモデルケース、高価格・低返品率、出版産業の変化で何が起こるか、おわりに 出版業界団体の機能強化も必要、あらたな「出版人」を待望する、が内容。ここでは出版流通を支えてきた総合取次会社の役割を最新データで現状を追い、その日本独特なシステムが雑誌の低迷で崩壊、あらたな活路を再び書籍に見い出す仕組みを模索し始めたというかなりインパクトのある小論だ。ドイツにあらたなモデルがあるとその現状報告をしているが、日本の出版風土に合うか充分な議論も必要だろう。ドイツでの出版社、取次店、書店のマージン配分も書かれているが、ここで注目すべき点は取次店の書店への即日配送システムだろう。また、ドイツでは雑誌はアメリカでも同じだと思うが、駅のスタンドか定期購読がほとんどで、書店は書籍だけを扱っていることである。しかも、日本のように取次店からの配本はなく、書店が事前発注して仕入れるシステムだ。で、書籍だけ扱って成り立つ要因がマージンの配分率だ。出版社の取り分が少なく、その分書店、取次店への配分率が高いという。だから本の価格が日本より1.5倍くらい高いのだ。この分だと出版社のリスクが大きいといわざるをえない。返品を最小限に留める書店の責任販売が問われるはずだ。

2019/07/30

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 7

何が問題なのか具体的に書いてあるので書き写してみよう。1978年の公取委の言い分。①本の定価が高い、②注文しても入手するまで時間がかかりすぎる、③店頭に同じような本しか並んでいない、④返品を見込んだ定価づけをしている、⑤ 返品率が高く断裁をするため資源のムダ、⑥書店員の商品知識が乏しい、⑦大手と中小の格差が大きい。これに対し当時の出版界の反論。①定価販売ができなることで流通が混乱する、②寡占化がすすみ、より強くなる、③中小出版社の経営が成り立たなくなる、④言論・出版の自由が抑圧される、⑤読者にとっても定価が店によって違うのは不利益である――であった。出版社、取次店、書店、著者・読者、それぞれの立場で議論することを清田氏が提案している。これが古くて新しい問題なのだ。筆者などもこういった立場の違う人たちが話し合って出版界の具体的な改革になれば大歓迎だ。誰が音頭をとるかだ。今は業界に疎い筆者だが、それこそ小林一博さんみたいな業界に精通した人が適任だろうが・・・。

もう一人の論客、『文化通信』記者としてのキャリアを積んだ星野渉氏は、さらに踏み込んだ出版流通の問題を鋭く抉る。「崩壊と再生の出版産業」。(続く)

2019/07/29

クロカル超人が行く 237 2019年盛夏 江ノ島海岸

小さな台風、お騒がせを残し立ち去ったはいいが、平日の江ノ島海岸は静かそのもの。sampo方々ふらりと出かけた割には拍子抜けした。ただ暑さだけが堪えて――。今の若者はあまり海水浴に行きたがらないと聞くが・・・。そんな中、中国語はここでも健在だった。これって珍風景?

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暑中お海舞申し上げます

砂の暑さ半端ないねと海の方

静けさや夏置き去りのスベる海


ああ 江ノ島
真夜中の
おでんセンター


火照る

       白昼夢


超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 6

「限りなく縮小する出版界の現状のなかで、再販について真摯に議論しなければならないところにきている。
再販制についての議論が避けられてきたのは、議論が必然的にマージン問題につながるからだ。たしかに、厳しい出版状況のなかでこれをとりあげることは、大きな負担となるかもしれない。
しかし、これをしなければ出版界の改善はありえないのも、確かである。52年間の出版界ウォッチャーとして言いたいことはこのことだ。」(続く)

2019/07/28

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 5

図表と簡単な年表(1985年~2017年)をみると、32年間の出版界の動向が概況できる。バブル期→バブル崩壊後の景気低迷期ーネット出現期→アマゾン日本進出→中小取次店の栗田・大洋社その前に鈴木書店破産→1992年日書連白書の書店苦境を訴えてからさらに深刻な書店廃業が続く。1991年宮沢りえ写真集、1994年大江健三郎ノーベル文学賞受賞、1995年阪神・淡路大地震、1996年大型書店出店相次ぐ、1997年消費税5%に変更、公取委「著作物再販制度の取扱いについて」発表、中央公論社、読売の傘下へ、1999年新書の創刊相次ぐ、2000年インターネット書店続出、2002年ハリ・ポタ現象、2003年『バカの壁』240万部、2007年『女性の品格』200万部突破、2010年電子書籍元年、2011年東日本大震災・原発関連書続出、タニタ本430万部、2015年又吉直樹『花火』フィバー、「ツタヤ図書館」問題化 2017年『週刊文春』相次ぐスクープ、以上筆者の関心事を年表から拾った。で、この37年間といえば、前史はあるもの筆者にとっても自分の職業遍歴が読み取れ感慨深い。大企業に属していなかった分、中小企業である遣り甲斐を見出だしたまでは良かったがまた、中小企業ならではの悲哀も体験した。で、抜け出してインディペンデント系に。しかし、この表が示す通り、出版業界は紙媒体→デジタル化というグーテンベルク以来の大印刷革命に遭遇し、移行期の混乱や人口減少など複雑な要因が絡み合って衰退し、市場規模の縮小が顕著になった。蛇足だが、残念ながら筆者は上記に挙げたいわゆるベストセラーものはほとんど読んでいない!

高度成長期の出版界、雑誌の時代、「書店経営実態調査」をみる、いまやらねばならないこと、と綴って、最近雑誌『出版ニュース』を休刊したばかりの出版ニュースの清田社長は締め括る。課題がよくみえるので、少し長いが引用したい。(続く)

2019/07/26

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 4

「日書連の加盟店が20年前に15000店あったのが2019年の現在では3分の1の3000店にまで減少」と清田氏が書いているように書店の現状は厳しさを増し、衰退の一途を辿っている。原因は後継者がいない、継がしたくないのが理由らしいがまた、存続し続けるには22%から30%へとマージン引き上げも要求している(本文P.171)。出版全体で1996年時点で確か2兆6千億円あった総売上額が、現在では1兆6千億円まで縮小している。それは169頁の図表を見ても明白だ。また、出版点数が72000点、書籍返品率は38%、雑誌にあっては返品率が45%を示していて、その役割やら存続が危ぶまれているが、紙媒体としての役割よりむしろデジタル・オンライン発信に切り替えていることで存続しているようだ。ここ10年雑誌は、創刊しては休刊したりと競争が激化しているのだ。それはマスメディアの朝日新聞、日経新聞、読売新聞、毎日新聞など紙媒体からオンラインシステム(デジタル版あるいは電子版)の開発と改良・刷新化後の定期購読販促に躍起なっているのを見ればその力の入れようが知れよう。インパクトのある記事内容だと思うが、「課金」がキーワードでそのエンクロジャーに躍起なのが現状のような感じを受ける。
さて、少し横道に逸れた。話を図表に戻そう。はっきり言って初めはスキップして何が問題なのかを探った。清田氏といえば、黒いB4サイズの薄手の黒い手提げカバンにホヤホヤの雑誌『出版ニュース』を入れて版元に配って歩いていた姿だ(但し、筆者の記憶が正しければの話と書き加えておく)。遠い昔――。そこで思い出したのが出版評論家の小林一博(1931-2003)さん(もっと前だと原宿に場を設けて、「棚の会」を主催して書店員たちが熱い議論を戦わせたことだ。また、この流れの延長線にあったかどうかは定かではないが、四谷新道通りの入口付近にあった書店の2階に集まって版元と書店の会合否情報交換会を持ったこともあった)、学士会館あたりで版元有志と定期的に会合を開き出版界の様々な問題について議論をしていた。まだ若いクラスに属する筆者なども代理で何回か末席に座らせて頂いた。会の名前は、確か「出版未来の会」だったか。清田氏がここで書いているような話題が当時から出ていたような気がする。ただ後継者問題とアマゾンの話は別として。要は古くて新しい問題なのだ。旧態依然いえばその通りだ。(続く)

2019/07/24

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 3

①清田義昭「出版ウォッチ」→⑥星野渉「崩壊と再生」→⑤大原ケイ「挑戦続ける」→④シュピッツナーゲル典子「ドイツ出版界」→②向井和美「読書会」→③座談会「沖縄県産本」と読んで、①を再読。①→⑥→⑤→④→②→③→①のまず、日本の出版界概況、出版の現状と展望、アメリカの出版界、ドイツの出版界、読者、書店の順と追った。

やはりオンラインショッピングのアマゾンが話題だ。本だけではなくあらゆる商品がネットで買える。アマゾンは日本進出が2000年、あれよあれよと日本のリアル書店を駆逐、今や「紀伊国屋書店の2倍の売上を誇る(推定2000億円)」(本文P.172)のガリバー企業だ。日本は外圧に弱いのか、アマゾン進出当初はさほど脅威ではないと甘く見ていた節がある。特に独特の取次システム(配本制度と委託制度。トーハンと日販の二大取次会社で市場の75%以上を牛耳っている)では難しいのではないかと囁かれていた。しかし、クリック一つで直接購入でき、しかも会員へのポイント付与することで実質値引きの恩恵を受けるという買い安さといち早く自宅に届く利便性が受けて売上を伸ばしていったのだ。(続く)

2019/07/23

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想 2

雑誌『世界』特集2 「出版の未来構想」の冒頭の編集子のつぶやきが示唆的。「通勤電車の中、ふと顔をあげると、本を手にしているのは自分だけ。天を仰いで呟く。もう絶滅するしかないのか――。」

いやいや、この編集子の呟きも十分分かるような気がする。が、筆者の出社時の電車の中といえば、確かに編集子の嘆きの光景は、それは見事に下向いて指を動かしているしぐさが呆れるほど目立つのだが、どっこい、本を手にして読んでいる人も見かける。年配の男女、若い女性、ビジネスパーソンなど。もちろん5、6年前よりタブレットやスマホでコミック、新聞、ラインそれにゲームをしている人が圧倒的に多くなったことは確かで、そういう筆者もその一人に入るかも――。(笑) さて、特集2 出版の未来構想、出版のどこから議論すればいいか。トップバッターは出版界のご意見番的存在の出版ニュース社社長の清田義昭氏の①「出版ウォッチ半世紀の総括」、次に翻訳家で学校図書館の司書の向井和美氏②「本をとおしてひとはつながる 読書会という幸福」、続いてエディター・書店員の座談会③「本あるところに、コミュニティ 沖縄県産本と読者・売り手の現在」、ジャーナリスト・シュピッツナーゲル典子氏の④「ドイツ出版界の対応と適応」、版権業務を代行するエージェントの大原ケイ氏の⑤「すべての本を、すべてのチャンネルで、すべてのアカウントに 挑戦し続けるアメリカの出版社」、アンカーは文化通信社専務の星野渉氏の⑥「崩壊と再生の出版産業」。165頁~219頁までの54頁がこの出版関係の現状報告に費やされている格好だ。(続く)

2019/07/20

超人の面白読書 141 雑誌『世界』8月号の特集2 出版の未来構想

雑誌『世界』(岩波書店)8月号は、定番の戦争関連記事にドキッとされたが、、特集1 の「争点としての消費税」も関心大、それより特集2の「出版の未来構想」に引き付けられた。どこかでこういった話題を取り上げるだろうと予測はしていたが、やはり硬派系の代表の版元が特集を組んだ。

今や出版業は斜陽産業化したか? (続く)

2019/07/19

超人の面白読書 140 三輪宗弘(九州大学記録資料館教授)著『👀からウロコの海外資料館めぐり』の 紹介

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三輪宗弘(九州大学記録資料館教授)著『👀からウロコの海外資料館めぐり』
A5判・並製・約170頁 CPCリブレNo.10
定価1,800円+税
ISBN978-4-908823-58-9
クロスカルチャー出版(http://crosscul.com )
2019年6月30日刊行 大好評発売中

✳ ここの出版社へアクセスして目当ての『👀からウロコの海外資料館めぐり』のタイトルまで上から下へスクロールしてみてください。記録管理学会理事の齊藤先生の新刊紹介・書評に辿り着く。それを読めば、もうサイコー😃⤴⤴。的確でわかりやすい。

 


めちゃおもしろくすぐに役立つ本が出た。しかもビジュアル的でわかりやすい。ハンディで値段も手頃。関心のある学生、院生、研究者、社会人たちよ、ぜひ手に取ってこの夏実りのある旅に出てもらいたい。30年のキャリアを持つ著者が伝授しているのだから、きっと役に立つこと間違いない。しかも、図書館・資料館・アーカイブの調査資料の探し方や手続きだけではなく、道順やたべものそれに安ホテルまでともかく懇切丁寧なのだ。


 


 


 


2019/07/18

超人の面白読書 139 矢嶋道文編著『有徳論の国際比較――日本とイギリス――』の紹介

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『有徳論』の国際比較―日本とイギリス
矢嶋道文(関東学院大学名誉教授)編著
A5判・上製・約350頁
定価本体3,700円+税
ISBN978-4-908823-51-0
クロスカルチャー出版(http://crosscul.com)

2019年3月30日刊 好評発売中

「有徳論」を真正面からしかもイギリスやフランスとの比較を通じて論じた学術書。「有徳とは何か」に挑む独創的な論究。共同研究による「有徳論」〈日本イギリス〉の試み。有徳性に時と国家をこえた普遍性があったのかを問う。

【目 次】
はじめに――日本とイギリス――
Ⅰ 江戸期における「有徳」論――儒者芦 東山と士農商・経世家との比較――矢嶋道文
1 儒者にみる「有徳」論――芦 東山「二十二箇条の上言」――
2 士農商にみる「有徳」論――川路聖謨、二宮尊徳・佐藤信淵、石田梅岩――
3 経世家にみる「有徳」論(本多利明)
まとめ――儒者の「有徳」論と士農商・経世家との比較考察――
補論  本多利明と「有徳」性――『自然治道之弁』を中心として――(宮田純) 
コラム 上野彰義隊にみる「有徳」性(伊藤綾)  
コラム 江戸期漢方医・北山寿安にみる「有徳」性(洪 涛) 
コラム 勘合貿易にみる明王朝の「有徳」性(暴図亜)  
コラム 雨森芳洲『交隣提醒』に見る有徳性(小田弘史)      

コラム 講道館柔道(嘉納治五郎)の教えと有徳性(石川和枝) 

Ⅱ イギリスにおける「有徳」の歴史 伊藤哲

1 「市民的徳性」(シヴィック・ヴァーチュウ)の伝統
2 近代市民社会の徳性
3 労働者階級(一般の人々)の徳性について――まとめにかえて―― 
補論 アダム・スミス「見えざる手」と「有徳」性(永井四郎)   
補論  古代キリスト教会の「有徳」性
     ――イエス・キリストの平和主義をめぐって――(安井聖)   
        
Ⅲ イギリス現代の「有徳」性
  ――アンソニ・ギデンズの所論を手懸りにとして――高橋一得

1 ギデンズ社会理論の射程
2 イギリス現代社会とグローバリゼーション
3 損なわれた連帯性の修復と能動的信頼
4 道徳的個人主義と倫理的自由主義
5「有徳」性への視点
小活          
補論  デュルケーム(フランス)における開かれた分業社会と道徳的連帯の可能性(大澤善信)

コラム ルーヴァン(ベルギー)・ハーメルン(ドイツ)にみる救貧と有徳性(橋本和孝)

〔特別寄稿〕
松野尾裕「賀川豊彦における「有徳」について――互助友愛の教育と実業」―― 
三澤勝己「広瀬淡窓著『儒林評』の江戸儒学三変論――朱子学に見える「有徳」性を考える――

小室正紀「福沢諭吉の道徳教育反対論――明治十六年『儒教主義』『徳教之説』をめぐって――

Ⅳ まとめ――有徳論の国際比較――

謝辞 矢嶋道文

【書評】を読むはこちら⇒

庄司俊作先生(同志社大学名誉教授)の卓越した書評 e69c80e7b582e78988e4bfaee6ada3e6ada3e5bc8fe5ba84e58fb8e58588e7949fe69bb8e8a995e69c89e5beb3e8ab96efbc88e697a5e88bb1e6af94e8bc83efbc89.docx

追記   2020年3月中旬にこの本をめぐってシンポジウムが慶応大学で開催されるという。楽しみである。(2019.8.7  記)  

 

2019/07/15

クロカル超人が行く 236 渋谷道玄坂界隈 『Mikkeller』、名曲喫茶『ライオン』そして台湾ラーメン店『喜楽』続

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①【ミッケラー】ボードのビールメニュー
②【ミッケラー】アメリカン ペールエール
③【ミッケラー】トリアエズ ウィット
④【ミッケラー】ヨロッコ ホップシャワーシーズンとミートボール(6個あった残りの1個、味はいい。『IKEA』のミートボールより旨い)
⑤【ミッケラー】夕暮れのミッケラー。全貌。1階は外と隔たりをなくしたオープン形式の立ち飲みで2階はテーブル席。現在ストックホルムはじめ13店舗展開中とか。ミッケラーはデンマークのビール醸造所。
⑥【名曲喫茶:ライオン】カラフルで雰囲気のある外観。
⑦【名曲喫茶:ライオン】レトロ感たっぷりのカタログ。当店の立体再生装置。冷房完備。珈琲と立体名曲。名曲喫茶ライオン。TEL(3461)6852 http://lion.main.jp/ 営業時間 AM.11.00~P.M.10.30
⑧【名曲喫茶:ライオン】カタログ中。夏のHiFi ライオン・コンサート 立体音響。全館(各階)ステレオ音響完備(帝都随一を誇る) コンサートは毎日午後3時と7時に演奏、他の時間はリクエスト曲を演奏。7月のプログラムが書いてある。
⑨【台湾ラーメン:喜楽】そうそう、チャーハンも有名だかやはりもやしラーメン。もやし炒めがたっぷり。

2019/07/14

クロカル超人が行く 236 渋谷道玄坂界隈 『Mikkeller』、名曲喫茶『ライオン』そして台湾ラーメン店『喜楽』

世田谷方面で仕事を終えて久し振りに渋谷に寄った。駅周辺の工事が長引いていることと若者組がはしゃぐ街として少し遠退のいてしまいがちな筆者ではあるが・・・。夕暮れ時(なぜか吉行淳之介の名作『夕暮まで』を思い出した)、前から気になっていた渋谷は道玄坂の店に立ち寄った。デンマークのクラフトビールが売りの『Mikkeller』、クラシック音楽喫茶『ライオン』そして台湾ラーメン『喜楽』だ。いやいや、北欧もの(スウェーデンものだったら最高)、クラシック音楽それにラーメンと3軒とも筆者の好みの店が同じ路地にしかも直線で並んでいる光景は初めて。見逃す手はない。1軒目はデンマークの今流行りのクラフトビールの店、2軒目は知る人と知るクラシック音楽の名曲喫茶、三軒目は台湾ラーメン店とはしごしたのだ。この辺は以前にコラムで書いたので詳細は省くが、いわゆるラブホ街だ。しかし、3、4年来ていない間に若者向けのコジャレで小商いの店が増えて昔の“風情が”失われつつあるようだ。なぜか、場所は違うのに“ダーシェンカ”、“ダーシェンカ”とチェコの店の名前を口ずさんで止まらない。こういう時に詩神(ミューズ)がよく降りてきたものだ・・・(笑)


街のあかり


ドウゲンザカの夕暮れに
街の妖精が現れて追いかけようとすると
ビルの間に消えた

うねった坂道
しっとり
ねっとり

赤頭巾ちゃん
ここはどこ?

モンマルトルの丘
(・・)


1軒目のデンマーククラフトビールの店は、20種類のクラフトビールが手書きで書いてあるボード(読みにくいがこれがメニュー。1~15までミッケラーもの、あとは日本のクラフトビール)から選び前払いで支払うシステム。グラス一杯950円(大のlarge分。小のsmallもある)、鮭やミートボール(味はいい)のつまみをオーダーして値段は2000円くらい。因みに、筆者は初心者向けの1番を選択、その後更に追加で2番(大)、20番(小)をオーダー。味はそう悪くはないが決して安くもないのだ。オープンカフェ否バーで外国人がビールで歓談しているなか、若い女性組やカップルも次々と入って来てあまりスペースのない店は一杯に。この店は宇田川町から引っ越してまだそんなに月日は経っていないらしい。2軒目は、今は少なくなったクラシック音楽の名曲喫茶『ライオン』。その昔渋谷駅すぐ近くにあった同じような名曲喫茶の『田園』を思い出した。クラシックには素人の筆者でも、雰囲気のある店でクラシック音楽をじっくり聴いていると心の平安を感じる。真ん中上の巨大スピーカーから流れる楽曲にしばし痺れた。この日は武満徹作曲のピアノ・ディスタンス、遮られない休息、8つの弦楽器の為のソン・カリグラフィー第1番、第3番、エクリブス(蝕)の曲目、ピアノ、ヴイオラ、ヴァイオリン、尺八での演奏だった。たまたま遭遇しラッキーだったのだ。実は武満徹のレコードを探した時期があったが手に入らなかった・・・。渋いアイスコーヒーは、一杯570円。蛇足だがトイレに行くにもなかな味わえない室内の歴史を感じる床を踏みしめて通るのだった。3軒目は、『喜楽』のもやしラーメン(750円)だ。過去に2度ほど訪ねているが結構混んでいた。今回は2階へ。中華麺それにシャキシャキした炒めもやしがたっぷり、香ばしく旨かった。3軒とも至近距離にある。
こんな風にして3時間弱の“夢の饗宴”は終わった。

2019/07/02

クロカル超人が行く 219 【北欧最新情報】フィンランド・ヘルシンキ&スウェーデン・ストックホルムとウプサラの旅 14 憧れのスウェーデン・ストックホルムバス遊覧 続

追記2   前頁で第2回夏季オリンピック ストックホルム大会(1912年5月~7月)に初出場したマラソンの「金栗四三」に言及したが、NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリンピック咄~」では金栗四三が主役、ドラマは半年間忙しく展開してつい先頃(2019年6月23日)第一部(金栗四三が主役)が終了した。前半を終えて視聴率は低迷しワースト記録を作っている。噺家古今亭志ん生の話も交ぜてストーリーは二つの異なった出来事を同時に追う仕立てになっていたが、変に金栗四三のマラソンの話と交差させたりと無理なドラマの展開を見せつけられ、視聴者は速いテンポとストーリーの“アバンギャルド”さについていけなかったのが視聴率低迷の原因かもしれない。それと金栗四三の知名度や来年の東京オリンピック開催の前宣伝的なことも視聴者を遠ざけた一因かも。

中村勘九郎(金栗四三、何事も前向き、明るさがいい)、綾瀬はるか(金栗の妻スヤ、献身的、演技がうまい)、中村獅童(金栗の兄、個性的すぎるが人情家)、大竹しのぶ(金栗の義母、いびりの姑、演技は抜群)、別所広司(嘉納治五郎、貫禄貫禄)、生田斗真(短距離走者・海外の支店銀行員三島弥彦、髭が似合い、爽やか)、杉咲花(シマ、真面目でやや暗い感じ)、黒沼結花(抜群の身体能力をもつ女性、なかなかどうして)、シャーロット・ケイト・フォックス(大森兵蔵の妻、平坦)それと嘉納治五郎と対立した体育指導教師や女性新聞記者、足袋屋(ここの役者が大問題を起こした。代役が良かった!)など(以下余計な古今亭志ん生関係者は省略)キャストは豪華だったにもかかわらずだ。ここで何を書きたかったか。それはスウェーデンのストックホルムロケが本番で意外と多く採用されていたことだ。日射病(現熱中症)で亡くなったポルトガルの選手がいて、金栗も何だか分からず途中棄権して行方不明。しかし、時代はこの不条理な出来事を見過ごさなかった。カミュの『異邦人』のムルソーの証言ではないが、太陽のせいだ、とは言わなかった!粋な払いが50年が過ぎた1960年代にやって来た。金栗四三は、スウェーデンの粋な申し出に応えて走った。偉いのは金栗もそうだが、当時のオリンピックの記録を丹念に調べたジャーナリスト(?)だろう。記録はギネスブック入りで、恐らくは永遠に破られないだろう。クーベルタンの精神がそうさせたはずだ。筆者も日頃は忙しく仕事をしているが、NHK大河ドラマを紹介するストックホルムの現地バスガイドの少し低い声がいつまでも耳に残っていて、甲高い勘九郎の声とダブる。それは現実と非現実を行ったり来たりしているような妙な感覚である。(2019.6.27 記)

追記3   仕事で目黒方面に向かう地下鉄に乗り込んでびっくりした。ストックホルムに思いを巡らせていたら、大手町あたりから二人のビジネスパーソンが乗り込んで大きな声で話していた。えっ、聞こえてきたのは、なんとスウェーデン語だった。仕事のことで話している様子だった。所々解る単語が耳に入ったが大声、少しマナーが悪かった。スウェーデン語で嗜めようと考えたが、そのうち御成門駅で下車してしまった。(2019.6.27 記)

Ursäkta mig, tala lugnt i tunnelbanan.
すみませんが、電車の中では静かにしてください。

追記4   2019年6月28日(金)の神奈川新聞には「76億人の海図スウェーデン ;キャッシュレス大国」という特集記事が掲載されていた。これまた前頁で触れた「アバ博物館」での話が中心だ(筆者がストックホルムでキャッシュレスに遭遇した話については、このシリーズ17と18を読まれたい)。その受付カウンターには、“We accept you for whoever you are. But we do not accept cash”(あなたがだれであろうと受け入れますが、現金は受け取れません)と書かれていて、入場料350クローナ(約2800円)はデビットカードやクレジットカードか、携帯電話による支払いなどデジタル決済でお願いしますと。アバのメンバーの一人で設立者のビョルン・ウルバース(74)は、息子が強盗に襲われた苦い経験から現金がなければ犯罪は起こらなかったと。その後はキャッシュレスの旗振り役として知られるようになったという。一方で、財務省を皮切りに警察庁長官を務めあげた元高級官僚のビョルン・エリクソン氏は、こういったキャッシュレス化に高齢者、障害者などの弱者切り捨てになると異論を唱えて立ち上がっている。キャッシュレスは現金を持たずに決済できるので便利だが、一部の大手銀行と企業が利益を独占化する危険を孕んでいる。(2019.7.2)続きを読むは、この新聞の特集記事で→76億人の海図25 スウェーデン キャッシュレス大国20190701122433.pdf

2019/07/01

クロカル超人が行く 219 【北欧最新情報】北欧フィンランド・ヘルシンキ&スウェーデン・ストックホルムとウプサラの旅 14 憧れのスウェーデン・ストックホルムバス遊覧

スウェーデンは他の北欧諸国、特にアイスランドやノルウェーとともにいつかは行ってみたい国だった。約30年前にニューヨークのケネディ空港で見た鷲の翼をもつコンコルドの飛び立つ勇姿を近くで見たとき、これでニューヨークから北欧に一気に飛び立てると真剣に考えた。しかし、今はそのコンコルドはない。それ以来北欧特にスウェーデン行き決行は延びに延びてやっと今回実現の運びに。

それは空路ではなく航路の終着点ストックホルムから始まった。シリアライン ターミナル内で現地ガイドと合流してバスに乗り込んだ。北欧図書館視察団のスウェーデン最初の図書館研修は、ストックホルム市立図書館だ。約束の見学時間にはまだ早いこともあって、少しの間バスでの市内遊覧となった。ストックホルムの東端Värthamnenバットハムン港シリアターミナルからバスはゆっくりと窓外を眺められるようにスピードを落として走行。まず現地ガイドさんが案内したのは、ヤーデットの芝で覆われた小高い丘、元は軍の練習場だったところ、次にスウェーデンテレビやラジオ放送局。実は筆者が常に現地語の生きた言語を身につけたいと考えてスウェーデン語放送をネットで聴いているのだ。その放送局を案内されたのだ。感激!ここで放送しているんだ、最新のニュースや天気報それに身近な話題を英米ほかのポップミュージックを挟んでネット配信している。1、2カ月前だったか、Kポップって、なにと質問していたアナウンサーがいたが)。最近のネットだと音声だけではなく、写真付きの記事がリアルに見れるから今は便利な時代である。ドュールゴーデン地区に入ると人気のスウェーデンが生んだ4人組ポップグループ、アバ(1970年代、「ダンシング クィーン」が代表ヒット曲)の博物館、ヴァーサ博物館、途中世界最古の野外博物館スカンセン(古き良き時代のスウェーデンが見学できる。本ではよく知っていた)の一角では、日本人たちによる撮影が行われている現場に遭遇した。来年のNHK大河ドラマ「いだてん―東京オリンピック噺 オリンピックに初参加 金栗四三」のストックホルムロケと判明。主役の中村勘九郎も来ていた。来年5月頃放送予定とか。 バスはトラムなどとすれ違いながら王立劇場などのある高級住宅街(住宅は今は供給不足、分譲と賃貸の割合は6対4だそうだ)や湖岸通りを抜け、王宮や大聖堂があるガムラスタン(12、3世紀~17世紀の建物で国の重要文化財に指定されている旧市街)からセーデルマルム地区のスルッセン方面へ。メーラレン湖とバルト海の水面を調節する水門(スルッセン)は、今150年に一度の改修工事中で大型の重機が何台も動いていた。2030年に完成予定らしい。先ほど通った湖岸通りに『ユニクロ』が明日北欧初の出店で開店準備中。店の前には大きな赤いユニクロの文字が踊っていたばかりでなく、トラムやバスにも派手な宣伝を繰り広げていた。スウェーデンのファストファッション『H&M』に向かい撃つビジネス展開になりそうだ。日本のアパレル企業がデザインの優れた北欧の地で認知されるか。 バスはさらにメーラレン湖河畔の橋を渡ってしばらく走り小高い丘で少しの間停止した。そこはストックホルムの王宮など有名な歴史的な建造物が一望できるまさしく絶景で撮影スポットになっている。なるほど北の水の都ベニスという意味がここに来て初めてわかる。14の島々からなるストックホルムは水の都で島を繋ぐフェリーが頻繁に出ている。ニューヨークのブルックリン橋の撮影スポットから眺めるマンハッタン島とはまた違った趣である。筆者流の新たな絵葉書が出来た格好だ。(2018.9.9  記)

追記   たまたまかは知らないが(そんなことばのニュアンスだったか)、シリア ラインの船着き場から次の訪問館のストックホルム市立図書館へ行くにはまだ時間がたっぷりあったので、バスガイド付きのバスでの市内観光となった。改めて旅行会社が作成した大まかなスケジュールを確認したがそこには市内観光とは書いてなかった。

バスの中から撮影したストックホルム市内をビデオで観るはこちら→ 【ストックホルム市内観光①】 https://youtu.be/dzR6xuEITHw 【ストックホルム市内観光②】 https://youtu.be/rux7CFzUsQE 【ストックホルム市内観光③】 https://youtu.be/vYzV31a5cZc 【ストックホルム市内観光④】 https://youtu.be/mNP4NfQPaDw


2019/06/25

超人の面白読書 138 川勝平太著『富国有徳論』 2

目次

提言 富国有徳の国づくり
第1部 富国の士民
1 平成の“米騒動”と勤勉の徳
2 西洋の資本主義と東洋の資本主義
3 富の再定義――マルクスからラスキンへ
4 市民から士民へ
第2部 対談
1 鎖国と天皇――日中韓「近代化」の検証(毛利敏彦×川勝平太)
2 日本経済はどこから来てどこへ行くのか(速水 融×川勝平太)
3 東西文明システムと殖産融合― 一国資本主義から文明論へ(角山 榮×川勝平太)
4 シュムペーターを超えて(岩井克人×川勝平太)
第3部 今西錦司と宮沢賢治

1 心の書―今西錦司『生物の世界』今西錦司翁との一期一会
2 今西自然学の可能性
4 今西錦司と宮沢賢治
5 宮沢賢治―「地球時代」の先駆者
あとがき

追記   一通り読んで大分経つが、この本が約四半世紀前の1995年に出版された本に注目したい。バブルが弾けてから少し経った時期に相当するのだ。それとその前に刊行された『日本文明と近代西洋「鎖国」再考』(NHKブックス 1991年初版)では、イギリスとインドの具体的な例を取り上げて、有名な“イースタン・インパクト(東洋の衝撃)”について書かれている(✳)。いやー、何十年か振りで書店で再購入した。前に購入した本は手元にない。現物が書店にあることが不思議なくらい。普通なら絶版だが、いわゆるロングセラーものだ。購入した本は奥付けに2015年12月、19版とある。いろんな意味でインパクトのある本だ(2019.7.9   記)。

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✳ 下記の文章を読めばより解りやすい。
木綿を例にとって説明した後、次のように書く。「イギリスはインド製オリジナルのコピーをつくるのに優に一世紀を要し、産業革命をまって初めてオリジナルを凌ぐコピーの生産に成功した。イギリス産業革命は自生的といわれる。しかし、むしろ産業革命――その定義上、経済と社会の根本的革命をともなう――を必要とするほどにオリジナル製品をもたらした地域からの外圧は強烈だったとも言えるのである。日本産業革命の国際的条件はウェスタン・インパクト(西洋の衝撃)であったといわれるが、イギリス産業革命の国際的条件はイースタン・インパクト(東洋の衝撃)――あるいはアジアの衝撃――であった。」(本文P.61)

追記2 『日本文明と近代西洋「鎖国」再考』(NHKブックス 1995年19版)の目次。

序  アイデンティティーの探求
グローバルな経済史をもとめて  経済学者の自然観   本書の立場と構成   社会科学の個性
第1部 日本と西洋の併行的「脱亜」―アジア文明圏からな自立
1 鎖国と近代世界システムの連関
木綿の西方伝播とイギリス産業革命
木綿の東方伝播と日本産業革命
「脱亜」の2つの形
第2部「経済と文化」の構想
1  唯物史観と近代日本
2  今西「自然学」への注目
3  文化・物産複合論
4 日本文明の形

(2019.7.15 記)

2019/06/24

超人の面白読書 138 川勝平太著『富国有徳論』

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「ココログ」を使用してもう10年以上経つが、このところ環境整備に忙しいのか、何だか慌ただしい。競争が激しいのはわかるが仕様やスタイルなどプロバイダーの姿勢が問われかねない出来事が起こっているような気がする。お客様は神様だと言った流行歌手がいたが、そこまでいかなくともビジネスは相手があってなんぼのもの。目線が大事。やはり使い勝手が居心地良い環境を創るのだ。そこのところをはき違えないでほしい。

それはともか「有徳」とは何かを考えているが、「道徳」とももちろん意味合いが違う。平たくいえば、「有徳」は徳があること、他方、「道徳」は人の道。人が社会生活を送るときに守るべきルール。因みに、広辞苑を繙くと、「有徳」は徳を備えた人と定義は短い。しかし、「道徳」となると俄然長いのだ。人のふみ行うべき道。ある社会で、その成員の社会に対する、あるいは 成員相互間の行為の善悪を判断する基準として、一般に承認されている規範の総体。法律のような外面的強制力や違法性を伴うものではなく、個人の内面的な原理。今日では、自然や文化財や技術的な商品など事物に対する人間のあるべき態度もこれに含む、とある。

「有徳」をネットで検索サイトしたら大分前に出た川勝平太の『富国有徳論』(紀伊国屋書店 1995年刊)を見つけた。が、この本は絶版で仕方なく図書館で借りて読んだ。

本書は、『RONZA  (ろんざ)』、『週刊ダイヤモンド』、『毎日新聞』夕刊、『日本女子大学教養特別講座二七集』、『日本の進路を考える・セミナーシリーズ』第4号、『諸君』、『現代思想』21巻13号、『朝日新聞』夕刊、『ボイス』、『新・校本宮沢賢治全集』第9巻、月報などで書いたものを編んで一冊にまとめたもの。(続く)

2019/06/14

神田小川町『ポンチ軒』のかつカレー

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若い頃は永井荷風ではないが、かつ丼に目がなかった。あれから幾星霜、かつ丼の魅力はだんだん薄れて、とんかつは食べるがかつ丼(都内でも名店は結構あるが)まではいかなかった。で、今度はかつカレーにハマっている。簡単そうでなかなか美味な絶品に出合わないのだ。カツカレーの有名店の『アサノ』(町田)や『ロダン』(八丁堀)は訪ねている。このコラムのどこかで書いたが、その昔白山にあった『つくば』のステンレスの皿にのったカレーたっぷりのカツカレーを昼時によく食べた。更に遡ること15、6年前、学生時代のアルバイト時期、当時あったとんかつ弁当店『さわだ』でも夕食によく食べた。

昔のことはさておき、昼食に神田小川町にあるとんかつの名店『ポンチ軒』に出向いてかつカレーを嗜んだ。とんかつでは知られた店で筆者は今回で2回目。相変わらず人気で少しの間並んだ。豚肉がやわらかくサクサク感がある。カレーも後から辛さが来る感じで食欲をそそる。味噌汁付きで1250円(少し高い)。


かつカレー辛さものせて夏来る

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2019/06/04

文芸評論家加藤典洋の死

筆者は、文芸評論芸評論家加藤典洋氏が5月16日に死去したことを偶然にも朝日新聞の日曜日の記事で知った。死因は肺炎、享年71歳。まだまだ長生きできる年齢だ。加藤典洋といえば、当時勤めていた明治学院大学国際学部のキャンパスの一角で何か考えている風でうつむいていた姿が忘れられない。かつては京大の農学部付近で梅原猛が何かに取り憑かれるたような姿を目撃している。何れも偶然通りかかっただけであるが。今筆者の机の上には読みかけの『戦後的思考』(講談社学芸文庫)がある。彼の叙述は一見理解しにくい文章構造を持っているが、この朝日新聞に寄稿した歴史学者與那覇潤氏が、一度身体を潜らせて言葉を紡ぎ出す独特の思考のスタイルと書いているが、いやに説得力がある。『現代詩手帖 』だったかに山形での講演記録を掲載したものを読んで大変印象深かった。国立国会図書館の職員時代にカナダへの留学時に好きで研究していた中原中也についての原稿などを消失してしまい、それ以後中也研究は諦めた、というような内容だったように記憶しているが、今となっては定かではない(この文庫本年譜で触れている!)。この人が詩に造詣が深く研究までしていたとは知らなかった。こちらが勉強不足だった。『アメリカの影』は確か今も筆者の本棚の隅にあるはずだ。吉本隆明といい、優れた文芸評論家が少なくなってまた一段と寂しくなる。誰かが書いていたが、今一番不人気なのが文芸評論のジャンルらしい。良き水先案内人はいつの時代でも必要なのだが。


この記事を書いてしばらく経つが、講談社学芸文庫に入ったのは比較的新しく2016年で約3年前、しかも若い世代の思想家東浩紀が解説を書いている。13頁に及ぶ詳細な文庫本の年譜を読んだ。解ったことがある。鶴見俊輔にぞっこんだったことだ。それともともと仏文出だが、必要あって英語を猛勉強したことで文学論、サブカルチャーを内外に広めたこと、その後世界のあちこちに行ってはレクチャーをし、更にはいろいろな国々に旅行もしていることがわかった。著者自身による年譜の後には自著が並ぶ。単行本はこの時点で46冊もある。毎日新聞、東京新聞などの加藤典洋の訃報記事もネットで読んだ。
今『アメリカの影』を家と会社で探しているがまだ見つからない。(その後灯台もとくらしとはこのことかと思わせることが。何と会社の書棚に収まっているのを発見したのだ。愚かである)

追記 書店で雑誌『群像』最新号を覗いていたら、表紙に些か小さめの活字で「加藤典洋追悼」と書いてあった。で、ページを捲って驚いた。たった二人しかも元同僚の短文のみ掲載である。扱いが酷いとはいわないが寂しい感じだ。(2019年6月17日 記)

追記2 毎日新聞読書欄(2019年6月16日朝刊)の「この3冊」は、西谷修・選 加藤典洋 ①戦後的思考 ②9条入門 ③君と世界の戦いでは、世界に支援せよだ。(2019年6月18日 記)

追記3 前後するが、毎日新聞6月6日夕刊特集ワイドでは、藤原章生記者の記事が掲載されている。友人の文芸評論家神山睦美氏のインタビューも混ぜて、タイトルは「自分は雑魚」ベースにだ。デンマークなどの留学日記を綴った『小さな天体』、加藤典洋の本音が出ている『人類が永遠に続かないとしたら』(2014年),も読んでみたい。ご子息が交通事故で亡くしたことが大分痛手であったようだ。(2019年6月21日 記)

追記4 ジャーナリストの古田大輔氏が、加藤典洋の『敗戦後論』に言及しつつ、戦後は今も終わっていないのではないだろうか。私たちはなおあの歴史を総括できていない、と書いていた。(2019年7月14付毎日新聞読書欄「昨日読んだ文庫」) (2019.7.15 記)

追記5 雑誌『ちくま』2019年8月号に追悼加藤典洋の記事。その記事を読むはこちら→

追悼加藤典洋の記事 - 20190819190412.pdf

追記6 朝日新聞2019年7月27日(土)の読書欄 ひもとく 加藤典洋の仕事の記事。その記事を読むはこちら→

朝日読書欄 ひもとく 加藤典洋の仕事 - 20190819190501.pdf

2019/05/28

超人の映画鑑賞 ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス 3

改めてこの映画から図書館の役割や奉仕(サービス)とは何かというごく当たり前の問いを突きつけられた思いだ。〈知〉の集積場所である図書館は、その本来の姿から進化し続け、高度な調査能力を持つ―現に映画では移民のルーツを訊ねてきた女性に懇切丁寧に応対している光景を映し出していた―ライブラリアン、地図コレクションや貴重書(グーテンベルグの聖書や作家カポーティの草稿ほか多数)の所蔵、映画のシーンでもお馴染みの大閲覧室(3階、ローズ・メイン・リーディング・ルーム)、オーディオ関係の貸出はもちろんのこと、作家らのトークショー、学習プログラム、音楽やダンス教室の開催そして今やネット接続用のツールまで貸出されている(インターネットのサポートには目を見張るものがある)。言わば、カルチャーセンターやコミュニティセンターとしての役割も担っているのだ。サラダボールのニューヨークの人口800万人のうち11%に相当する90万人が貧困層といわれているが、そういう人たちにも利用できるよういろいろと工夫されている。身分証があれば原則無料だ。また、それぞれの地域に根差した地域館ともいうべき分館の役割はそれを物語っていて、カメラも捉えて離さない。ブロンクスの就職フェア、チャイナタウンでのパソコン指導、黒人文化研究図書館の作家を招聘してのトークショー、舞台芸術図書館でのピアノ演奏、点字・録音本図書館の勇気ある試みなどカメラは執拗に本質を抉るように追う。筆者は特に作家らのトークショーや黒人文化研究図書館それに職員幹部たちの会議のシーンが印象に残った。シビアな論戦のシーンも。この図書館を利用して作家や芸術家になった人たちもいるのも頷ける。知的好奇心を求める人たちには大いに解放されているのだ。1980年代後半にここを訪ねた際に分館も2、3訪ねている。それは寒いニューヨーク歩きに一休みできる安全な場所としてだったか、或いはある明治期に発行された新聞をあてもなく探していた時期だったか、今となっては定かではない。が、その新聞のありかをニューヨーク公共図書館で再チャレンジして探してみようと考えている。デジタル化が進んだ今、発見できるかも。それはともかくあっという間の3時間、迫力があったしニューヨーク公共図書館の内部を垣間観れて大変興味深かった。昨夏北欧の公共図書館・大学図書館を訪ねた筆者なりの“リアルな図書館”の旅に新たな映画芸術の所産が加わった格好だ。何よりもここには生き生きとした人間が描かれている。リアリズム映画の極致と言ってもいい。平等と民主主義そして人間参加・讃歌――。

※辞書を引くと、エクス・リブリスEx librisは 蔵書からという意味のラテン語。英語はbookplateというらしい。日本では蔵書印。

 

2019/05/27

超人の映画鑑賞 ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス 2

映画は図書館の科学者とのトークから始まる。やがてこれが民主主義だと言わんばかりの職員たちの熱い議論の場面が展開される。カメラは図書館の内部奧深く潜入していくが、基本はこの職員たちの熱い議論が全編を貫いている。公共図書館といっても中身は私立図書館でニューヨーク市の財政支援と残りは寄付で賄われているのが現状である。そこには財源確保に四苦八苦する図書館側の事情が見え隠れする。何にもまして企画立案がものをいうし、実現に向けて多種多様なプロジェクトを立ち上げ、分館や専門図書館を含めた巨大な図書館の運営が行政側にまた、寄付者側に対しても現実的に応えられているか、絶えず検証し続け結果を示している。でないと予算が削減され図書館運営に支障をきたすからだ。ニューヨーク公共図書館は、恐らく全ての点で世界中のライブラリアンが羨む、否憧れる筆頭図書館なのだ。

それでは3時間余の上映の中身をパンフレットで追ってみよう。午後の本 Books at Noon)~リチャード・ドーキンス博士   司書たちの対応   民間支援者に語りかけるマーク館長  ジェローム・パーティー分館   著者と語る~イスラム教と奴隷性   舞台芸術図書館~ブルーノ・パーティーワルター講堂のピアノコンサート   ブロンクス分館の就職フェア   幹部たちの会議   ピクチャー・コレクション   ニューヨークのユダヤ2世について著者のトーク   (公共図書館ライブ)~エルヴィス・コステロ   幹部たちの会議   (午後の本 Books at Noon)~ユーセフ・コマンヤーカ   中国系住民のためのパソコン講座   点字・録音本図書館   ミッドマンハッタン分館   ブロンクス分館の演奏会   黒人文化研究図書館~“ブラック・イマジネーション”展   舞台芸術図書館~マイルズ・ホッジス   幹部たちの会議   読書会   幹部たちの会議   舞台芸術図書館~劇場の手話通訳者   図書館の内側   パークチェスター分館   ジョージ・ブルース分館   シニアダンス教室   ウェストチェスター・スクエア分館   黒人文化研究図書館~90周年の祝賀会   読み聞かせ教室~マクドナルドおじさんの歌   ハーグ・コレクション   幹部たちの会議   印刷コレクション  各分館スタッフとのミーティング   点字・録音本図書館   ジェファーソン・マーケット分館   (公共図書館ライブ)~パティ・スミス   施設担当の報告  幹部たちの会議   図書館ディナーの準備    委員会への報告~黒人文化研究図書館の蔵書について   幹部たちの記念撮影   (公共図書館ライブ)~タナハシ・コーツ   幹部たちの会議   マコーズ・ブリッジ分館   (公共図書館ライブ)~エドムンド・デ・ワール   以上が上映内容である。

 

2019/05/24

超人の映画鑑賞 ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

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世界的に有名なニューヨーク公共図書館 NewYork Public Library。三越ではないが二つのライオン像(ライオン像には母体となったAstorアスター図書館とLenoxレノックス図書館に因んだ名称がありまた、恐慌時代に名付けられたpatience忍耐とfortitude不屈の精神の愛称もある)が出迎えてくれる、あのニューヨークは5番街42丁目にある威厳のある図書館。その名前の経緯は何度も訪ねたり調べたりして筆者なりに分かっていたつもりでいたが、今回ドキュメンタリー映画を観てその名前をしかと認識した次第。氷解したのだ。名称はpublicだが中身はprivateなのだ。それは鉄鋼などで財をなしたカーネギ―たちが私財を投じてできた世界屈指の私立図書館だからである。カーネギーは教育、文化や福祉にも力を入れた慈善家としても有名だ(これに匹敵する人が日本では倉敷の実業家・慈善家大原孫三郎か)。筆者が最初に訪ねたのは1980年代後半だ。プライベート旅行だったが、当時勤めていた会社の商品を閲覧室のコンピューターを使って検索、その会社の商品の何点かが出てきて興奮したことを昨日ように鮮やかに覚えている。また、マップコレクション室や2階(?)にあるチャールズ・ディケンズの展示品等を観て回った。そのあとニューヨーク旅行では時々訪ねている。ニューヨーク公共図書館の建物のまわりには様々な人間模様が見て取れて、これまた興味深い。2013年春5月にはとうとう仕事でお邪魔して館内を案内されたりもした。映画のシーンでお馴染みの大閲覧室も。その時は日本関係の担当者が休暇中でイタリア旅行中、代わりにウェブデザイン担当の女性が応対してくれた。こちらはお近づきの印として日本から箸や和紙などを持参してプレゼントした。日本のラーメンがブームらしく(ここ2、3年でラーメンも更に進化したらしくニューヨークのあちこちに店舗ができているらしい)、話題は豚骨ラーメンの『一風堂』の話で盛り上がった。ラーメンにありつけるまで2時間待ちでtoo crazyと。一緒にお付き合い頂いた某書店ニューヨーク店のキューバ人を伴侶にした千葉県出身の女性スタッフと素晴らしい環境の事務室でしばし会話を楽しんだのだ。それも今となっては懐かしい思い出だ。

さて、『ニューヨーク公共図書館』は、NYPLの略で親しまれている、分館や研究図書館を含めて92館、予算規模340億(日本の公共図書館の数は3292館、経常予算1427億円―日本の図書館総計2018より)、蔵書5295万冊、職員3100人余、年間来館者数1700万人、貸出数346万人(ウィキペディア)の巨大かつ民主的な図書館だ。そこにカメラが入った。ドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン監督の『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』である。午後6時15分開始、午後9時50分に終了の3時間30分の上映(途中5分の休憩)だった。

2019/05/19

超人の面白建築 ヴィトラ社のベルヴィル チェア

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ヴィトラ社のベルヴィル チェア。シンプルで機能性に優れた椅子。ヴィトラ社はフィンランドのアルテックの親会社。先日表参道にある『Artek Tokyo Store』で購入したもの。この椅子で3時間読書を楽しんだ。この椅子についての詳しい情報はこちらへアクセスされたい➡

https://www.vitra.com/ja-jp/product/belleville-chair

 

アホイズム

 

フォルムよフォルム

おまえはいつからそんなふうに立ち振舞っている?

晴れの日も雨の日でさえいつも同じ

何喰わぬ顔のおまえ

それがカワユイ

 

フォルムよフォルム

椅子椅子さあベンち

曲線のマジック

ブラック&ベージュ

 

 

2019/05/17

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 11

『ちくま』を読了したあと、『一冊の本』を読み始めたら格段と読みやすくなった。やはりフォントやサイズは重要だ。これは何冊かよみくらべることで―ここではたった3冊だが―得られた結果だろう。PR誌3冊目の『一冊の本』も読み終えた。島薗進の「巻頭随筆――一冊の本  人は「喪失」とどうつきあってきたのか?――『ともに悲嘆をいきる――グリーフケアの文化と歴史』の射程」は、医学から宗教学に転じた学者の一文だが、東日本大震災と福島原発事故後に死と向き合うこと、ともに悲嘆(グリーフ)を生きることの意義を垣根を超えた新たな宗教者たちのグリーフケアを紹介しながら綴る。偶然にもこの記事を読み終えた日の夕刊に同じ執筆者の記事が掲載されていた(毎日新聞5月7日夕刊「特集ワイド」)。今注目の人かも。今回から始まった爆笑問題の太田光の「芸人人語 第1回  言葉」。父親の暴力で小学2年の女の子が死亡した事件を取り上げ、言葉で言い表せない部分、論理的に説明できない残虐性が潜んでいると書くが、「闇」の部分の解明が重要でまた、社会強いていえば近隣、学校側の気づきも必須。すでに黄色信号をあげていたというではないか。対応のまずさや遅れが悲惨な結果を招いた結果だろう。簑原俊洋の「アメリカから見た戦後日米関係史 7 パクス・アメリカーナの時代――アメリカの庇護下で国際社会への復帰を果たす日本」の記事は、戦後の日米関係を追った連載ものだ。1~6までまとめて読もうと該当のバックナンバーを揃えている。この手のものはいろいろと書かれてきてはいるが、アメリカからの視点がユニークなところ。アメリカカリフォルニア生まれで五百頭眞の弟子らしい。落合恵子の「明るい覚悟」では中也が出て来る、なぜかほっとさせてくれる。山田清機の「寿町のひとびと 32」は、バプテスト横浜教会とある牧師の話。武田砂鉄、群ようことエッセイが続く。岡本裕一朗の「世界を知るための思考実験 22」は、今回は不倫を取り上げ、サルトルとボーボワールの関係を例に論じている。お馴染みの佐藤優の「混沌とした時代のはじまり」は、こどもの虐待救出の話。前後するが、作家鴻上尚文(筆者はNHKの番組「Cool Japan」でお馴染み)の「ほがらかな人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋 第9回」が、意外と面白かった。発想の転換がいかに人を明るくさせるか考えさせられた。夢枕  獏の小説は少し興味がもてるかも知れないが、菊地秀行の小説にはお手上げだ。この類いの小説は読んだことがないので批評外、致し方ない。それにしてもカタカナ語の名前の覚えづらいこと!改めて 『一冊の本』(2019年4月号)を隅から隅まで読んでみた感想は、盛り過ぎで腹一杯それでいて読後感が意外とウスいということだ。やはり“躍動感”がほしい。蛇足だが、最後のページの広告に雑誌『JOURNALISM』3月号の特集「福島を見つめる、伝える」を見つけて書店に走った。幸い手に入れることができて、今筆者の手元にある。PR誌3点のうち小説を掲載していたのは『一冊の本』だけだ。

さて、『図書』、『ちくま』それに『一冊の本』を休み休み約1ヶ月かけて朝の通勤電車の中で読んできたわけだが、新書本丸々一冊読むことにも匹敵する分量で、エッセイや小論が中心しかもテーマは多種多様、雑誌編集者は、書き手の魅力を充分に引き出すことに成功していただろうか。筆者としては何点か興味を引いたものもあった。やがてこの中から書籍化されて世に出るものも。ネットの時代にあってこのような雑誌の役割もまだまだ需要があるはずだ。また、多種多様な文章を味わうことで感度を磨き、教養の幅を広げることに一役買ってきたと思うのだ。そして忘れてならないのは、PR誌は自社の書籍紹介がその役割だということだ。だから安価で提供しているのだ。編集・製作コストはそれなりにかかっているはずだ。これからもインパクトのある誌面づくりを期待したい。このコラムを書くきっかけは新聞の紙面批評だった。筆者にとってはまだまだこの手の雑誌に目が離せない。果たしてこの試みは意義があったか、あるいは大いなる時間のムダだったか――。

このコラムを終えるにあたり再度執筆陣に目を通した。新たに片山杜秀、佐伯泰英(今や売れっ子作家。辛苦を舐めた重いテーマを書いていたが、だからこそ今があるという人間の証明みたいなもの。書き残したかったのかも)、島薗進を新たに発見、勉強不足を恥じているが学ばせてもらった。休み休み読んでいたらすでに5月号が手元に届いていた!

 

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2019/05/12

超人の面白ラーメン紀行 262 JR保土ヶ谷駅 『櫻井中華そば店』

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初めて訪ねた時(筆者の誕生日の5月4日)には従業員が体調不調をきたして臨時休業していた『櫻井中華そば店』。気になっていた店なので再訪した。混んでいるのではないかと心配していたが、開店すぐにでもそんなに待たずに座れた。カウンター右端に座って待つこと5分、頼んだ中華そば(770円)が供された。一振りしてスープのまろやかさや醤油(茨城県日立太田市の老舗米菱醤油)の少し甘い味わいを堪能、麺はもみ麺でやわらか。少しゆっくりとレンゲにやや縮れたやわらか麺をためて食べていたら、ふとふあふあ感のあるインスタント麺のような感じになったから不思議。トッピングは細切りのやわらかいチャーシュー、メンマそれに刻みネギしか入っていないシンプルな仕立てだ。海苔も半熟玉子もない。中細麺の優しいラーメンである。戸塚『支那そばや』、湯河原『飯田商店』、恵比寿『AFURI』、神田淡路町『潮』などと並ぶ、いわゆる淡麗系ラーメンの部類。面白いことに、調達(こだわり)の鶏や醤油、麺の製法によって微妙に舌触りや味が違うのだ。当然といえば当然だが、これはもはや好みの領域に属する問題だ。醤油好きの筆者は、早速この店で使われている日立太田市で1800年から続いている老舗米菱醤油の人気商品「田舎醤油」をネットで注文した!こういうことは神田淡路町『潮』で使われている「にほんいち醤油 岡直三郎商店」以来2度目(この時は町田の醤油醸造元まで買いに行った)の出来事。開店してまだ1年半、男性2名と女性1名のスタッフで切り盛りしている、カウンター8席と2人掛けテーブル2つのこぢんまりした店だ。日曜日とあってか客は若い人に混じって家族連れや熟年夫婦も。厨房内は意外と小綺麗である。店はJR保土ヶ谷駅東口から徒歩5分、昭和の時代の雰囲気が残る商店街の一角にある。                                                    

JR保土ヶ谷駅『櫻井中華そば店』1.スープ★★★2.麺★★3.トッピング★★4.接客・雰囲気★☆5.価格★☆

2019/05/09

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 10

PR誌『ちくま』は、興味を引いたところの記事から読んだ。鹿島茂の連載、「吉本隆明 2019」が前号から始まって2回目。鹿島流読み解き、解きほぐし、吉本隆明論だ。難解な吉本の重要なキーワードを一つひとつ解き明かしながら『共同幻想論』に迫る。何度も挫折した体験をもつ筆者には有難い企画だ。読み応えがある。鹿島茂はこの雑誌に以前にも「神保町書肆街考」や『一冊の本』に「ドーダの人、小林秀雄」のタイトルで小林秀雄論を連載していて、筆者は両方読んでいたのだ。注目して読んでいた戸田山和久「ひっこめ教養」がついに最終回だ。題して「教養くん、不死鳥のごとく蘇るの巻」。特に大学の教養教育ついて示唆に富むエッセイを残した。いわゆる「教養」本には筒井清忠や竹内洋のものがあるが。猪木武徳の「地霊を訪ねる 4 津山から柵原鉱山、智頭宿をぬけて岩井温泉へ」を読んだ。特に津山の洋学資料館を訪ねた件、コーヒーに珈琲を当てたのは洋学者宇田川榕庵だったことをこのエッセイで知った。文芸評論家斎藤美奈子の長期連載ものは、テーマに関わる書籍を毎回3冊を取り上げて論じている。「世の中ラボ」、今回は108回目、住民投票にはどんな意味があるのかがタイトル。巻原原発、吉野川可動堰、岩国米軍基地の住民投票を実現させた様子を紹介しコメントしている。住民投票の意義を示すヒントが。プレディみかこはイギリス在住のライターらしく、人と人を結ぶほのぼの愛犬の話だ。次にノンフィクション作家の井上理律子の〈絶滅危惧個人商店 5〉「吉祥寺ハモニカ横丁の「ウェスタン」」では老舗の洋品店の店主とジーンズ談義に花咲かせ、ジーンズやデムニの由来を書いていておもしろい。いつもながら聞き書きを得意とする作家だ。イラスト入りのほしおさなえは異人坂で、谷根千の根津周辺にスポットを当てて書いている。岡田、藤井、安藤、清水のエッセイ、書き手では若い方の部類に入る劇作家の藤田貴大の連載ものは独特な言葉使いで孤島の話。梨木、岸本、穂村、最果、ドミニクとそれぞれが個性的な書きぶりを披露。ここで気づいたことだが、16本のうち連載ものが12本とほとんど〈続きもの〉で構成されているのだ。紙面構成上安定はしているが、切れ味良いスポット的なものがほしい。強いていえば躍動感が足りないような気がする。それにしても字が小さくて読みにくい。書き手17名の平均年齢は54歳だった。意外と若くないことが判明した。そして、とてもユニークな西村ツチカ(男性のイラストレーター!)のちくまさん vol.28 壁活用ガールの8コマ漫画へ戻った。さて、いよいよ最後は『一冊の本』の読み解きだ。

2019/05/05

クロカル超人が行く 235 表参道 フィンランド インテリアブランド『Artek Tokyo Store』

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フィンランドの有名な建築家アルヴァ・アアルトら4名が創業したインテリアブランド会社『Artekアルテック』(現在はスイスの家具メーカーVitraヴィトラの子会社)のアジア最初の店が表参道にオープンして1週間(2019年4月27日オープン)。連休後半の特別の日の今日、思い切って出かけてみた。目的はK's garden用の椅子(読書用椅子兼用)を見ることで、気に入れば買うというもの。アアルトといえば、3本脚の丸椅子stoolだが、いやいや、椅子の種類の豊富さはもちろんのこと、テーブル、ソファ、照明器具それにテキスタイル、小物類、果ては共同開発した、木の香りが施された香水まで、シンプルさと優れたデザインの数々がディスプレイされていた。この社の社員の男性によれば、藍染の丸椅子までありますと入口左側のディスプレイ品を見せてくれた。日本の家具と比べればやはり高額だが(一つひとつ手作りなので人件費が掛かっている由)、座り心地など人間工学的によくできている。試してみてよく分かった。手が出ないのが正直な気持ちと思っていたが・・・。

【写真 : ①旧アルテックのロゴが棚に並んだ布製品、トレーやマグカップなど   ②入口正面の日芬100周年記念用の丸椅子ほか ③壁一面に飾られた新旧のデザインが入り混った椅子の数々  ④ソファなど ⑤屋外用のブラスチック製の椅子など  ⑥テーブルや椅子など】

アルテックの日本進出は、上述した優しそうな男性社員によると、日本が世界で2番目のマーケットであることがその理由で更なる需要喚起を促すことらしい。また、北欧家具の人気は、日本人の感性にあっているのが最大の理由とも。フィンランド関連ものは飯能市にも。開園した「ムーミン谷のテーマパーク」も人気で、キャラクター商品、雑貨からレストランなど北欧もののショップが並んでいてこれまた人気らしい。

余談だが、スウェーデンなど北欧諸国でキャッシュレスが進んだのは、フィンランドではユーロ、スウェーデンではスウェーデンクローナ、デンマークではデンマーククローナを使用していて複雑なことも理由らしい。筆者も昨夏その体験をさせてもらった一人でなかなか厄介だった。

2019/05/03

クロカル超人が行く 234 江ノ島 2019年(令和元年)春

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江ノ島は令和にはしゃぐ親子連れ

急坂の道急ぐも数珠続き

つねるダンナ若妻の尻見え隠れ

テラス脇若き女の白き尻

相模湾北斎の浪浴びる昼

 

 

2019/04/30

クロカル超人が行く 233 紀伊国屋サザンシアターで劇団民藝の芝居「新正午浅草―荷風小伝」を鑑賞 続


  水谷貞雄が演じる荷風の口癖、「~だもの」(終助詞、主に女ことば)が芝居が跳ねた後も印象的で筆者の耳に残っている。裕福な家庭に育ちながらも窮屈なエリート官僚の家庭から逃れ、自由な文学の世界に身を投じて明治、大正、昭和の時代を生き延びた荷風、明治の文豪森鷗外を尊敬し昭和の文豪谷崎潤一郎を見い出した作家で、『あめりか物語』、『ふらんす物語』、『濹東綺譚』などの傑作を生み、その独特な耽美な世界を描く一方で、反骨精神を貫いた類いまれな小説家の面も。更にもう一つ、42年間書き綴った記録文学の傑作「断腸亭日乗」がある。昨年の2月に市川市文学ミュージアム「企画展―永井荷風の見つめた女性たち」(その荷風に関する企画展鑑賞のブログを読むはこちら①~⑤http://crocul.cocolog-nifty.com/callsay/cat2679852/index.html )を観たが、狭い空間には荷風に関する資料が、特に荷風の“側近女性”を中心に所狭しと展示されていた。その日記「断腸亭日乗」から拾って晩年の荷風を芝居にしたのが今回の「新正午浅草―荷風小伝」だ。

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【写真 : 会場受付で配布されていたPR誌「民藝の仲間」】

劇団民藝による2幕もの、全15場面、2時間半(18時30分~21時)、登場者男優・女優併せて16名、観劇料4,200円(昼の部は6300円)。市川市八幡の荷風の自宅書斎で七輪を持ち込んで昼飯用に“野菜入りの釜飯”を用意している場面から芝居が始まる。かつお節を欲しがっている猫と一緒の生活。カメラマンや近所のお手伝いさん(お手伝いさんにはかつお節買いを頼んでいる。そのお手伝いさん役は主役の男優水谷貞雄の奥方の女優田畑ゆり)が登場後、愛妾のお歌が久しぶりに訪ねてくる。しばし思い出話に花を咲かせたり身の回りを気遣ったりした後、荷風が書き綴っている日記に移る。そして、日記から場面は玉の井の娼婦お雪の家へふらっと訪ねる荷風の姿へ、そしてお雪との会話。荷風の自宅の場面へ戻り日記に触れ、今度は父親がいる明治の頃の永井家へ。そこでは厳格な父親が息子の放蕩ぶりを叱り、また、荷風が素人の女に手を出して手切れ金を要求されて懲りた父親が、素人女には絶対に手を出すなと諭し、遊ぶならプロの女と遊べと命じる、そして、将来を考えて海外へ留学させる。荷風は承諾する。場面はまた、荷風の自宅、お歌との会話へ戻り、さらに、お雪のいる2階の場面へ。蚊に刺させながらもなかむつましい2人は窓辺で月夜を楽しんでいる、寂寥感を漂わす老作家が可愛がるプロの女と月見をしながらの会話がいい、名場面の一つだ。荷風は月が好きだったようだ。さらに自宅の場面では押しかけるカメラマンとのユーモラスな会話などが展開される。銀座のカフェでの場面では新聞記者に囲まれた文芸春秋社の菊池寛の原稿依頼の申し出が記者から出されても断る、同業者や新聞記者を嫌う荷風の面目躍如といった場面で彼らを退けて友人と話している。芸術院会員候補の話や戦争反対の話、そこには反骨精神を貫く荷風の姿が。昭和25年頃の浅草のロック座では踊り子との会話が楽しく楽屋通いをする。作家井上ひさしはロック座で仕事をしていた頃ロック座通いの荷風と会っていて、彼の歯が黒かったことをユーモラスに書いている。第2幕の最後の場面は、昭和34年市川市八幡の自宅。そこで倒れてこの芝居は終わる。明治人がこよなく女を愛し自由奔放な生き方を貫き通した末の孤独死。ものの本には胃潰瘍の吐血による心臓発作とある。享年79歳だった。書き忘れたが、荷風の自宅の場面で荷風がトイレに行っている間にお歌がボストンバックの中の預金通帳を盗み見て、金額の多さに(当時のお金で2000万円以上)唖然とする場面やお歌が借金を申し入れしても断り、ケチっと言わせる荷風の金銭感覚にはしっかりした一面を見せつけられも、何かユーモアも感じてしまう。全体的には老老コンビの一人吉永仁郎の荷風のエキスを散らばめたユーモアの芝居が光っていたわけだが、彼は荷風全集の断腸亭日乗一冊、400~500頁全7巻を読んでこの芝居に臨んだ。それくらいしないといいものが出来上がらないと言いたげだ。そのことは、小冊子民藝の仲間409号、『新正午浅草―荷風小伝』の冒頭エッセイ「荷風のこと」を読めば一目瞭然だ。短いエッセイだが無駄のないきりっとしたすばらしい文章である。男優水谷貞雄の口調の「だもの」とよたよた歩く姿は印象的だ。また、軽妙洒脱な会話――。色気たっぷりのお雪役は女優飯野 遠、はまり役のばあさん役田畑ゆり、笑いを誘いだすお歌役に白石珠江、慌ただしく動き回るカメラマン(カメラに収められたかどうかは知らないが、居眠りしていて全財産が入ったボストンバックを電車に忘れたことも有名な話)役はみやざこ夏穂、権威主義的な荷風の父親永井久一郎役には伊藤孝雄、渋い友人役は松田史朗と時代を感じさせる壮士風の男役、梶尾稔、太鼓持ちの新聞記者たちと威厳の菊池寛、ちょい役の女給等々、それぞれの役に徹していて動きの俊敏さはもちろんのこと、セリフの長さを感じさせないメリハリの利いた演技力が目立っていた。筆者は最前列に座らせて頂いて、大道具、小道具はもちろんのこと、役者の動きもきちっと捉えることができて心地良かった。過去と現在を行ったり来たりする場面展開だが芝居の醍醐味を充分に味わった。あっという間の2時間半だった。たまに観る芝居もいい。蛇足だが、タイトルに「新」がついているのは、かつて俳優山田吾一(NHKのテレビドラマ『事件記者』に出演して一躍有名になった俳優)の一人芝居をこの劇作家作・演出で池袋の小劇場で上演したことに由来する。そのことは前述した劇作家の「荷風のこと」に書かれている。荷風は明治人のエロ爺だったが、評論家川本三郎が書いていたようにやはり女にミューズを感じていたのだろうか。芝居は荷風ワールドのエキスを妖しい生活空間のシンボライズした形として切り取り、民衆の視線も組み入れてリアリスティックに表現した。それが舞台芸術の真骨頂で観客を魅了するのだ。リアルに面白かった。観客は若い人たちもいたが、やはり年配者特に女性が多かった。

遥か昔、演劇に打ち込んでいた毎日新聞編集局電信課のアルバイト生明大のS君、大分経った今何をしているのかしら。ベケットの『ゴドーを待ちながら』の舞台にかける情熱を聞かされたっけ。芝居といえば思い出す、今。あの頃は新鮮そのもの――。

30年と3ヵ月の平成の時代は今日で終わり、明日から新しい年号の「令和」が始まる。時は淡々と過ぎるのだ。特に感慨はない。いろんな儀式が目白押しだが――。

荷風の日記に倣って、

2019年(平成31年)4月30日、雨。気温15度、肌寒い。3月並みの気温。

世は改元モードにムード。世界広していえど76億の地球人の約76分の1の出来事、日本の歴史は古いが未来が不安。平和、それがすべて。

クロカル超人が行く 233 紀伊國屋サザンシアターで劇団民藝の芝居「新正午浅草―荷風小伝」を鑑賞

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【永井荷風生誕140年・没後60年のメモリアルイヤー】

文明批評家・日常観照者・日記文学者・随筆家・作家永井荷風の晩年をユーモラスに描いた劇団民藝の「新正午浅草―荷風小伝」。
永井荷風の晩年をユーモラスに描いた劇団民藝の芝居は、熟成された甘美な果実を味わっているような完成度の高い作品。ともかく89歳の劇作家が脚本を書き演出も手掛け、85歳の俳優が主役の、まさしく大人の演劇のエキスを見せつけられた舞台だ。老・老コンビ(民芸の仲間409号 『新正午浅草―荷風小伝』P.6より)のなせる技、大御所の貫禄である。

作・演出 : 吉永仁郎   演出補 : 中島裕一郎   永井荷風(本名壮吉)  ― 水谷貞雄    若い男(カメラマン)  ― みやざこ夏穂    福田トヨ(近所の女)  ― 田畑ゆり   お歌(荷風の昔の妾) ― 白石珠江   お雪(玉の井の娼婦) ― 飯野 遠   永井久一郎(荷風の父)  ―  伊藤孝雄    老人(荷風の友人)  ― 松田史朗    喫茶店の女給 ―  高木理加 長木 彩   菊池寛 ―  富永倉吾    中年の新聞記者 ― 佐々木研    若い新聞記者 ― 大中耀洋   壮士風の男 ― 梶野  稔   浅草の踊り子(声だけ)  ― 吉田陽子  笹本志穂 金井由妃 増倉佑美         

第 1幕

昭和32年、千葉県市川市八幡の荷風自宅

昭和11年、玉の井の娼家

昭和32年、市川の荷風宅

明治36年、東京市牛込区の永井家          

昭和32年、市川の荷風宅

昭和11年、玉の井の娼家

昭和11年、娼家の2階    

昭和11年、娼家の2階

昭和32年、市川の荷風宅

第2幕

昭和12年、銀座

昭和32年、市川の荷風宅

昭和25年頃、浅草ロック座の楽屋

昭和32年、市川の荷風宅

昭和34年、市川の荷風宅

昭和34年、市川の荷風宅

昭和32年秋の昼頃、市川市八幡の荷風の自宅。独り暮らしの年老いた荷風が書斎に持ち込んだ七輪で野菜入りの“釜飯”をつくっている。そこへかつての愛妾のお歌が久しぶりに訪ねてくる。二人の思い出話は長年書き綴っている荷風の日記へと移り、小説『濹東綺譚』の娼婦お雪の日々がよみがえる・・・。

――小冊子民藝の仲間409号『 新正午浅草―荷風小伝』より一部抜粋。

【写真左上から : チラシ表紙 民芸の仲間409号 『新正午浅草―荷風小伝』の表紙と裏表紙 ◉スタッフ、◉人物、◉とき・ところ、◉ものがたり、の書いてあるページ、稽古場から(いずれも雑誌、民芸の仲間409号 『新正午浅草―荷風小伝』から)】

2019/04/25

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 9

編集者あとがきの「こぼればなし」は、前号に続きドイツ出版界事情。そのコラムによると、ドイツには出版社が現在1800社、取次企業80社、主要書店3000店があるという。ライフスタイルの変化で読書する時間が持てないことが本を買わない主な理由らしいが、潜在的読者も数多くいることも、ドイツ図書館連盟(BDB)の2016年のアンケート調査でわかったと。本の価格は日本の1.5倍、図書館の年間利用料は20ユーロで(フランクフルトの場合)、延滞料は1週間につき2.5ユーロかかるらしい。図書館の利用が増えれば予算が増えるので読書推進運動は重要な仕事となっている由。翻って日本の出版界、今アマゾンなどのネットショップ大手が弱者に不利な取引をしていないか問題になっているが、ざっくりいって縮んでいる。雑誌や書籍のトータルの売上高がピーク時より半減していることはもちろんのこと、書店の廃業が止まらない。ネットの出現でライフスタイルの変化が大きいといってしまえばそれまでだが、楽しみ方が多様化したことが大きいような気がする。何せ高校の国語の教科書から文学鑑賞が外され契約書の読み方などが導入される国柄だ。筆者なども教科書に載っていた文学作品にはさほど関心がなかった。理由は教科書に載っていたからかも。一見矛盾しているようだが、要は毛嫌いしていたのだ。体裁のところで書き忘れていたことがここに来て判明した。そう、『図書』は3段組だった!一段大体400字弱で400字詰め原稿用紙約1枚分に相当する。1頁約1200字弱、原稿用紙で約3枚分である。

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 8

さて、本題に戻して『図書』、『ちくま』、『一冊の本』3誌読みくらべの続きだ。『図書』の執筆者15名、表紙裏面エッセイそれに「こぼればなし」とすべて読んでみた。文学関係の長短含めたエッセイものが8本と断トツで、意外と少なかったのが絵画・芸術関係のエッセイである。作曲家武満徹が夢に出てきた話を語る表紙裏面の司修、巻頭エッセイで北斎「富獄三十六景」は、「感覚を解放する力の発見である」と横尾忠則、指揮者山本直純の回想を楽しく綴るさだまさしのエッセイくらいだ。際立っていたのは、料理研究家辰巳芳子の筍の話。まさしく旬の食材を取り上げ、文章も春の小川のように流麗で素敵なおばちゃまという感じだ。御年94才らしい。そう、その昔おばちゃまには元帝人社長夫人の大屋政子、映画評論家の小森和子、料理評論家の岸朝子などがいてテレビのバラエティー番組を賑わしていたっけ。「口説きのテクニック」のエッセイの持ち主の小説家高橋三千綱には、ある時代スポーツ小説みたいなジャンルを開拓した記憶が筆者にはあるが、この人のエッセイには何か哀しみの通低音が響いていてやるせない。やはり犬もありか――。ムーミン谷は、もはやフィンランドのスウェーデン語系童話作家トーベ・ヤンソンの北欧のおとぎ話の特権ではなくなり、埼玉県飯能市にテーマパークとしてこの3月に出現し人気らしいが(似たような地形が飯能市にあるらしい)、フランス哲学が専門の聖心女子大学の冨原眞弓(北欧文学の翻訳家でもある。多分語学が堪能なのかも)の北欧文化や文学などを扱った“ミンネのかけら ”の連載ものも毎回楽しく読ませてもらっている。トーベ・ヤンソンが青森産の綿入れを着こなしていた、いいね、この話。今号『図書』の出色は松井茂記の「なぜカナダは大麻を合法化したのか」である。知らなんだ、今時のカナダ事情!2019年1月に発見され“注釈”を施した漱石の通信簿、魯迅の仙台医専のノート写し、アガサ・クリスティーに関するエピソード、植物、古代文学、モダン語のエッセイ、どれもこれも退屈させない。スキップしないで良かった。得した気分。植物、古代文学には多少退屈したが、こういったものに慣れていないのだ。風土記はオモシロイと思う。すんなりと出社途中の電車で読めた。で、気がついた、岩波カルチャーネットワーク人が多いか、若手の書き手が少ない。明るくエネルギッシュな言葉の迸りがほしいところだ。少なくとも他の2誌にはある。

2019/04/19

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 7

一応雑誌の外側を分析できたところで、少し👀を外に向けてみよう。PR誌といえば、その昔エッソスタンダード石油の『エナジー』、サントリーの『洋酒天国』などが有名で、最近では焼酎「いいちこ」の三和酒類のPR誌『iichiko』が面白かった。もちろんこの他にたくさんの有名なPR誌は存在するが、ここでは一つひとつ言及する場ではないので割愛する。『エナジー』は今でも筆者の書棚の隅にあるはずで、また、確か『洋酒天国』は銀座の三笠会館地下のバーに行けば見れるはずである。『iichiko』は特集によっては昔大分にある会社から取り寄せていた。デザインや文章に時代の息吹を感じるオモシロみがあった。これらの雑誌は企業のPR誌だから、話を元に戻して今度は出版社と密接な関係にある書店のPR誌に少しばかり言及してみたい。後発だが頑張っている雑誌にジュンク堂書店の『書標』があるが、創刊当初から知っている雑誌で本の書評が中心でなかなかよく出来ている。そんな中、大手書店、紀伊國屋書店出版部の『SCRIPTA』を偶然に手にした。2018年冬号、通巻50号(A5判・60頁)のもの。定期的に揃えておこうと何回か試みたりしたりしているのだが途中で途絶えてしまう。無料なのは良いが発行時期に大学の売店や紀伊國屋書店にその都度取りに行かなければならない。少し面倒でつい忘れがちになるのだ。それはさておき、今回の号には森まゆみの「30年後の「谷根千」9  第8号、団子坂特集」が5頁にわたって掲載されておりおもしろく、一気に読み終えた。団子坂聞きがたり、今昔といったところか。この辺は筆者にとっても思い出深い場所でいろんな場面が目に浮かぶ。森まゆみも書いているように、吉本隆明が自転車を引いて団子坂を登っていた。筆者がよく目撃したのは、ズボンのバンドに手拭いをぶら下げながら自転車を押している姿だった。また、能楽師安田登の「野の古典18――ホームレス賢者のように」中の芭蕉の俳句に言及しているところに興味津々。斎藤美奈子は執筆者の常連、よく書いていると感心しきりだ。執筆者は全部で9名、長く続いている連載ものが目立つ。

2019/04/18

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 6

次に広告関係。裏表紙を覗いてみよう。『図書』は公益財団法人日本バレー協会の広告。由緒あるバレー協会の活動よろしくと、黒が目立つ。『ちくま』は河出書房新社の書籍広告だ。平成最後の衝撃小説とやや大袈裟なキャッチコピーの、赤坂真理著『箱の中の天皇』。『一冊の本』の広告はひのきの家を讃えるサイエンスホーム。抽選でひのきの柱プレゼントだと。『図書』と『一冊の本』の裏表紙の広告は、直接出版とは関係ないものだ。ついでに裏表紙の裏面は『図書』が、法政大学出版局、北海道大学出版会、ヨベル、新教出版社、『ちくま』がみすず書房、ミネルヴァ、文藝春秋、吉川弘文館、『一冊の本』が文遊社一社のみでユニーク。新学期の時期としては各社とも地味だ。『図書』の自社広告は33頁、『ちくま』16頁、『一冊の本』が8頁で『図書』が断トツに多い。頁内のタテ3分の1の広告では『図書』が3本、『ちくま』が7本、『一冊の本』が11本の順で『一冊の本』が一番多い。しかも『一冊の本』は表紙裏面に作品社、平凡社、吉川弘文館、勉誠出版の4本の書籍広告を載せている。インパクトのある広告は少ないようだ。無難におさめた感じだ。この手の広告は発行部数や社の方針によって違うが、1本10万円以上とか。ここで気づいたことだが、『一冊の本』が他の2誌と比べて頁数も多いが広告本数も多いのだ。事業にかける熱量が違うのだろう。それとも広告もしっかりやらないと維持できないということなのか。少しはゆったり感もほしいところだ。岩波朝日文化それに筑摩を加えて典型的な硬派出版社(揶揄されることも)のものを見ていくと、『図書』に掲載された書籍の数が圧倒的に多いのがわかる。ここで読者は、岩波書店の出版物の近刊、新刊、既刊、重版、品切などについての情報が得られる。また、一瞥して最新の出版傾向が会得できるのだ。それにしても相変わらず硬い本が並んでいる。硬い本が売れなくなっている昨今だが、これだけ出ているのだからPR誌の役割は益々重要になる。そうそう、出版社は企画力、“岩波文化人”をフル回転しなければならない――。

 

2019/04/17

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 5

『図書』の表紙はかの司 修だ。【表紙】 レリーフの音符は「雨の樹を奏でる」。「砂漠を水で満たそうとする木が一本ありました」と作曲家武満徹が夢に出てきたエッセイの中で綴っている。『ちくま』は、漫画家西村ツチカ作「壁活用ガール」。何ともグラフィック的デフォルメが堪らない。ユニークな発想と壁活用の現実感、色彩特に緑化が素敵だ。『一冊の本』の表紙は、原研哉+及川仁。クリップの絵というより、クリップで留められた紙束の絵であるとグラフィックデザイナーの原研哉。面白いことを書いているので後半部分を抜き書きしてみよう。

「綴じるというより、すぐにバラバラにできる整理、分類のための小さな道具は、便利というより、働く人間の思考のどこかに、したたかな編集力を付与しつつ、AIの時代にも飄々と生きている。この金具の繊細な紙束のホールドぶりを、紙表面にできる歪みに感じてみる。紙は人の脳でもある。」なるほどウマイこと言うものである。筆者などはクリップはなかなか面倒な文具で扱いに苦労している。白表紙に薄グレー、クリップがひときわ映える、そのレイアウトの妙技――。

2019/04/16

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 4

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読みやすさの点では『図書』➡『一冊の本』➡『ちくま』の順(『図書』については長年読んでいるので慣れきっているかも)か。字面、活字の大きさでは『ちくま』が一番小さく些か読みづらい。これは情報量の圧縮の問題があるかもしれないが、活字を少し大きくした方が読みやすい。何年か前から活字が少し小さくなった。『図書』、『ちくま』、『一冊の本』、いずれも執筆者数は15名~18名で3誌とも大差はない。執筆者の顔ぶれはそれぞれ下記の通り。

『図書』: 横尾忠則、高橋三千綱、宮  紀子、中島国彦、三宝政美、松井茂記、加藤典洋、片山杜秀、さだまさし、佐伯泰英、辰巳芳子、円満字二郎、三浦佑之、冨原眞弓、山室信一 

『ちくま』: 西村ツチカ、岡田育、藤井誠二、安藤智子、清水良典、斎藤美奈子、藤田貴大、鹿島茂、ブレディみかこ、梨木香歩、戸田山和久、ほしおさなえ、岸本佐知子、井上律子、穂村弘、猪木武徳、最果タヒ、ドミニク・チェン

『一冊の本』: 島薗  進、太田  光、簑原俊洋、和田秀樹、太田直子、鴻上尚史、植木  建、小島慶子、群ようこ、落合恵子、山田清機、武田砂鉄、岡本裕一朗、菊地秀行、夢枕  獏、原  研哉、波多野  光

目次に連ねた執筆者の総数は50名、女性比は 約30%。年齢構成は分からないが若者組から年寄りまでと層は広そう。本はいろんな人たちにアピールしなければ実売に結びつかない。 このなかで筆者が知っている執筆者は24名で約半分。

最初は目次、巻頭記事、あとがき(『図書』のみ。宣伝はあるものの編集子の呟きがいい)、広告、連載ものの続き、単発もので自分のアンテナに感応したものに👀を通すのが筆者流の読み方。ページを行ったり来たりするが、それが楽しくもあり、時として雑誌づくりの裏側を覗けたような、妙な錯覚に陥ることも。

 

 

2019/04/14

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 3 閑話休題 上野千鶴子氏の東大入学式での祝辞

出版社のPR誌の記事を書いている途中で、ネットを覗いていたら東大名誉教授で社会学者の上野千鶴子氏の東大入学式(2019年4月12日)でのユニークな祝辞が話題になっていた。実は筑摩書房のPR誌『ちくま』で彼女が連載していた記事が刺激的だったので、このコラムで参考のため取り上げてみようと考え、調べたら2018年3月に終了していたことが分かった。筆者の記憶の曖昧さを嘆くと同時に、月日の過ぎるのが早いと実感させられたが、また、半年後の9月に『情報生産者になる』というタイトルでちくま新書の一冊として書籍化されたスピードにも驚かされた。筆者は書籍化されたことを知らなかったのだ!それだけ雑誌連載中に評判が良かったことの証左かも。学術論文の書き方について懇切丁寧に書かれているのだ。参考書として大いに役に立つと思う。

さて、3200人の新入生の前で行った上野千鶴子氏の東大入学式でのユニークな祝辞である。前半部分は主にジェンダー的視点の開陳だが、後半部分は今の時代における〈知のあり方〉と〈行動〉を考える上で示唆に富む講演で、言い換えれば、羅針盤のない航海を述べたようなもの。既存の知を吸収するだけに終始せず独創的な知を作り出せ、しかも、自分の強さだけで押しのけて進むのではなく、自分の弱さも知りつつ困っている人たちには手をさしのべて進んでほしい、というメッセージだ。その新聞記事を読むはこちら➡http:http://smart.asahi.com/m/article/ASM4D3JLQM4DUTIL00L.php?ref=kiji_search//smart.asahi.com/m/article/ASM4D3JLQM4DUTIL00L.php?ref=kiji_search 

東京大学のホームページで上野千鶴子の祝辞の全文を読みはこちら➡https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html

 

 

 

2019/04/12

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 2

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今回は『図書』、『ちくま』、『一冊の本』の直近の2019年4月号(場合によっては3月号も参照)を取りあげてみたい。この手のものとしては老舗の『図書』があるが、最近は後発ものにも面白いものが出てきている。大昔PR誌作りにほんの少し参画したことがあるが、雑誌のランニングコストがかかりお荷物状態で、終いには休刊(実際には廃刊)に陥った。結局編集者の自己満足で終わってしまうのがオチである。社の新刊既刊の書籍の購買につながるような手短なインパクトのある記事はもちろんのこと、連載ものなど掲載したもののうちいくつかが、書籍化も考慮に入れてペイできるような編集者のコスト意識を含めた用意周到さがないと続かない。そうそう、広告掲載も重要だ。内容が濃い割には安価(PR誌の性格上仕方ないが例外もある。某老舗書店の明治時代から続いている『學鐙』などは価格が乱気流気味だし、ライバルの大手書店のものも休刊したり、復刊しては季刊になったりと四苦八苦しているようにみえる。2誌とも内容はそう悪くない、むしろ前者は風格があり良い味を出している。後者にしても意外な発見があってお得なところも)、いかに成り立たせるか思案のしどころだ。台所事情は分からないが成功しているところは編集方針がしっかりしていてぶれていないということだ。また、販売面では定期講読者を増やすなど不断からの努力を怠らないということだろうか。ネット時代だからこそその存在意義が問われているのだ。

さて、雑誌の外面から。分量、総頁数では『図書』と『ちくま』は64頁、『一冊の本』だけが32頁も多い96頁、断トツの多さだ。価格は3誌とも100円で同じ価格。紙質は『ちくま』、『図書』、『一冊の本』の順の感じ。判型は3誌ともA5判、このサイズは他の出版社、例えば、『未来』、『みすず』、『波』などのPR誌でも同じサイズで、このサイズが大半なのは持ち運びに便利だからかもしれない。

2019/04/09

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる

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筆者は週末に書評欄の載る新聞を4、5紙買い込んで読んでいるが、同じ出版社の本が一紙で複数取り上げられていることがしばしば散見される。新聞はスペースが限られているのだから、少なくとも同じ出版社の本を複数取り上げるのは、やはり公平性の点からいっても妥当ではないように思われる。優れた本だから紹介したいという気持ちは分かるが、片寄らず一社一冊に限定して新聞社の書評欄担当者は紙面作りの段階で交通整理してほしいものだ。より広くフォローしてほしい。毎日などは評者の字数は他紙よりも多く書評内容の充実度が高いが、その分取り上げる本の数が少ない。朝日は書評欄が縮小気味。読売は企画力で、東京は個性的と各社各様。読む側としても今週の書評ではこれが良いかと実際に印を付けたりするが、何日か晒すと淘汰されていくのもあって実際に買うのはほんのわずかだ。

さて、本題のPR誌よみくらべの話に移ろう。『図書』、『ちくま』それに『一冊の本』の3点は毎月定期講読して何年も経つ。カバンに入れてもかさばらず電車の中で気軽に読めることや企画力を強化するための小雑誌としてパラパラと捲ってはザッピングな読書を楽しんでいる。薄手の雑誌ではあるが、なかなか読み応えがあるのも事実で本のPRを兼ねているとはいえ、号によっては内容の充実度が高くなっているように思えることも。特に連載ものに一味違ったものがあるのだ。今年の1月に惜しまれて亡くなった橋本治氏の時事エッセイは、最初『一冊の本』で連載されていたが、なぜか途中から『ちくま』に移って巻頭エッセイを飾っていた。ここはかつてはなだいなだが死の直前まで書いていたことでも有名なコラムだ。橋本治にせよ、なだいなだにせよ、やや辛口ひねくれの戯言的な社会批評は“一服の読む薬”としての役割を果たしていた。

2019/04/08

クロカル超人が行く 232 東京駅ステーションギャラリーでフィンランドの建築家アルヴァ・アアルト展を鑑賞

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北欧モダニズム建築の典型的な実例である、フィンランドの建築家Alvar Aaltoアルヴァ・アアルトが設計した老舗のアカデミア書店。昨夏筆者が訪ねた書店だが、天窓からの光がガラス越しに差し込んで開放感があった。その時筆者がスマホで撮った写真が、左からアカデミア書店の玄関、2階のカフェ・アアルトそして店内だ。カフェ・アアルトにはアアルト作の椅子が並んでいた――。

 

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東京駅ステーションギャラリーは、できたときから気にかけていたギャラリーで、東京駅改装後以前あった場所から今の丸の内北口改札近くに移動している。今回初めて入った。丁度フィンランドの建築家アルヴァ・アアカルト展「もうひとつの自然Second Nature」が開催されていたのだ。土曜の昼下がり、東京駅内は平日より混雑していたが、このギャラリーに入ったらさすがに静か、レンガ造りのひんやり感もあって、建築家の細密な図面や写真、照明器具、模型、有名な椅子などの作品群を鑑賞できた。自然の中に建築物をいかにマッチングさせるか、建築やデザインに触れて自然の存在を想起させる、或いは自然と建築がいかに共生できるかがテーマ。森と湖の国ならではの建築家のなせる技が散りばめられている感じだ。フィンランドの1930年代の雰囲気が味わえるドキュメンタリーの映画も観賞できた。妻の尽力も大きかったようだ。アアルトは妻と1935年にヘルシンキでインテリアブランド会社を設立したが、そのアルテック社が、直営店Artek Tokyo store(案内チラシを見る→http://crosscul.com/artek.pdf を表参道に2019年4月27日にオープンする。家具、照明、テキスタイル、現代のデザイナーの最新作まで取り扱うらしい。近くにはこれまたフィンランドを代表するブランド『マリメッコ』もある。今や北欧デザインはその優れたデザイン力で極東のこの日本でも人気であちこちにその商品を扱う店ができている。また、この3月に埼玉県飯能市にオープンした小説家のトーベ・ヤンソンの人気キャラクター”ムーミン”にあやかった「ムーミンバレーパーク」も注目されている。3000万弱の人口だが幸福度が高い北欧は、政治、経済、文化、芸術、建築などあわゆる分野で現代の日本の生活文化に浸透しているといっても過言ではない。そこには決して気候には恵まれているとはいえない生き延びて行くための知恵が凝縮されているのだ。建築家アルヴァ・アアルトの作品にもシンプルだが機能性抜群の傑作品が多い。よく考え抜かれているし、木の性質を存分に活かして暖かみもある。何よりも自由度が高いのだ。

「アルヴァ・アアルト  もうひとつの自然」展は東京駅ステーションギャラリーで14日まで開催中。その展示案内チラシとプログラムを見るはこちらで→http://crosscul.com/alvar.aalto.pdf

 

 

2019/04/06

今年の桜 新元号「令和」が発表された4月初めが満開

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今年の桜は格別。新元号の「令和」が4月1日に発表になったからだ。出典は万葉集から。しかし、“平和を命じる”と意味にも取れる。施行は5月1日。開花宣言してから気温が冬並みに下がり、今年の桜は比較的長持ちしているのだ。

今朝の夢掴みたいけどパッと散り

 

追記   この「令和」に関して万葉集の研究者の中西進氏が、飽くまで令は令嬢の令で良いという意味で、命令の令の意味ではないと談話を発表(毎日新聞2019年4月13日朝刊)。辞書には最初に命令の令の意味が出てくるし、そう捉えられても仕方がないのでは。要は誤解を招くような言葉を使用しないことだと思うのだが・・・。

追記   外国メディアが新元号「令和」をorder and harmonyと報道したことに対して、外務省が改めてBeautiful harmonyの意味だと説明した由。(2019.5.3  記)

 

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2019/04/01

超人の面白ラーメン紀行 261 横浜市戸塚区『カミカゼ』

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こんなところにもラーメン店があるんだと以前から気になっていた店。ところが、この箱根駅伝戸塚中継所にあるラーメン店『カミカゼ』は、立地は必ずしも良いとは限らない場所でいい味を出していることを聞きつけた。しかも淡麗系。で、思いきって出向いてみた。

その昔確か“金太食堂”があったあたりで、いやー、本当にうん十年ぶりにこの辺りに来た。隣にもラーメン店『まるもり製麺』がある。こんな場所でラーメン店が二軒並んでいて、他人事ながら商売になるのかしら。それはともかくラーメン店『カミカゼ』に入った。土曜日の午後とあって店内は一杯かと想像していたがそれほどでもなくすんなり入れた。そして、コの字型のカウンターに座り注文した焦がし塩ラーメン(大盛)を待った。実はチケットを券売機で買おうとしたら、売り切れなのか買えなかったのだ。仕方なく大盛(900円)に替えた。店の女性にそのことを告げると券売機をチェック後取り替えますと申し出てきたが、この際大盛にチャレンジしてみようと取り替えなかった。券売機に不具合が生じたみたいだ。

カウンター席で『2019年版 ラーメンウォーカー』を見ていると、頼んだ焦がし塩ラーメンが供された。一振りしてスープの味をチェック、想定内のスープだった。ま、いろいろとこれまで淡麗系のラーメンを食べてきたこともあって舌が覚えているのかも。むしろストレート細麺の柔らかさこそインパクトがあった。自家製麺で麺がやや白っぽい。焦がし部分は淡白、トッピングのチャーシューも柔らかかった。店内は昭和レトロ感が漂う、どこか懐かしさを覚える空間になっていて、少しばかり時間が止まった感じだ。カウンター席10席、テーブル席10席。店の女性の応対も丁寧で好感が持てた。ついでにもう一つ、厨房が広く麺工房みたいで、台湾などの店の造りを思い出した。比較的若い家族連れ、中高年夫婦、作業服を着た人たちと車で来店する人たちが多いみたい。ネット情報だとここの店主はラーメンにかける執念が凄いらしい。また、店の名前の「カミカゼ」がユニークでインパクトがあったので、機会があったらその由来を聞いてみたい。

 

横浜市戸塚区『カミカゼ』1.スープ★★☆2.麺★★☆3.トッピング★★4.接客・雰囲気★★★5.価格★☆☆

2019/03/28

超人の面白ラーメン紀行 260 横浜市戸塚区『ラーメン豚幸』

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横浜市戸塚区も故佐野実氏の『支那そばや 本店』をはじめ多種多様なラーメン店が犇めく激戦区だ。そんな中戸塚警察署や箱根駅伝の戸塚中継所近くに、先月26日に忽然と現れたラーメン店、『ラーメン豚幸』。とんこう、と呼ぶのかどうか迷っていたが、「ぶたゆき」と呼ぶらしいことは店に入って気づいた。醤油ラーメン(780円)を頼んだ。店の横幕には朝ラーメンと書かれていたが、朝からがっちり食べるというメッセージかも。二郎系・家系のラーメンは、まずは量の多さに圧倒されるが、それより何よりここでは牛肉の塊と形状に驚かされた。とにかくでかく切り口が斜、断崖絶壁感ぽい。どこから手をつけて良いか迷っているうちにがぶつく始末。柔らかいが味は微妙、ともかく食べるのに一工夫が要るのだ。スープは豚骨醤油、少し塩辛い、麺は中太麺、もやしたっぷりそれにニンニクを添えた。久し振りの二郎系はショッキング ガッツ ラーメンといったところ。もはや若者組ではない筆者にとっては少しキツイ感じか。餃子は値段のわりに小ぶり。二郎ラーメンでは定番の“盛り”のトッピングがあるが、この店でも後ろの席で頼んでいた若者がいた。

厨房はチャレンジャーっぽい男性3人が、まだ客の評価が定まらない浅い日にちにも関わらず果敢に闘っていた。店内はカウンター席7席とテーブル席が3つくらいあって意外と広い。客はというと、家族連れや中高年夫婦、作業服の方や若い男性とかぼちぼち――。

横浜市戸塚区『ラーメン豚幸』1.スープ★☆☆2.麺★☆☆3.トッピング★★☆4.接客・雰囲気★☆5.価格★★

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2019/03/26

超人の面白ラーメン紀行 259 神田三崎町『麺屋こばやし』

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本日(2019年3月25日)神田三崎町白山通りにオープンした『麺屋こばやし』はこの店が初めてらしい。激戦区神保町界隈になぐり込みをかけた格好だ。これでもかこれでもかと雨後の竹の子のようにラーメン店が乱立して来ているが、大半は早期に撤退を余儀なくされる。同じ神田地区の神田駅西口界隈では飲食店など業績が振るわない場合、開店して早いところで3ヶ月、見切りをつけて撤退するらしい(パイロット的な意味もあるかも)。今その西口商店街には以前より増してそれなりのうまさを持つラーメン店が凌ぎを削っているのだ。翻ってこの店の二三代前は確かイマイチの尾道ラーメンだった。また、白山通りの向かい側にあったラーメン店など何回入れ替わったか分からないほどで、今はラーメン店ではない店が営業している。

さて、注文したラーメンは醤油系(780円)、どんぶりを見て一瞬エキゾチックと。どんな味わいを醸し出すか楽しみながら、いや、恐る恐る箸を次にすすめた。一振りのスープは意外と動物系と魚介系がミックスされたどろどろ系で味もまあまあ。量は少な目。次にストレート系中細麺はやや透明感のある、もちもち感の少ない麺で少し不思議な食感だ。トッピングのチャーシューは柔らか、大きめのチンゲン菜と材木メンマ、刻みネギ、そしてユニークなのが小エビを振りかけてエビの風味を出しているところだ。最後にゆずの香りを少し味わって、なんと完食!エビはどちらかというと苦手な筆者だが、これなら食べられる。メニューもエビや辛系に特色を出して勝負に出た感じ。もちろんつけ麺もある。店内は厨房3人、ホール一人(アルバイト)でカウンター16席とテーブル4席の20席。午後1時半頃入ったがまあまあの客入り。初日しては上出来か。

三崎町『麺屋こばやし』1.スープ★★2.麺★☆☆3.トッピング★★4.

接客・雰囲気★☆☆5.価格★★

2019/03/25

超人のジャーナリスト・アイ 172 NPRの記事から ノルウェー西海岸沖でクルーズ船、エンジントラブルで乗客避難

たまたまNPR(アメリカの公共放送)の電子版を見ていたら、ノルウェーの西海岸でクルーズ船がエンジントラブルを起こして乗客1300名が避難、という記事を発見。昨日の土曜日のことだ。昨夏似たようなクルーズ船(シリア ライン)に乗船してヘルシンキからストックホルムまでバルト海を移動した体験を持つ筆者だが、命に関わる出来事なので他人事ではない。近いうちにノルウェー旅行もと考えていたので尚更。筆者らの時もクルーズ船は真夜中結構揺れたのだ。下記は記事を私訳したもの。

 

ノルウェーの西海岸沖で航行できなくなったクルーズ船から乗客救助

 

AP通信リポート。土曜日、ノルウェーの西海岸沖のクルーズ船が電気系統を喪失し海難信号を発令後、1300人の乗客を避難させていた。救助のためヘリコプターとボートが出動、避難には長い時間かかる見込み。
ノルウェーの新聞『VG』の報道によると、バイキング オーシャン クルーズを運航するバイキング スカイ号は、エンジントラブルを起こしていたが、高波と強風にも遭遇していた。ロイター通信によると、クルーズ船は“悪天候”や“岩礁が点在する浅瀬”で有名なフスタドヴィカ湾に停泊中だ。
AP通信によると、ノルウェー政府は湾には安全を促進するため山近くを通して巨大な海底トンネルを建造するか研究中だという。警察によると、一つのエンジンで航行を再開したバイキング スカイ号は、さらに沖合に移動し停泊したとのこと。今のところ、およそ100人の乗客だけが避難した模様。
その記事を読むはこちら➡ https://www.npr.org/

 

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2019/03/23

クロカル超人が行く 231 山中湖文学の森 三島由紀夫文学館 続

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【写真上から : ①山中湖文学の森   ②文学の小径案内図  
  ③遊覧船が走る山中湖   ④JR御殿場駅から見えた冠雪の富士山】

 

 

 

2019/03/22

クロカル超人が行く 231 山中湖文学の森 三島由紀夫文学館

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【三島由紀夫文学館の庭にあるアポロン像】

 

山中湖村の文学の森にある三島由紀夫文学館に行ってきた。自宅から東海道線熱海行の電車で国府津駅まで行き、そこで沼津行の御殿場線に乗り換え御殿場駅で下車(待ち時間約20分、所要時間約40分)、今度は山中湖行の富士急山梨バスに乗り換えて45分揺られ(バス料金1010円)バス停文学の森公園前で降り、春のめざめを感じる林の中を歩くこと8分、ついに山中湖文学の森 三島由紀夫文学館に到着。乗り継ぎの待ち合わせ時間を入れると約3時間40分の旅だ。海ありの神奈川県横浜から海なしの山梨県―湖があり富士山が身近に見ることができる―だが、やはり遠いのだ。去年の10月に山梨県立文学館を訪ねて以来二度目の山梨県の文化施設めぐりである。前回は草野心平展と隣にある県立美術館のミレーの“落穂拾い”それに購入したばかりのミレーの絵画等を鑑賞したが、今回は三島由紀夫文学館でプチプチ企画、特集展示「美と孤独――帰ってきた『金閣寺』」(宮本亜門演出のオペラなど二次創作の『金閣寺』(Le pavillion d'or)の周辺資料を展示。フランス・ストラスブール国立・大学図書館、ストラスブールライン国立オペラ座、公益財団法人東京二期会協力)を鑑賞した。平日とあって訪館者は筆者一人で貸切状態だった。三島由紀夫の文学館創設構想の話は新聞などで知っていたので少なからず興味があった。早いもので開館して20年になるらしく、筆者的にはやっと実現した格好だ。この際三島作品を少し読んでおこうと考えていたら三島解釈の本が出たり、それにつられて関連本まで読んでいるので4冊くらい持ち歩いている始末だ。
三島由紀夫文学館受付で係員の女性に入館料500円を払って館内入り。受付の女性と少し立ち話をした。三島邸は今は誰も住んでいない、館長はほとんどこちらには見えませんと受付女性。最寄りのバス停から帰りの御殿場行の時刻を訊いて、鑑賞時間は約1時間しかない。この館は村営なので受付の女性は村役場の職員かしらと余計ことを詮索しつつ、入口にあった三島由紀夫の詩集を捲り、二三篇読んだ。ヨーロッパの作家の影響を受けたような観念的な詩だ。その後そんなに大きくない館内の展示を観て歩いた。
〔初版本―初版本99冊](この館のホームページのフロアガイドを参照。以下この項に従って書き記す)  『花ざかりの森』の初版本を筆頭に『仮面の告白』、『潮騒』それに『金閣寺』など99冊がずらり、作家生活20数年でよく書いたものだと感心感心、有名なイラストレーターによる装丁もあってさながら装丁史の様相。
〔平岡から三島由紀夫へ―10代の文学]  次に左側のウィンドウには写真とともに幼少期の絵や作文など貴重な品々が陳列されていて、そこから見えてくるのは、絵心もありしっかりした鉛筆書きの文字群だ。官僚の家柄、何不自由なく育った感じは分かるがまた、幼少期から賢かった、利発だった様子もまた理解できる(極度に運動オンチだったことはよく知られたことで、『金閣寺』を書いた頃にはボディビルやボクシングなどで肉体鍛練、改造に挑戦していた)。学習院高等部時代には担任の先生(ペンネーム、三島由紀夫の名付け親)に文才を認められ同人誌に書くようになる。その掲載雑誌などが整然と並んでいた。
〔プロフェッショナルの道―20代の苦悩]  川端康成に師事。大蔵省を辞職して『仮面の告白』で作家デビュー、映画化されてベストセラーになった『潮騒』を書き一躍有名作家に。世界一周旅行の旅にも出る。その頃の資料が並ぶ。世界一周旅行の時のエッセイは読んでみたい。ギリシャに憧れていたらしい。あのアポロンの像が象徴的だ。
〔拡大する活動領域―30代の若き大家] 『金閣寺』など問題作を書いたりと創作活動が活発な時期。ボディビルなどを始めるのもこの時期。
〔文武両道―40代の挑戦]  『豊饒の海』や『サド伯爵夫人』などを執筆。ノーベル文学賞の候補に挙がる。
〔三島由紀夫の本棚] 整然と並ぶ本棚にはこだわりや雰囲気が充分に感じられた。かの明治の文豪夏目漱石の書斎も神奈川近代文学館で見たことがあるが、作家の仕事場には個性が出ていて大変興味深い。更に〔映像で知る三島由紀夫]、〔三島由紀夫ガイダンス]それに〔翻訳書紹介]などの展示品を観て回った。最近視力の衰えを感じているのでウィンドゥ越しに展示品やその解説を読むことが辛くなってきている。最後の展示品は企画もの。「美と孤独――帰ってきた『金閣寺』」。ううん、少し物足りない。館内の展示品鑑賞後に映像で三島の生涯と作品を見ていたら、鑑賞時間の1時間があっという間に過ぎてしまった。慌てて館外の庭にあるアポロン像をスマホで撮影して外に出た。4時12分の御殿場行のバスに乗らなければとバスに間に合うように最寄りのバス停まで走った。が、時間になってもバスは来ない、行ってしまったのか、果たしてバスは来るの?来ないとあと1時間半待ち、これは耐えられない、大変なことになる――。イライラが募るなか、バスは15分くらい遅れて到着した。乗車して驚愕、満員で乗客のほとんどは中国人やアメリカ人だったのだ。この観光客の何人かでも三島由紀夫文学館に立ち寄ってくれれば日本文化に触れられる絶好のチャンスだと思ったものだ。村の教育委員会も外国の観光客に向けにもっと情報発信をしたらと考えたほど。でないともったいない――。
今回の三島由紀夫文学館訪問は、過激な思想の側面はさておいて三島文学の代表作の一つ、『金閣寺』の企画展を覗くことだったが、これはプチプチ過ぎた。しかし、三島由紀夫の生涯と作品を垣間見ることができたことは筆者には収穫だった。
尚、三島由紀夫文学館のwebpageはこちらから→http://www.mishimayukio.jp

 

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【写真左から: バス停文学の森公園前   三島由紀夫文学館の看板   文学館の建物】

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2019/03/16

超人の面白ラーメン紀行 258 内幸町『Ramen デュエ Edo Japan』

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イタリアン・ラーメン系の醤油ラーメン(1000円)。フロマージュ(フランス語でチーズの意)や生ハムたっぷりのメニューもあったが、初めての店はオーソドックスなものや定番ものに決めているので醤油系に。チョーあっさりにしては値段は高め。内幸町という場所柄か。ワンタン添えが少な目の刻みネギ、メンマそれにチャーシューのトッピングに一味加えた格好だ。市ヶ谷、青葉台に続く3店舗目だとか。開店して2年、普通のラーメン店のイメージとかなり違ったオシャレな空間だ。


内幸町『RamenデュエEdo Japan』①スープ★★☆②麺★★☆③トッピング★☆☆④接客・雰囲気★★☆⑤価格★


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2019/03/06

移民・難民・米大統領

下記は「自由の女神像にあるエマ・ラザラス詩再考」の追記の部分を独立したコラムにしたもの。

追記6 2回目の米朝会談が昨日と一昨日ベトナムのハノイで開催されたが、結果は大方の期待を裏切り物別れに終わった。完全非核化と全面解除の交渉は、準備不足の謗りをまぬがれず不発に。2日目の会談ではトランプ大統領が途中打ち切って早目に退散した模様。核施設の完全撤廃が見えず経済制裁の全面解除は無理とのアメリカのトランプ大統領の判断だったが、極めて異例の深夜に記者会見した北朝鮮は、全面解除ではなく部分解除だと主張していて反論。核施設は寧辺だけではなく他にもあるとアメリカ側が指摘、北朝鮮側がアメリカがそこまで把握しているのかと驚きの様子を隠せなかったという現地の記者からの報告もある。日本の拉致問題については、帰国途中トランプ大統領から直接安倍首相に電話があり金正恩委員長に伝えたという。解決に向けた進展には至らなかった模様。
それにしてもだ、このタイミングでアメリカの議会では長年側近にいたコーン弁護士がロシア疑惑絡みの爆弾証言をした。この模様は全米にテレビ中継されたのでアメリカの一般の人々に知れ渡り少なからず衝撃を与えたはずだ。何せトランプ大統領を詐欺師と呼びロシア疑惑のメール問題など次々と暴いたのだ。ハノイで北朝鮮と会談して外交で稼ごうとした思惑が外れ崖っぷちに立たせられた格好のトランプ大統領だが、果たして彼のなせる技は?(2019年3月1日 記)

追記7 今度はアメリカ国内向けに国家安全性保障問題担当大統領補佐官のボルトン氏が米朝会談は成功だったと語った。次の会談の用意があるような含みを残して。何がどうだか分からない政治が横行している感じだ。某国の某首相も森友、加計問題に統計不正問題とはぐらかしやごまかしなど不誠実な対応が目立つ。政治家や官僚の答弁にもやもや感やイライラ感が募るばかりだ。劣化した政治と官僚、品のある質のいい人たちが出て来ないものか。少しは名大病院の医療管理システムに携わっている人たちを見習ってもらいたいものだ(NHKの番組「プロフェッショナル」を観て凄い人もいるもんだと感心したのだ。名大医学部医療安全の質・安全管理部長尾能雅教授だ。逃げない、隠さない、ごまかさない、をモットーに医療の現場で真摯に向き合っている姿に感銘。「人間はミスを起こす」との立場にたって横断的に医療事故を防ぐ危機管理を徹底させている。(2019.3.4 記)

追記8 昨夜IAEAの事務総長が北朝鮮の寧辺の核施設に何らかの動きがあった模様と発表した。(2019.3.5 記)

追記9 北朝鮮で核施設をミサイル発射が可能な状態に建て直しているとの報道。一方、アメリカは次の会談の用意があるとボルトン大統領補佐官が発表した。(2019.3.8 記) 

2019/03/05

超人のドキッとする絵画 33 すみだ北斎美術館 余滴

①超有名な名所浮世絵冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏
②伊藤晴雨 葛飾北斎像 貧しき或る日の北斎老 柄澤齋 肖像XXXⅣ
③百物語さらやき 百物語しうねん
④開館記念図録 北斎の帰還 幻の絵と名品コレクション表紙

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2019/03/04

自由の女神像にあるエマ・ラザラスの詩再考

The New Colossus

Not like the brazen giant of Greek fame,
With conquering limbs astride from land to land;
Here at our sea-washed, sunset gates shall stand
A mighty woman with a torch, whose flame
Is the imprisoned lightning, and her name
Mother of Exiles. From her beacon-hand
Glows world-wide welcome; her mild eyes command
The air-bridged harbor that twin cities frame.
"Keep, ancient lands, your storied pomp!" cries she
With silent lips."Give me your tired, your poor,
Your huddled masses yearning to breathe free,
The wretched refuse of your teeming shore.
Send these, the homeless, tempest-tost to me,
I lift my lamp beside the golden door!"

(Emma Lazarus, 1883)

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【コラージュ Ⅰ】

「The New Colossus」(14行のソネット詩)筆者訳。

新しい巨像

かの有名なギリシャの巨像とは違い
土地と土地を支配の手足で跨ぎ
海に洗われ 夕日に染まる港に
立つのは力強い女性
稲妻を閉じ込め 松明を持つのは亡命者の母
広く世界に向け歓迎の光を照らす
優しい目が二つの街を囲む吊り橋の港を見渡す
「古い国々よ、華やかさをとっておくがいい」
と静かに語る
「疲れはてた 貧しい人たちを
自由の息吹を求め寄せ合う群衆を
海岸で惨めに拒まれた人たちを
わたしのところに預けてください
祖国もなく 動乱に翻弄された人たちを
わたしのもとに送ってください
わたしは松明を掲げて見守ろう
金色の扉のそばで !」

アメリカのトランプ大統領は6日、テロリストの対策を目的にした入国禁止の新大統領令を発令。イラクを除くイラン、シリア、リビア、イエメン、スーダン、ソマリアが対象国で、アメリカ入国を90日間禁止する。ビザやグリーンカード保有者は対象外。実施は3月16日から。移民の国アメリカが再び閉ざし始めたのだ。大義はどうであれ大きな外交政策転換であることは間違いない。空港などアメリカの入口で混乱が再び起こるかも。

アメリカよ!

自由と寛容さはどこへ行った?

追記 アメリカのトランプ大統領の移民政策が大きな波紋を呼んでいる。移民の国アメリカで移民をしめだす政策が親子分離の悲惨な扱いを招いていて国際社会から非難を浴びているのだ。(2018.7.24 記)

下記は最新の移民に関する「ニューヨーカー」の電子版記事→https://www.newyorker.com/news/our-columnists/immigrants-keep-coming-as-trump-grows-ever-more-hostile

追記2 明日11月6日はアメリカの中間選挙。メディアの報道によれば、上院では50対44で共和党が優勢で下院は202対195で民主党が上回っている。中米のホンジュラスなどからアメリカへ向けて移民キャラバンが続いていてその数4000人とも7000人ともいわれている。2600キロに及ぶ距離を徒歩で行進中なのだ。ホンジュラスでは政情不安が続いていて殺人などが日常茶飯事に起こっているという。それもアメリカの援助が削減されたからだとも。アメリカのトランプ大統領は、国境越えをおさえようと軍を派遣、6日の中間選挙前に移民問題がまた浮上している。寛容さをもった抜本的な解決策はないのか。一方、少子高齢化で働き手が不足している日本も他人事ではない。目先にとらわれず熟考した移民政策がまたれる。(2018.11.5 記)

追記3 先週の日曜日(2018年11月11日)に放送したTBS朝の番組「サンデーモーニング」でアメリカトランプ大統領の移民政策に関連したコーナーではアンカー役のジャーナリスト青木氏が、エマ・ラザラスのこの詩の一部を引用していた。それほどまでに若いニューヨーカーが書いたこの詩は移民のことを語ってあまりある。(2018.11.15 記)

追記4 メキシコとアメリカの国境沿いに壁を建設することで大統領と議会がその予算をめぐって揉め、決着がつかずに去年の12月から深刻な事態が続いている。一部の公務員は1ヶ月給料をもらえず離職する人たちも出て大混乱を引き起こしているのだ。トランプ大統領の選挙公約実現というが、移民の国で成立しているアメリカ特にトランプ大統領は、この詩にあるようにその原点を噛みしめて打開策を打ち出してほしいものだ。(2019.1.21 記)

2019年2月5日のトランプ大統領の一般教書演説についてニューヨーカー誌の記事。その記事を読むはこちら➡https://www.newyorker.com/news/current/trumps-dangerous-scapegoating-of-immigrants-at-the-state-of-the-union

追記5 トランプ大統領は2019年会計年度で国境の壁建設費に57億ドル(約6300億円)を要求したが、揉めに揉めて議会が可決した予算では13億7500万円。このためトランプ大統領が非常事態を宣言、議会の承認を得ず大統領権限で予算を組み替えて最大67億ドルの財源を捻出。これに対し、アメリカ議会の上下院の長(民主党ペロシ下院議長と上院シューマー院内総務)は、「議会の憲法上の権限を守るため、議場、裁判所、公衆の場、あらゆる機会を活用する」との共同声明を発表し、壁建設の阻止に全力を挙げる姿勢を示したと毎日新聞(2019年2月17日朝刊)が報道。(2019年2月17日 記)

2019/02/25

日本文学研究の第一人者で翻訳家ドナルド・キーン氏の死

日本文学研究の第一人者で翻訳家のドナルド・キーン氏が昨日亡くなった。享年96歳。東日本大震災後に日本に帰化、キーンドナルド鬼怒鳴門の日本名を持った。川端康成、三島由紀夫、谷崎潤一郎、安部公房など日本の作家と交流し、多数の日本文学の作品特に小説、詩歌、能や日記など古典から現代文学まで多岐にわたって翻訳した。筆者的には西脇順三郎を世界的文脈できちんと位置づけたことが印象に残る。(Together with Rirke, Valery, and Eliot, he is one of four great poets who represents the twentieth century. ―from P.323, DAWN TO THE WEST Japanese Literature of the Modern Era POETRY, DRAMA, CRITICISM, HOLT, RINEHART AND WiNSTON NEW YORK, 1984)また、流暢な日本語のなかに氏独特のアクセントがみられ、それが却って氏の人柄を表していて親しみが持てた。
氏の業績を讃えたコレクション・展示室には次のようなものがある。コロンビア大学のドナルド・キーンセンター(筆者も二三度訪ねている)、柏崎にあるドナルド・キーン・センター柏崎(地元の菓子製造会社ブルボンの好意で建てられたことは知っていて訪ねたいと思っている)それに晩年を板橋で過ごし、蔵書を板橋区に寄贈して造られた、板橋区立中央図書館内のドナルド・キーンコーナー(ここは近日中に訪ねたい)など。
ジャパンタイムズのドナルド・キーン死亡記事を読むはこちら➡https://www.japantimes.co.jp/news/2019/02/24/national/japanese-literature-scholar-donald-keene-dies-96/#.XHMs3eqCjqB

ドナルド・キーン氏には松尾芭蕉の有名な句の英訳もある。

古池や蛙飛び込む水の音

The ancient pond
A frog jump in,
The sound of water

追記 ドナルド・キーン氏の死を悼む「週刊NY生活」(電子版)の記事にはコロンビア大学のドナルド・キーンセンターで秋に追悼講演を開催それに奨学金制度を設立するとも書かれている。その記事を読むはこちら➡https://www.nyseikatsu.com/ny-news/02/2019/24655/

追記2 毎日新聞夕刊(2019年3月4日)には、寄稿 鳥越文蔵氏(早大名誉教授)の「運命を呼び寄せた天才 ドナルド・キーンさんを悼む」のタイトルで追悼記事が掲載されている。コロンビア大学の名物教授角田柳作先生のこと、中央公論社に書くようになったきっかけ、これは意外、荷風の日本語が一番美しかったとキーン氏が話していたことなど端的に書かれている。その記事を読むはこちら➡https://mainichi.jp/articles/20190301/k00/00m/040/289000c
(2019.3.6 記)

2019/02/20

クロカル超人が行く 230 山の上ホテルのバー『ノンノン』

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シングルスモルトのバッカラン12年とテキーラベースのカクテルサンライズ。

ほろ酔いでバー駆け込み春の夜

夢叶え止まり木はウキウキボキボキ

神戸女学院大学や明治学院大学の教会などを手掛けた建築家ウィリアムス・ヴォーリズ設計の山の上ホテルHiltop Hotel(人に歴史あり、ホテルにも歴史あり)はまた、「文化人の宿」でも有名なこぢんまりしたシティホテルだ。テレビや雑誌などで度々紹介されているのでご存知の読者諸氏も多いはず。川端康成、三島由紀夫、池波正太郎、伊集院静などの作家がよく利用したことでも知られている。そのバーに寄り、特別に部屋まで見せてもらったのだ(和洋折衷の部屋ではなかったが)。英国調のクラシカルでシックな客室だ。1泊25,000円とか。関係者に感謝である。筆者的にはウン十年前に友人が結婚披露宴をしたホテルとして記憶している。因みに結婚式は神田カトリック教会だった。

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クロカル超人が行く 229  国宝迎賓館赤坂離宮と藤田嗣治の絵

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【写真: 迎賓館赤坂離宮State Guest House Akasaka Palace】

昨日の日経新聞朝刊(2019年2月17日の日曜日)の文化欄に作家の林真理子が「冬のパリ」と題してエッセイを書いていたが、そのなかで藤田嗣治の呼び名について言及していた。正式な呼び名は「ふじたつぐはる」で、林真理子は「つぐじ」と呼んでいた。藤田自身が、両方書いていたらしくどちらも正しいとか。筆者などもある画家の名前をそのまま勘違いして覚えてしまって“ふじたたいじ“と長い間呼んでいたのだ。【原】田【泰】治の2文字を混同して(笑)。わらっちゃいまんねん。ついでに書けば、この画家には日本の原風景(その昔朝日新聞の日曜版でよくお目にかかった)を描かせたらあの週刊新潮の表紙を飾った谷内六郎と双璧だろう。
さて、藤田嗣治(ふじたつぐはる)の話だ。彼の初期作品が見つかったとつい先日毎日新聞の社会面にその記事が掲載されていた。彼は生涯5回結婚したが、その一番目の妻の出身地の秋田で見つかった。初期の作品らしく画風はパリ時代と違っていて貴重らしい(その記事を読むは
こちら➡毎日新聞の記事)
前段はこれくらいにして本題に入ろう。実は去年のクリスマス前の12月22日に四谷にある国宝迎賓館赤坂離宮を訪ねる機会があった。その日は外国の賓客をもてなす晩餐会などに使われている国宝迎賓館赤坂離宮の内部を特別に見学できる日で、アメリカから一時帰国した友人家族と訪ねたのだ。この機会に日本における西洋建築の際立った実例をぜひ見たいと思ったからだ。最寄りのJR四谷駅を出たら小雨がちらついて戸惑ったが、歩いてそんなにかからない距離に迎賓館赤坂離宮はあった。テレビなどではお目にかかっているものの、実物は初めてで庭先から眺めるヴェルサイユ宮殿を模した建物全体は、まさしく西洋宮殿の威厳のあるがっしりとしたもので、両端が内にうねったアーチ状でカメラに収めるには難儀の逸品である。中に入ると玄関の天井の幾何学的な紋様、深紅の絨毯、柱の紋様と大理石、西洋特に栄華を極めたハプスブルク家のウィーンやパリなどを容易に想像できるネオバロック様式。玄関・大ホール➡彩鸞の間(控えの間、外国の元首との懇談などに使用)➡フランス製のシャンデリアや欄間のコブラン織風の綴織、壁面に楕円形の七宝が凄すぎの花鳥の間(晩餐会)➡羽衣の間(招待客に食前酒を振る舞う部屋で演奏会も行われる部屋)➡朝日の間(国賓が天皇皇后両陛下とお別れの挨拶する、最も格式の高い部屋)と室内をめぐる短い時間でも荘厳な雰囲気を堪能できた。些か勇ましくもありまた。和洋折衷の装飾もあって空間演出の重厚さを思わせた。士気高揚感が漂う感じだ。ナポレオンが馬に跨がっている勇姿も描かれているかと思うと日本の花や鳥をあしらった紋様も飾られていた。そうだ、国宝迎賓館赤坂離宮には藤田嗣治(レオナール・フジタ)の絵が2点かけてあったのだ。同伴者が誰の画家の絵?と尋ねてきた。少しファンタスティックでメルヘンぽい絵、それがまさしく藤田嗣治の初期の絵だった。銀座の洋菓子店の依頼に応じて描かれたものと小冊子に書かれていた。「ポプラ並木の女性と楽士」と「葡萄の収穫」。藤田嗣治といえば、ロイド眼鏡にちょび髭というユーモラスな出で立ちがトレードマークの画家である。
見学終了後庭園近くの広場に出た。雨が本降りに変わっていた。屋台の車が並びテラスは見学者の人で埋まっていて一息入れたかったが叶わなかった。聞けばこの広場の地下に商店街ができる計画があるらしい。それほど国宝迎賓館赤坂離宮に来る見学者が多く、人気のスポットになっていて賑わいを見せているのだ。
【迎賓館沿革】紀州徳川家中屋敷➡明治42年(1909)東宮御所➡戦後、国立国会図書館➡内閣法制局➡東京オリンピック組織委員会➡昭和49年(1974)迎賓館赤坂離宮
※このコラムを書くにあたって国宝迎賓館赤坂離宮の小冊子を参照した。
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【写真: 右側。国宝迎賓館赤坂離宮の小冊子の中の藤田嗣治の絵】

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【写真上: 庭園Garden 写真下: 門牆Gate and Fence】

2019/02/18

超人のドキッとする絵画 32 ムンク展―共鳴する魂の叫び(東京都美術館) 3

会場は人で溢れ(中には車椅子で熱心に鑑賞していた年配者も)作品鑑賞もままならぬまま出口のミュージアムショップへ(館内鑑賞時間は約1時間30分。いつもより40分くらい少ない)。ところが、ここも人で溢れていたのだ。15分くらい並んでいつものように図録と絵葉書を買ってさっさと外に出た。外はこの季節にしては意外と日差しがあって暖か。右にフェルメール展、左にルーベンス展の看板が並び、上野公園界隈はさながら著名な西洋絵画のオンパレード風。先々週あたりの新聞の文化欄には美術館関係者が美術館は儲かるかのタイトルで最近の美術館事情を書いていたが、その関係者によると、この界隈で150万人が来館したようだ。
さて、筆者なりの今回のお気に入りをピックアップしてみたのが前々回のコラムだ。その中でも⑦「生命のダンス」や⑧「マドンナ」、⑩「メランコリー」(以前から取り上げていた)を除いて⑨「星月夜」、⑪「二人、孤独な人たち」と⑫「自画像、時計とベッドの間」の絵がいい。⑨の「星月夜」はゴッホの同名の絵1433695175288_2

【写真: ニューヨークのMoMA 美術館所蔵のゴッホ作「星月夜」 筆者=撮影】

と比べて夜景がどう描かれているか。⑪の「二人、孤独な人たち」の色遣いと配置が抜群、気に入った一枚。なぜ二人は後ろ向き?チコちゃんに訊いてみたい(笑)。そして⑪の「自画像、時計とベッドとの間」の絵がこれまたいいではないか。最晩年、死と隣り合わせの生活の一コマ、都美術館の図録の解説でも言及していたが、自意識過剰から解放されたありのままの作者がいる、しかもかつてはすべてを“捧げた”彼女の姿も侍らせて、柱時計には時間は刻まれず“溶けている、“あるいは消えかけている、今や何にも役に立たない、時間が止まったまま。赤と黒のツートンカラーのベッド、そして猫背で立っている。すべては自然、ありのままの自分を受け入れている、老境、死を意識した姿だ。実際にムンクはこの絵を描いた翌年の1944年に亡くなっている。絵に一生を捧げ独身を貫いた。
今回のムンク展はテーマ別の構成で配置され、暗さから明るさへと変化していく様が絵間(感)から読み取れた。“感性の画家”理解が更に深まったようだ。残念ながら、筆者が好きな「思春期」や「カール・ヨハン通りの夕べ」は観ることができなかった。今回のオスロ市立ムンク美術館所蔵とは違う美術館などで所蔵しているみたいだ。これらの絵を観に今年の夏はノルウェーのオスロに飛んでみたい。その前に1970年開催の「ムンク展」のことを遠い記憶を辿りながら書いてみるつもり。手がかりは少しはあるのだ。筆者の古いノートから雑誌『世界』(1971年2月号。P.221~P.242)の座談会、ムンク―芸術と狂気の間―(小野忠重、寺田透、なだいなだ、針生一郎)の切り抜きが出てきたのだ。
その出てきた雑誌『世界』の座談会ではムンクの版画、リトグラフ、エッチングなどの技法を取り上げていた。そこには日本の浮世絵の影響もみられると 。また、なだいなだが精神科医らしくムンクの狂気について熱く語っていた。美術評論家の針生一郎の意見が鑑賞者としては一番参考になった。座談会の冒頭で次のようにムンクについて語っている。
「彼は絵画のなかに文学をもちこんでいるんじゃなくて絵画でも文学でもなくなるような、表現の限界を越えるようなところにぶつかった作家ではないか」
作家の寺田透は、ムンクの絵など日本人に人気なのは、絵より人なのかもと、精神に異常のある人たちの絵がカタルシスになるような要素があると。
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【写真左上: 「思春期」 写真左下: 「カール・ヨハン通りの夕べ」『図録 ムンク展 ―フリーズ・装飾性 』(東京新聞 2007年)より】

2019/02/12

超人のドキッとする絵画 32 ムンク展―共鳴する魂の叫び(東京都美術館) 2

ムンク展は1970年、2007年それに今回の2019年1月と3度鑑賞した。ムンクの絵画はルノアール、モネやセザンヌなど印象派の絵画それにゴッホ、モジリアーニ、ユトリロ、ミッシャなどと同様に日本人にウケるらしく、今回も開催日の2018年10月27日~最終日の2019年1月20日の約3ヶ月間で67万人が来館し成功を収めたようだ。
筆者は前売券をコンビニで購入していたにもかかわらず、会場の上野の東京都美術館に足を運んだのは最終日の前々日だった。平日とあって30分くらい並ぶだけで会場に入れたのでラッキーだった。今回はやはり目玉の「叫び」を鑑賞することが主目的だが、過去に観たものとどう違うかも興味のあるところ。
1 ムンクとは誰か 2 家族―死と喪失 3 夏の夜―孤独と憂鬱 4 魂の叫び―不安と絶望 5 接吻、吸血鬼、マドンナ 6 男と女―愛、嫉妬、別れ 7 肖像画 8 躍動する風景 9 画家の晩年 の9パーツから構成。第一印象は自画像や肖像画が多いことだった。エドヴァルト・ムンクはドイツ「表現主義」、北欧リアリズムそして資本主義の矛盾を突く社会派の画家で、巧みな心理描写で愛、欲望、不安、絶望、嫉妬、憧憬、孤独、死をテーマにいくつもの作品を残した。また、多くの自画像や肖像画も描いた。代表作『人形の家』のイプセン、代表作『令嬢ジュリ―
_20190212_171826_3_20190212_105015_2や映画監督ベルィマンにも多大な影響を与えたストリンドベリ、フランスの象徴主義を代表する大詩人マラルメ(筆者はまたまたこの詩人に挑戦中)それに『ツァストラはかく語りき』でニヒリズムの創始者ニーチェの肖像画は、ごく身近に作家や哲学者がいて交流、刺激を受けた人たちを優しさを込めて描いている。イプセンやストリンドベリは明治期・大正期に日本でも流行った自然主義文学に影響を与え、ムンクの絵は大正文学の一大潮流を形成した“白樺派”によって日本に紹介されたのが最初らしい。
超有名な「叫び」の前では、係員が立ち止まらないで次にお進みくださいと何度も来館者に声をかけていて煩いくらいだった。それほど多くの人たちが観に来たということだが、肝心の絵の前ですっと通りすぎるとは画家に対して失礼と思うのだが・・・。じっくり鑑賞する暇がないのだ!美術館に来ていつも思うのだか何とかならないものか。しかも混雑している館内では少し離れて作品を眺めざるを得ない、視力の衰えた筆者などにとっては何かと不自由さも感じたのだ。
さて、「叫び」である(「叫び」は様式や描いた時期が違うものが全部で5点存在している。今回の回顧展ではオスロ市立ムンク美術館所蔵の1910年制作?の絵が初出展された)。橋の上で耳を塞いで何かを叫んでいる、顔には目玉が描かれていない、そう、あの有名な絵だ。夕陽が血の色に染まるような空の明るさと微妙な暗さも不気味、また、橋の奥に見える黒い無関心を装う男たちにも注目だ。恐怖―。画家はこの時期精神を病んでいて、心の、魂の叫びを表出、人間として一杯一杯の表情を見せているのだ。それはレッドとオレンジ、ディープブルーそれにグリーンを配した独特の色彩と曲線で紡いだ心模様、言い換えれば、心象風景だろうか。〈不安〉と〈疎外感〉の象徴―。画集ほかでこの絵を何度観てもその時々で印象がかわるから不思議だ。今に生きる私たちにも共感を呼び起こす「叫び」は確かに普遍性を帯びている(だからこの絵はスキャンダルにまみれ、窃盗団―テレビでは事件の一部始終をドキュメンタリータッチで放送していた―に持ち逃げされたり、価格が跳ね上がったりと善悪は別として世界中の絵画ファンを魅了しているのだ)。はて、この人は叫びながら何を訴えているのだろう、それとも声にならない声を心の底から発しているのだろうか。後ろから何者かに追いかけられている、切羽詰まったものが・・・。うむ、橋の右上の方にはフィヨルドに浮かぶ小さな二艘の舟の姿も―。忘れようとしても忘れられない強烈な印象を残す。大昔作家の五木寛之がこの絵を繙いて解説していたのを思い出した。そして今回印象に残った作品は前のコラムで書いた作品だが、特に―。(続く)

【写真右上: 『令嬢ジュリー』英文ペーパーバック版 の表紙と裏表紙 METHUEN &CO LTD 1967。購入日: 北澤書店にて1972年10月28日】

2019/02/11

超人のドキッとする絵画 32 ムンク展―共鳴する魂の叫び(東京都美術館)

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_20190211_134140_2 _20190211_134024_2②③
_20190211_133017_2_20190211_133951_2④⑤
_20190211_133833_2 _20190211_133203_2⑥⑦
_20190211_133303_2 _20190211_161245⑧⑨
_20190211_133722_2 _20190211_133433_2 ⑩⑪
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①叫び The Scream 1910年? テンペラ・油彩、厚紙 83.5×66.0cm
②自画像 Self-Portrait 1895年 リトグラフ 46.0×31.5cm
③ハンス・イェーゲル Ⅰ Hans Jaeger Ⅰ 1896年 リトグラフ 52.0×40.1cm
アウグスト・ストリンドベリ August Strindberg 1896年 リトグラフ 66.5×49.7cm
④フリードリヒ・ニーチェ Friedrich Nietzsbhe 1906年 油彩・テンペラ、カンヴァス 201.0×130.0cm
⑤ステファンヌ・マラルメ Stephane Mallarme 1887年 リトグラフ 61.0×37.6cm
⑥グラン・カフェのヘンリック・イプセン Henrik・Ibsen at the Grand Cafe 1902年 リトグラフ 51.6×66.4cm
⑦生命のダンス The Dance of Life 1925年 油彩、カンヴァス 143.0×208.0cm
⑧マドンナ Madonna 1895/1902年 80.0×60.0cm
⑨星月夜 Starry Night 1922-24年 油彩、カンヴァス 12.5×100.5cm
⑩メランコリー Melancholy 1894-96年 油彩、カンヴァス81.0×100.5cm
⑪二人、孤独な人たち Two Human Beings, The Lonely Ones 1899年 多色刷り木版 46.0×59.5cm
⑫自画像、時計とベッドの間 Self-Portrait Between the Clock and the Bed 1940-43年 油彩、カンヴァス 149.5×10.5cm
⑬ムンク展図録 MUNCH: A Restrospective A4変型 230頁
2018年10月27日刊
※上記の①~⑫の絵は『ムンク展図録―共鳴する魂の叫び』(朝日新聞社)からピックアップしたもの。


超人の面白読書 136 雑誌『ニューヨーカー』電子版最新号に載った作家村上春樹のインタビュー記事

今冬一番の寒波が日本列島を襲撃(一昨日の北海道陸別町では気温が-31.8℃に達し観測史上初の記録となった。1週間前にはアメリカのシカゴで-46℃と大寒波襲来のニュースをアメリカの友人がラインで伝えてきたばかり)、珍しく関東地方でも雪が降っている。そんな寒い朝、スマホでザッビングしていたら、雑誌『ニューヨーカー』の電子版で作家村上春樹のインタビュー記事を偶然見つけ、途中朝ドラの「まんぷく」を見たため中断したが何とか読み終えた。少し長いインタビュー記事だが、作家の小説作法、作品を産み出すプロセス、考え方や日常それに小説を書き始めた頃などが知れて興味深かった。その記事(タイトルは“THE UNDERGROUND WORLDS OF HARUKI MURAKAMI ”)を読むはこちら➡https://www.newyorker.com/culture/the-new-yorker-interview/the-underground-worlds-of-haruki-murakami
インタビューアーのデボラ・トレ―ズマンDeborah Treisman女史に関する記事はこちら➡http://www.artscouncil.ie/Arts-in-Ireland/Literature/Deborah-Treisman/
追記 作家の村上春樹が自作の『海辺のカフカ』の舞台公演をパリで行うのを機会にフランスの若者と対話や講演をした。ロングランで開催されている「ジャポニズム 2018」(2018.7-2019.2)という日本フェスティバルの一環らしい。この日本祭典は国際交流基金が事務局を担い、フランスで伝統から現代まで、多種多様な日本文化・芸術を紹介する日仏友好160周年に因んだ企画。

2019/02/04

超人の面白読書 135 三島由紀夫著『金閣寺』(新潮文庫) 4

蛇足だが、ネットで読んだ三島の生き証人美輪明宏の話は貴重で面白い。
『金閣寺』は通勤中の電車の中で少しづつ読んだ。ほかの本や雑誌と平行して。再読を試みさらに理解を深めたい。また、翻訳された英文版で豊富な描写をどう英文で表現されているかチェックしながら読んでみたい。
いま山中湖の三島由紀夫文学館では「美と孤独―帰ってきた『金閣寺』」展を2019年5月13日まで開催中だ。
追記 2019年1月27付毎日新聞書評欄に渡辺保評で菅孝行著『三島由紀夫と天皇』(平凡社新書)という三島由紀夫論が載っていた。「大切なものからの宿命的な隔離の感覚が促す極限的な孤絶」―。(2019.1.30 記)
追記2 大澤真幸著『三島由紀夫 ふたつの謎』(集英社新書 2018年11月刊)20190204173743_00001_3
と橋本治著『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(新潮文庫 2005年11月刊)を同時並行して読んでいる。社会学者大澤氏の論理的で比較的分かりやすい文章とつい最近急逝した橋本氏のうねっていて少し分かりづらい文体を咀嚼しながら、筆者なりの三島由紀夫の謎を追っている。(2019.2.4 記)
追記3 三島由紀夫について書いていた矢先、偶然にも今夜のNHKの番組「クローズアップ現代+」 で“三島由紀夫・・・驚きの秘話ノーベル賞と自決の謎”というタイトルで三島由紀夫と川端康成を取り上げていた。演出家宮本武亜門、芥川賞作家平野啓一郎と女優・作家中江有理がゲスト。人間の矛盾を露骨に出ていると語ったのは宮本亜門。そういえば、また2.26事件の日がやって来る。(2019.2.4 記)
追記4 『三島由紀夫 二つの謎』をめぐって『週刊読書人』(2019年1月25日号)で著者の大澤真幸と芥川賞作家の辻原登が対談。『豊饒の海』のラストと自決の二つの謎を追う深読み。三島は世界を滅ぼす否定の言葉に魅力を感じていたとする大澤、一方、愛憎半ばの三島由紀夫読書を通じて、天皇を大トリックスター(文化的英雄)、自分(三島)をを小トリックスターと位置づけする辻原登の意見。いずれにせよ、三島を読んでいない人が読んでもそれなりに面白いというのが重要で、三島を読まないということは喪失があまりにも大きい(大澤)。筆者も共感できない側の一人だった―。(2019.2.28 記)

2019/01/27

超人の面白読書 135 三島由紀夫著『金閣寺』(新潮文庫) 3

『金閣寺』の告白調の内容の理解がなかなか難しい。ここには三島文学の小説に賭けた事柄が凝縮されている。書き出しはこれからどう展開するのか想像を巡らせてくれるが、結末は味気なく中途半端で、むしろ放火後の主人公の心の動きや展開を知りたいはずである。映画のラストシーンでもよく見かける光景で、余韻を残す、あるいは読者の想像に委ねる手法なのか。そういえばアプレゲール派の梅崎春生の小説『幻化』もそうだった―。梅崎春生は昭和22年から昭和32年まで東京新聞に文芸時評を書いていたので、三島の作品『金閣寺』(昭和31年10月刊行)も当然俎上に載せていたに違いない。どう評価したか興味あるところだ。二人の作家に共通しているキーワードは〈戦争〉である。
少し横道に逸れた。三島由紀夫は、新聞の社会面に載った金閣寺放火事件にヒントを得て、それこそ綿密な取材をして事件から5年後に小説を書いた。その緻密さは所々に見られるけれども、とりわけ物語の終わりのほうに金閣寺を放火するまでの様子を刻一刻描写する場面があるが、スリリングがあって見事という他ない。『金閣寺』は雑誌連載中にすでに評判を呼んだ。それは自分の観念、ある種の理想をこの事件にダブらせて描き出し、〈美〉を卓越した言葉の紡ぎ方で追求したのだ。甘美なまでのロゴスとパトスをもって。そしてエロスを味付けに使いながら。主人公は金閣寺の美しさの不滅を内に溜め込んで、終いには感情の化学反応―金閣の美しさ故に儚い、憎いが美しい、それを独り占めにしたいというアンビバレンツな感情―を引き起こして放火という行為で認識を越えようとした。小説はむしろポエジー的でしかも究極、かのマラルメの究極の詩業に似て。彼方にあるのは真善美の〈美〉、耽溺した後に来る死を匂わせ虚無が残る・・・。三島が描いた文学的提示は究極のところ一つの伝統美の回帰という世界を現出させるために、認識から行為へと誘い始めたということか。偶然にもある大学の入口に次のようなフレーズを見つけて驚いた。行動する知性、Knowledge into action。大学のUIの文言は三島の認識から行為へ、を彷彿させる。
それにしても仏教や古典など幅広い知識を駆使して、磐石な構成、人物の設定と造形力、観察眼そして無駄のない論理的な小説作法に驚愕した。
「作家は行動する」ではないが、三島由紀夫が自決してやがて50年になる。その恩師である川端康成も葉山マリーナで自殺、また、「作家は行動する」の江藤淳も鎌倉で自殺をしている。文学は相対化され益々ショー化してきている。そして、キナ臭い政治状況が現前しているのだ。戦前回帰、三島は今草叢の陰でニンマリしているだろうか―。
三島由紀夫は、三代続く官僚の家柄でおばあさん子、幼い頃は外で遊ばず家で女の子のように大事に育てられたという。辞書は好きで隅々まで読んでいたようだ(大江健三郎や井上ひさしなどの作家にもこの手の話があるが)。観念の人三島を彷彿させるエピソードである。もう一つこんなことも。蛙の鳴き声は本では知っていたが現実に蛙の鳴き声を聴いて、あれは何の音ですかと訊いたという、信じられないエピソードも―。

超人の面白読書 135 三島由紀夫著『金閣寺』(新潮文庫) 2

『金閣寺』は難解な小説である。下記に概略を記そう。一人称で告白の形を取っている。

日本海沿岸近くにある村のお寺の息子溝口は、父から金閣はこの世で一番美しいとよく聞かされていた。父のコネで京都の金閣寺(鹿苑寺)の住職のところに預けられる。将来は金閣寺の住職にと期待をかけられて修行に励む。しかし、溝口は吃音症の持ち主でそれがコンプレックスになっている。村の若い看護婦に淡い恋を抱くも吃り症のせいで実らない。その女も脱走兵と出来てしまい妊娠したことを知るが、その後の溝口に暗い影を落とす。また、ある時母は蚊帳で親戚の人と関係するも、父が息子溝口の目を覆ってその行為を隠す。その父の死後、母は親戚の家にあって上洛する度に息子に金閣寺の跡継ぎにと再三期待をかける。溝口は吃音症で人としゃべるのが苦手故自ずと孤独を感じていた。やがて修行仲間の明るい鶴川と知り合いになる。鶴川と訪れた南禅寺の部屋では軍人と女の露な行為を見せつけられショックを隠しきれなかった。戦争末期に食料調達が覚束なくなると、かつては心のなかに金閣の美しさは不滅と画いていた金閣も戦争によって一瞬にして燃やされ消滅してしまうのではと現実的に考えるようになる。溝口はその儚さと虚無を思った。時代は敗戦後の占領時代に移り、日本人の娼婦を連れたGIが京都の金閣寺にやって来て日本人を小馬鹿にしたようなショッキングな行動を境内で目にする。やがて溝口は寺の住職の計らいで大学に進学する。そこで内反症の柏木と出合い新たな友を得る。身体は少し不自由だが知識は人一倍あって論理的かつ策略的な人物だ。溝口は彼の奇妙な魅力に引き込まれ、女遊びの手解きまで受ける。ある時外出時に新京極界隈で住職の女通いを目撃、住職の闇の部分を見て嫌な感情をもってしまう。それは溝口を失望させたが住職は何もなかったように振る舞う。そのことが却って溝口を疑心暗鬼にさせてしまう。そんなわだかまりの状態から抜け出すため柏木から借金して田舎をさまよう。そこで金閣寺放火を思いつくが、不審者扱いにされ金閣寺の住職の元に送り返される。その報を住職から聞いて駆けつけた母から叱責されてしまう。借金返済に業を煮やした柏木が一計を案じて住職から借金を肩代わりしてもらうことに成功する。事故死した鶴川と柏木の恋愛関係を柏木が持参した手紙で溝口が知る。溝口は世話になっている金閣寺の住職からついに印籠を渡される。それからの溝口は放火を着実に実行するため、自殺まで視野に入れて毒薬、小刀、ハンカチそれに煙草を準備し決行を着々と進める。静まり帰った夜、マッチを持ち藁を抱えて境内の3階の部屋まで歩くが開かず仕方なく裏側のほうに出る。そこで火をつける。裏山に逃げた溝口は真夜中に燃え上がる炎を煙草を燻らせながら眺める。生きようと思う。ここでこの小説は終わる。(続く)


2019/01/24

超人の面白読書 135 三島由紀夫著『金閣寺』(新潮文庫)

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大昔学生時代のアルバイト先で、朝日新聞夕刊の「三島由紀夫、割腹自殺」の見出しを読んで衝撃を受けたことを覚えている。彼は自ら結成した盾の会メンバー4名とともに陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地(現防衛省)に立てこもり、総監を人質にしてバルコニーでクーデターを促す演説後割腹自殺を遂げた。三島文学の良き読者ではなかった筆者だが、三島由紀夫の名前は知っていた。マスコミはこの事件を大きく報道、日本国中に賛否両論が沸き起こったのだ。
その三島由紀夫の傑作、いな戦後文学の名作の一つ『金閣寺』を読んだ。恥ずかしながら遅すぎた読書体験と言わざるを得ないが(三島の人と作品などの論評は新聞や雑誌等で読んでいた)、筆者的にはこの作者の思想、自己顕示欲などについていけないところがあり、彼が書いた本を遠ざけていたことも事実。しかし、『文章読本』などは読んだ。そうそう、『花ざかりの森』や『豊饒の海』も途中まで読んで投げ出した。『豊饒の海』など三島作品のいくつかを再度これからチャレンジするつもり。
ところで、『金閣寺』を読むきっかけは、意外なところからやって来た。ノーベル賞候補に挙がったほどの世界的な作家は英語をはじめ外国語に翻訳されて世界中に読者を広げている。日本の作家では珍しく早くから世界的に知名度が高かった作家だ。また、スウェーデンアカデミーからの問い合わせに応じて、翻訳家で日本文学研究家、と同時に三島とも親交があったドナルド・キーンは、まだ若いのでそういう機会はまだまだあると師の川端康成をノーベル文学賞候補に推したことはつとに有名だ(ドナルド・キーンは、テレビ番組に出演した時に三島由紀夫の人柄に触れて、よく高級品を頂いたが、あまり好ましいことではないと言っていたのが印象的だ)。そう、筆者が過去何度も訪ねているニューヨークの書店にもあった。昨夏スウェーデンのアーランダ空港内の文庫本ブックショップにも確かあったように記憶する。
テレビでゲスト出演を果たしたオーストラリア出身のアーティストのサラ・オレーン(絶対音感の持ち主で日本語も上手しかも頭脳明晰。それと表情が妖精っぽい)が衝撃を受けた日本文学は、三島由紀夫の『The Temple of the Golden Pavilion』(『金閣寺』の英文タイトル) 20190128122355_00001だと語ったことに触発されて、英文を読む前にオリジナルを読まなければと読み始めたわけである。生きているうちに少しでも著名な古典や近現代文学の名作を読んでおこうとする自分なりのチャレンジの一環でもある。

追記 『The Temple of the Golden Pavilion』(写真は公共図書館で借り出したもの。1987年刊行のペンギンブックス版。現在絶版。何せ30年以上経っていて、焼けていたり破けていたりと本の状態が良くない。コピーもなかなか厳しかったが何とか読めるように工夫した。新たにヴィンテージ版を購入。しかし、ヴィンテージ版には「序論」がない!)の抜粋。 はじめの序論~P.6までとP.203~からおわりまでを読むはこちら→「20190128221509.pdf」

2019/01/23

クロカル超人が行く 228 立川駅『武蔵野うどん こぶし』

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立川駅『武蔵野うどん こぶし』 の肉汁つけうどん(730円)。遅い昼飯に国立駅南口のラーメン店と考えていたら、西国分寺駅を通過して終点立川駅まで来てしまった。仕方なく立川駅のECUTEの中にある武蔵野うどんに入ったのだ。今まで食べなれているうどんとは少し趣が違っていた。これが意外と美味。あまり見たことのない、すごくこしがある茶系の太麺を昆布、サバ、カツオ、イリコから取ったやや濃い目の醤油出汁に油揚げ、ネギ、ホーレンソウやシイタケを入れたつけ汁に浸して食べるのだが、これがいい味を出していて美味しかった。太麺はこりこりと音がするくらいだった(笑)。
武蔵野台地、多摩川~荒川間の郷土料理、武蔵野うどんは、大島うどん(九州、未食)、讃岐うどん(香川、既食)、氷見うどん(富山、未食)、きしめん(愛知、既食)それに稲庭うどん(秋田、既食)などと同じ郷土料理のうどんだそうな。

2019/01/22

超人の面白ラーメン紀行 258 神田神保町 海老丸らーめん

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フレンチと和食ラーメンの融合形の新感覚ラーメンが開店して評判だ。開店して1年あまり、1月初めにテレビでも放映したことも手伝ってか行列が出来てなかなか入れないのだ。SNSなどで聞きつけてきたのか中国人の観光客が多い。で、半ば諦めムードで店を通りかかったら、偶然にも入れた。昨日といい、今日といい、ラッキーである。ウムウム、ここはついこの間までは辛気臭いラーメン店(筆者は一度入ったがいまどきのラーメン店のようなワクワク感がほとんど感じられなかった。ついでに書けばこの辺のエリアは競争が激しく店の交代が著しいエリア)だったはずだがすっかり活気のある店に変貌しているではないか。
さて、頼んだ海老丸カルボナーラ(950円)は、ラーメンのイメージからは少しかけ離れていて、フレンチヌードルア・ラ・オマールエビといった新感覚の創作ラーメンで、見た目ラーメンではないのである。生クリームとベーコンをミックスした濃厚なオマールエビとパスタ風太麺が絡んでどろどろ感たっぷり、トッピングのフランスパン、半熟玉子、水菜、細かなサイクロチャーシューなど歯応えも充分だ、まさにフレンチ仕立ての西洋ラーメンなのだ。濃厚といえば確かに濃厚で、その強烈さが残る感じだ。強いていえば『とみ田』の西洋版だろうか。どんぶりも大袈裟だが洒落ている。皆さん、一度試したらいかが。海老が苦手な筆者でも食べられた!まずは元祖海老らーめん(850円)➡次に海老丸カルボナーラ➡そして、最後は丸ごと一匹オマール海老らーめん(2500円)で試しては。ほかにサイドメニューも充実。雰囲気も明るく、イントネーションが効いた店の女性の発する“サンキュー”の響きもまたいい。惜しいかな、この店のwebsiteの英文に誤植が。

神保町『海老丸らーめん』1.スープ★★☆2.麺★★3.トッピング★★☆4.接客・雰囲気★★5.価格★★

ラーメンもここまで来るとイースト金

クロカル超人が行く 227 神田神保町 やきそば『みかさ』

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神保町のやきそば『みかさ』でソース味の自家製生麺焼きそば(800円)を試食。行列のできる焼きそば屋で、今日は珍しく並んでなかったのでラッキーと思って入った。焼きそばは普段ほとんど食べない筆者だが、ここは前から気になっていたので思い切って食べてみた。北海道産小麦粉100%の平打ち中細麺はもちもち感があって柔らか、美味。どちらかと言うとソースが苦手な筆者だがイケた。トッピングの半熟玉子と豚肉の味もいい。いやいや、長ネギのシャキシャキ感が堪らない。大盛りも選べたので結構食べ応えがあったが、定番の海苔や紅しょうがをかけずに食べた。いや忘れたのだった!

焼きそばに海苔かけ忘れ寒走る

隙間風焼きそばの湯気みえかくれ


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焼きそばを食べた後、“赤本”の古本屋に立ち寄ったら珍しく店内で写真や書籍それに自筆原稿のコピーなどが展示された『三島由紀夫展』をやっていた。思想は別にして改めて三島の達筆さに驚愕した次第。で、店主と比較的若い男性の珍しい会話を盗み聞き。「右翼と左翼、今はねじれていてややこしい」と店主・・・。思わずコマーシャルを捩ってラララ、ブックマーク、ラララ、ブックマークと呟いてしまった。

2019/01/18

クロカル超人が行く 226 サザコーヒー KITTE丸の内店

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【写真上: 本日のブレンドコーヒー
(コロンビア)と持参の文庫本
写真下: KITTE丸の内店入口】

昨夜テレビ東京の『カンブリヤ宮殿』で取り上げられた、茨城県ひたちなか市の『サザコーヒー』。地方発信のこだわりのコーヒー店である。早速東京進出店の一つ、東京駅丸の内南口からすぐのKITTE丸の内店に出向いた(店自体は狭くアンテナショップ風)。並んで待つこと30分、カウンターで本日のコーヒー(コロンビア、470円。スタバよりもずっと高め !)を試飲した。香りがあり深みもあってまろやか、不思議な味わいだ。何やらその秘密は焙煎に、また、バリスタのプラスアルファ添えに、あるらしい。コーヒーカップやプレートはボーランド製(花柄のプレートの裏側を覗いて判明。本店あたりでは笠間焼のカップを使用している)

「社の豆です」(こういう風にさらっといえるところが憎い)とコーヒーを運んでくれた女性の一言が筆者の耳にエコーした。
(ここではトレーに乗せてコーヒーを運んでいないのだ!これには驚嘆、溢したり落としたらどうする?)

テレビ東京の番組『カンブリヤ宮殿』に出演したサザコーヒーの会長(奥さまが社長)が、実はコロンビアに自社農園を持っていると語っていた。なかなかの地方発信者だ。彼が家業の映画館を止めてこだわりコーヒー店、サザコーヒーを創業、子息が副社長で茨城県だけではなく東京への進出も果たした。茨城県に10店舗、東京、埼玉に4店舗を展開する今や年商13億円のファミリーカンパニーだ。会社自慢のコーヒーがパナマゲイシャ(筆者注: パナマゲイシャの“ゲイシャ”とはエチオピアにある地名)という種類のコーヒーで3000円と高価だ。ネルドリップやサイフォンでバリスタが淹れるコーヒーにもこだわりがあるが、それより現地から直輸入の生豆にこだわるあたり半端ない。
サザコーヒーはなかなかこれといったものがない(納豆は別として)茨城のスマートイメージアップに一役買っている優等生企業なのだ!ここまで来るのに50年はかかっているが―。

去年の秋にはスウェーデンのコーヒー、FIKAフィ―カ(全体的にクセがなくまろやか)を購入、そして暮れにはアメリカのアトランタから一時休暇で帰国した友人から頂いたアメリカの地元のインスタントコーヒー、FOLGERSフォルジャーズなどいろいろなコーヒーを楽しんでいる。筆者的にはフレンチプレスで簡単に淹れられるコーヒーを愛用。フレンチプレスならではの香りや油、コーヒーそのものの味わいを楽しめるのだ。粗挽きのコーヒーに熱いお湯を注ぎ、4分ほど待ってプレスすればサザコーヒーに劣らず美味いコーヒーが飲めるのだ。

2019/01/13

超人のこだわり食品 和歌山県有田郡湯浅町 小原久吉製『湯浅醤油』

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塩は沖縄塩夢寿美、味噌は新潟の越後純生味噌そして醤油は和歌山の紀州湯浅の醤油、これが筆者の食卓に並ぶこだわりの3つの調味料。

名称 さいしこみしょうゆ(本醸造) 原材料名 大豆、小麦、食塩、アルコール 内容量 500ミリリットル。

醤油発祥地紀州湯浅の地にて江戸時代から8代続く醤油の老舗・小原久吉商店の風味豊かな二度仕込醤油です。
湯浅醤油は、熟成させたもろみを搾った生揚醤油に、もう一度麹をあわせて醸成させた、二度仕込の醤油です。二度仕込により醸し出されるまろやかで豊かな風味と深みのあるコクが素材の美味しさを引き立てます。
―小原久吉商店の賞品説明から抜粋

コクがあって甘みのある湯浅の醤油、万能醤油の類いで味わい深い。サービス品の湯浅醤油のラーメン用スープに喜多方ラーメンの生縮れ麺で、チャーシュー、メンマ、モヤシと玉子をトッピング、更に韓国海苔も入れて試食。醤油スープの味がまろやかで美味だった。

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2019/01/08

クロカル超人が行く 226 両国~東京駅~丸の内散策

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【写真上から : ①すみだ北斎美術館プレート The Sumida Hokusai Museum's nameplate ②すみだ北斎美術館外観 The stylish exterior of the museum③すみだ北斎美術館の階上から見たスカイツリー The Skytree of the other side of the net④⑤夜景:皇居前から東京駅 Night view: Around Tokyo Station ⑥夜景:丸の内 Night view: Marunouchi area】

2019/01/07

超人の面白ラーメン紀行 257 横浜・反町『ラーメン★星印』

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正月にテレビ東京でやっていたラーメン番組で紹介された反町のラーメン店に出掛けた。横浜・反町はその昔古本屋の街として有名だったはずだが、最近では一部の通りに何軒かラーメン店ができて、ラーメン ストリートを形成しているようだ。東横線反町駅から徒歩5分、すでに14人が並んでいて筆者がラスト。3時閉店なのでぎりぎり間に合った格好だ。外と中で待つことちょうど1時間、やっと頼んだ特製醤油ラーメン(1100円)が供された。一啜りした感じではスープ(煮干し系)はストレート系もちもち感のある細麺(太細麺と表現した方がより正確かも)によく絡んでいたし、Wスープの味もいい。半透明でやや甘く、香味が味のまろやかさに一役かっていた。特製とあって低温処理された豚・鶏の二種類のチャーシュー(微妙なやわらかさだが少しスモーク感が残った)、美味なワンタン、名古屋コーチンの味付玉子一個丸々、材木メンマ、刻みネギがトッピングされて賑やか。海苔はない。しかし、見た目はシンプルに映えるから不思議。カウンターのみ8名。テレビでは佐野実を尊敬していると言っていた、矢沢永吉ファンの店主と男性の二人で切り盛りしていた。客応対もなかなかいい。高田馬場『山口』や恵比寿『AFURI』の淡麗系。日々研鑽した結果の進化したラーメンで絶品に近づいた感じか。今度は醤油ラーメン(850円)にチャレンジしたい。

『ラーメン★星印』1.スープ★★★2.麺★★★3.トッピング★★4.接客・雰囲気★★5.価格★☆

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2019/01/06

クロカル超人が行く 225 両国駅とんかつ『はせ川』

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JR両国駅から徒歩3分のところにあるとんかつ『はせ川』。たまたま見つけたとんかつ店で、先客が6、7人、並ぶこと20分。筆者はカツ重(1200円)を頼んだ。家人はメンチ+カツ定食、アメリカの友人家族3人はカツカレーを頼んだ。
カツは最初は肉がほんの少々硬いかなと感じたが、食べて行くうちに違和感はなくなり、やわらくてジューシーな味わいに。美味。皆美味しかったとベタ褒めだ。とんかつのリーズナブルで美味しい店をさがしていたのでラッキーだった。店内は一見どこにでもあるような店づくりだが、厨房とホールあわせて従業員が5人もいて奥には座敷もある。50人は優に入れる店かも。

2019/01/05

クロカル超人が行く 224 アメリカから来た友人家族と両国あたりを散策

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【①吉良邸正門跡(偶然にみた1月4日夜放送のBSフジの番組「この歴史、おいくら?」でもロケしていた ついでに書けば 赤穂浪士たちの討ち入りまでの約1年半の1ヶ月の生活費は今のレートに換算して15000円くらいで “ 討ち入りプロジェクト”にかかったコストは約6000万円以上と番組解説者②本所松坂町公園 吉良邸跡③公園内吉良上野介義央公 伝え聞く吉良上野介の顔とは違っていた④本所松坂町公園由来 この界隈の人たちの熱意の結晶がここにはある ⑤芥川龍之介文学碑(幼少・少年時代を過ごした旧芥川家住居跡)『杜子春』の一節が書かれた石碑⑥刀剣美術館 引っ越して新しく開館したらしっす 一本430万くらいの刀剣が一番高価 狭い美術館の中には室町時代に作られた刀剣もあって不思議な「武器」の輝きも⑦両国駅旧駅舎を改装した複合飲食施設「-両国-江戸NOREN」 昔のビアホールの面影を残す高い天井】

アメリカからクリスマス休暇でやって来た友人家族は、国技館が休館だったことを悔やんでいた。で、両国駅旧駅舎を改装した複合飲食施設「-両国-江戸NOREN」で相撲カレンダーを買おうとしたら、国技館専売で売っていなかった。これまた残念、斬り!〈余談だが、この「斬り!云々」のピン芸人は今は福岡に移住して活躍しているらしい)友人の息子さんが相撲ファンらしくアトランタの自宅で相撲中継を見ているとか。

2019/01/01

超人の面白読書 134 小堀 聡著『京急沿線の近現代史』

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京急は西の阪神、東の京急と例えられるほど海沿いを走る庶民の電車として親しまれている。しかも目立つ赤い電車でスピードもある。電車のなかで書きものをするものならすぐさま字が踊ってうまく書けないほど揺れる。その極致はカーブのある線路を走るときで、何とも言えないスリリングさを体験できるのだ。
さて、そんな大手私鉄の京急について蘊蓄を傾けた本が刊行された。小堀 聡(名古屋大学准教授 横須賀市出身、日本経済史、エネルギー産業・環境史)著『京急沿線の近現代史』だ。キーワードは120年の京急を繙く、である。本書の関連年表によると、1899年(明治32)1月 川崎(のち六郷橋)―大師、国際標準軌(1435ミリ)にて開業とある。更に本文には1月21日午前10時開始と詳しく書いてある。京急はこの1月でちょうど120年になるのだ。本書は今までの電車本とは切り口が一味違って京急「沿線」の歴史だが、読み応えがあり考えさせてくれる一冊だ。筆者は全12章174頁を一気に読んだ。前から、章によっては二三度、最後の章からは、上りの各駅電車に乗った気分で反対にも読んだ。行間からは〈つよさ〉と〈やさしさ〉が感じられ、〈知見〉が迸る。少壮歴史学者のなせる業だ。初詣(川崎大師)や神社参拝(穴守稲荷)、在来産業(海苔養殖、漁業など)に従事してきた地域・住民が京急の鉄道敷設で変貌していく様を小気味良く抉る。在来産業➡海水浴・リゾート➡大規模な埋め立て・大企業の誘致と進出・重化学工業の勃興と発展・公害➡宅地開発・沿線人口増➡開発に歯止め・自然破壊・住民運動・自然保護―といったように歴史の光と陰を分かりやすく、ときに資料を駆使して簡明に描き出す。大雑把に捉えれば、前半は京浜工業地帯の発展史、後半はその歪みと警鐘。京急沿線のもう一つの顔である軍隊(帝国陸海軍、占領軍、自衛隊)の話(写真とコメントがいい、特に「小松・パイン」、横浜、逗子、原発誘致失敗の言及もある横須賀とその周辺)を織り混ぜながら、京急延伸と宅地開発の歯止め➡三浦半島の自然保全に言及する。そして、京急と沿線―脱工業化の設計図等➡自然との共生を模索―の未来像を巡らせて終わる。京急沿線を世界史的、とりわけ東アジアのコンテキストで捉え直したことが画期的だ。ここで目次を掲げてみよう。その前に本書の狙いを著者が書いているので覗いてみたい。

「京急沿線各地での生産活動と生活(住居、行楽、住民運動など)とが、臨海工業地帯の発展とともにどう変わっていくのかを具体的に追跡したい。本書はあくまで沿線史ですから、各章には京急以外にも企業家、政治家、住民、宗教家など様々な人物が登場します。京急は時として主役を、また脇役を演じるでしょう。なお、特別出演として軍隊(帝国陸海軍、占領軍、在日米軍、自衛隊)が登場することを予め補足しておきます。神奈川県にとって軍隊は戦前・戦後を通じて大きな存在であり、それは湘南電鉄、京急やその沿線自治体に数々の影響を与えてきました。京急沿線に注目することは、世界各地からの資源輸入の背後にある日米安保体制を足許から見直す機会にもなるでしょう。」(本文P.10―P.11)

第1章 世界史のなかの京急沿線
第2章 川崎―初詣からハンマーへ
第3章 羽田・蒲田・大森―行楽、空港、高度成長
第4章 品川―帝都直通の夢
第5章 鶴見~新子安―生活と生産との相剋
第6章 日ノ出町・黄金町―直通、戦災、占領
第7章 上大岡~杉田―戦後開発の優等生
第8章 富岡~金沢八景―おもしろき土地の大衆化
第9章 逗子海岸と馬堀海岸―残る砂浜、消えた砂浜
第10章 安針塚~横須賀中央―軍都の戦前と戦後
第11章 浦賀と久里浜―工業化とその蹉跌
第12章 三浦海岸~油壺―三崎直通の夢と現実
あとがき、関連年表

筆者的には第6章、第10章~第12章が印象的。どの章から読んでもいい。鉄道史はもちろんのこと、政治経済史、環境史、都市史、社会史、軍事史、不動産史などのアプローチを可能にする、多面的な読み方ができる本だ。ぜひ薦めたい本。
CPCNo.9 エコーする〈知〉A5判、174頁、クロスカルチャー出版 2018年12月25日刊 定価 本体1,800円+税。

追記 著者の小堀聡先生が地域情報紙『タウンニュース』横須賀・三浦版の「人物風土記」に登場しました。
その記事を読むはこちら→「20190201112835.pdf」

2018/12/26

クロカル超人が行く 219 【北欧最新情報】北欧フィンランド・ヘルシンキ&スウェーデン・ストックホルムとウプサラの旅 5 ヘルシンキ大聖堂・元老院の前の広場

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かつて『PS JOURNAL』(現『CPC JOURNAL』)にスロヴェニアのドラゴ氏が、京都散策について書いていたことを思い出した(エッセイはWebのみの掲載。http://crosscul.com)。冬の、そう大晦日の平安神宮の“広場”、それをヨーロッパの広場と比較しながら書いていたのだ。“広場”はヨーロッパ人にすれば都市空間を演出する不可欠な基地で、古代ギリシャのアゴラをその起源にもつが、教会、宮殿、市場の前に計画的に配置されコミュニティの重要な機能を果たしてきたのだ。ドラゴ氏が指摘したようにヨーロッパではごく当たり前のことが日本には見いだせないでいたが、平安神宮の広場にそれを見つけて驚きを隠せない書き振りだった。この記事は11年前のエッセイで、今度は筆者がヨーロッパしかも北欧で広場の意味を感得することになるとは、不思議な交流、クロスカルチャー的な邂逅である。平安神宮が土の上に小石を敷いた、いわば、ソフトなスクウェアだとすれば、ヘルシンキの大聖堂・元老院の広場は石畳のハードなスクウェアだといえよう。それはストックホルムのガムラスタンの石畳や広場でも同じような感情を持つ。じっくり歩くと歴史の足音も同時に聴こえてくるような気がする。昔の都トュルクがスウェーデン寄りなのを嫌って当時の帝政ロシアが港町ヘルシンキに首都を移したといわれている。都市形成史には様々な記号が隠されていてその謎を歴史に思いを馳せて解くのも面白い。ヘルシンキ大聖堂・元老院、国立国会図書館など立派な建物が広場を囲んでいる。夏空と中間色薄ベージュ色それに白色が石造りのがっしりとした建物に映えて広場もまた、その存在意義を刻印していた。歴史の重みに耐えてきた広場は、今観光客を乗せた赤色のバスが過り、その脇をトラムが走る。

ツアー(Tour)よ、ツアー(Tzar)!
ヘルシンキ大聖堂・元老院の広場を感知せよ。
キートス(Kitos: フィン語、感謝)。

上の写真の右側あたりのレストラン『Restaurant Sunn』で昼食(スカンジナビア料理)。フィンランド国立図書館見学後に。

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【写真: レストラン Sunn】
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【写真: 味のうすい野菜スープ 】
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【写真: 濃いミートボール】
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【写真: デザート】
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【写真: 現地のビール】
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【写真: 店の入口付近に貼られていたマリア・カラスのポスター】

追記 毎日新聞の日曜版には藤原帰一の映画評が掲載されているが、つい2日前の2017年12月23日の日曜版ではオペラ歌手の映画『私は、マリア・カラス』を取り上げていた。自分自身のオペラ鑑賞体験も書き記しながら、インタビューを織り混ぜたドキュメンタリー映画、マリア・カラスの実像にやさしくアプローチした感じだ。むしろ普段オペラに接することがほとんどない人たち(筆者もその一人)や逆にツーの人たちにどう届けるかと心配気味の先生、ともかく人間マリア・カラスを観てくださいと。マリア・カラスといえば、天才的な歌姫だったけど晩年はオナシス(あのケネディ大統領の元夫人ジャックリーヌと結婚したギリシャの富豪)の関係などスキャンダラスにまみれ、その死すら未だに謎が残っている大オペラ歌手のようだ。
さて、追記で書いた理由はレストラン『Sunn』の入口に飾られていたポスターにあったのだ。それが映画「私は、マリア・カラス」のポスターだった―。若きマリア・カラスの姿(最初は誰だか解らず、アメリカの歌手かな、程度の認識。マリア・カラスについては本の少し知っていたにすぎない!)に魅せられて思わずパチリと収めた一枚。この映画の日本公開は日本が1年遅れて2018年。(2018.12.26 記)
✳2018年8月29日の記事に追記。

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2018/12/05

クロカル超人が行く 223 泉岳寺

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泉岳寺といえば赤穂義士の墓がある寺で有名である。忠臣蔵とか赤穂浪士とか呼ばれて日本では歌舞伎、講談、小説、芝居や映画などで昔から親しまれてきた。1964年のNHK大河ドラマ「赤穂浪士」は、豪華キャストを配して高視聴率を獲得した。筆者などは今でも討ち入りのシーンや吉良邸それに大石内蔵助をはじめ四七士の“活躍”の場面が目に浮かぶ。

筆者が訪ねた日、泉岳寺は静かに佇んでいた。義士の墓には線香が絶えず墓参りの多さを感じさせた。やはりここでもアジア系のカップルや家族の姿があった。なぜに受ける赤穂浪士、この時期になるといつも考えさせられる問題だ。そうして、まもなく12月14日がやって来る。

2018/12/03

クロカル超人が行く 222 京都点景 夕暮れ・夜 2018 晩秋

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【写真: ①京都大学時計台下、名物の立看板が消えていた! 小綺麗になったが少し寂しい ②③④南座、発祥400年新会場記念公演中 ⑤スウェーデンの蒸留酒アクアビット 「スコーネ」】

秋は幻(げん)
鏡台に映る
タテカンバン


晩秋に
コトノハ落ちる
GION街


せめて一度
歌舞伎に触れたい
京の夜

2018/11/30

クロカル超人が行く 221 京都・兵庫 キャンパス紅葉

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【写真: ①大谷大学 ②③京都産業大学 ④神戸大学 ⑤関西学院大学】


キャンパスはボルドー色に染まりけり

2018/11/28

超人の面白ラーメン紀行 256 京都・伏見区深草『ラー麺 陽はまた昇る』

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面白い出合いもあるものだ。仕事が一段落してさて、昼飯にラーメンを食べようと京阪深草駅近くに自家製麺の濃厚とんこつラーメンを見つけた。入る前に店をパチリと撮っていたら、高校生がやって来てもっと旨い店がこの近辺にあると自ら先導してくれたのだ。それが関西ラーメンフェスティバルでグランプリを取った(高校生の話では)『ラー麺 陽はまた昇る』だ。店お薦めのとりとんこつラーメン(750円)を先ほど出会った高校生のT君と食べた!形状は異なるが味は松戸の『とみ田』似。奢ってあげれば良いものの逆に、ぼく、卵苦手なのであげるとゆで卵を筆者のどんぶりに入れてご馳走してくれた。それからは彼の友達にスマホでやり取りして京都ラーメン旨い店探し。池田屋、高安、菜館等々。聞けばその高校生の実家は木津川でラーメン店『無鉄砲』の近くだという。近鉄京田辺駅『あまのじゃく』、近鉄桃山御陵前『大中』、京阪墨染『地球規模で考えろ』などとんこつ系のラーメンを教えてくれた。やはりラーメン好きはどこにもいるのだ。


2018/11/27

クロカル超人が行く 220 東京ミッドタウン日比谷

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三井不動産が手掛けたJR有楽町駅近くの「東京ミッドタウン日比谷」。グランドオープンして約8ヶ月、ここに来ていた親子が言っていた、“外国にいるみたい”という言葉がこのミッドタウンの雰囲気を言い当てているようだ。3階に出店した有隣堂をはじめ、レストランも一味違った雰囲気で、デザインやファッションを優先した高級感を演出した空間になっている。窓外には日比谷公園が見える。
ところで、写真にもあるがエントランスすぐにワインの試飲する場所があって結構賑わっていた。筆者もアルゼンチン、チリ、スペイン、ドイツのワインの試飲をさせてもらった。渋味からやや甘味まで様々な赤ワインを味わったが、やはり飲み慣れて手頃なチリワインが口に合った。ワイン試飲開催中の輸入業者(会社名は失念したが品川にあるみたい)の社員の方によれば、この場所を1日借りるだけで100万円するという。それを10日間借りていて今日が最終日とか。じゃ、どうやって売上を確保するのか。基本はワインの瓶でテイスティングして気に入ったら即決してもらい、1本2500円~4000円くらいのワインをダースで販売するらしい。リピーターを増やすことで採算ペーストに持ち込めると踏んでいる。ワインの輸入業者は大胆だ。いや、待てよ、考えてみると輸入したワインの在庫セールとも受け取れる・・・。
東京ミッドタウン日比谷の客入りは3連休の最終日としてはまあまあか。

2018/11/23

小田急財団・専修大学講演会 永江雅和先生「小田急沿線の近現代史」

小田急財団・専修大学講演会 : 永江雅和先生「小田急沿線の近現代史」。2018年11月23日、専修大学10号館大教室(600人収容)。午後2時~3時30分。天候は晴れ。150人のところ800人の応募あり。抽選で400人が聴講。大盛況。

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【写真①講演会案内 ②永江雅和先生講演 ③開演前の会場 ④受付 ⑤関連書籍展示販売】

追記 ついにこのコラムの本数が2000本に達成!一応大きな節目をこえた。

追記2 講演の内容を読むはこちら➡https://www.senshu-u.ac.jp/news/20181207-03.html?utm_source=dlvr.it

2018/11/21

超人の面白ラーメン紀行 255 神田錦華通りラーメン店『五ノ井』

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最近特に神田錦華通り界隈にはコジャレな店が増え始めている。カレー店は何軒かあるのだが、15、6人が入れば満杯のSOHO的な飲食店である。元あった場所が何だったか分からないほどポツリポツリと出来てきているのだ。
その一つ、入れ替わりが何回かあったところのラーメン店に入った。排骨担々麺が売りの『五ノ井』ラーメン店だ。店に入って大分思案したあと、辛いのはスキップと考えて券売機で排骨(パーコー)ラーメンの食券を買った。排骨ラーメンとワンタン麺とが上下で並んでボタン一つ押せば、料金は同じ980円で2種類のラーメンが出てくるシステムになっている。筆者は戸惑いながら店主に食券を渡そうとしたら、「ワンタン麺ですか」と訊いてきたので、思わず「そうです」と答えてしまった。筆者的には排骨+ワンタン麺と想像していたが、しばらくして出てきたのはワンタン麺のみ。「えっ」と筆者。「排骨ラーメンではなかったの?」と店主に訊ねた。すると、排骨ラーメンに取り替えますとあっさりワンタン麺を持ち帰ったのだ。紛らわしい券売機のおかげで余分なエネルギーを費やしてしまった。ラーメン店によっては商売根性丸出しの紛らわしい券売機表示もあるが、一品ずつ表示してあるのが分かりやすくて普通と思うのだ。
さて、排骨ラーメン。まずはキツネ色に揚がっているか、次に豚あばら肉が柔くてサクサク感があるか、スープがトッピングの排骨とマッチしているか、ホウレン草やもやしが生き生きしているか、そして麺がストレート系中太麺か、その辺を瞬時に総合的な見地でチェックすると万世排骨ラーメンのそれとは違う、深みのないエピゴーネン、どうやら亜流のよう。醤油味や排骨(パーコー)の豚あばら肉は似ていた感じもしたが残念ながらイマイチだった。改良すればもっとうまくなるかも。
神田錦華通り『五ノ井』1.スープ★☆2.麺★☆3.トッピング★4.接客・雰囲気★☆5.価格★☆

追記 久し振りに『万世ラーメン有楽町店』に寄って排骨(パーコー)ラーメンを食べたが、証拠写真を撮るのを忘れてしまった(笑)。(2018.11.25 記)
以前に書いた万世ラーメンの記事はこちら→
http://crocul.cocolog-nifty.com/callsay/2005/07/__11_8e78.html

追記2 排骨担々麺(1000円)を食べた。そう辛くはないが、肝心の排骨がスープに負けてしまい味がボケていた。やはり排骨ラーメンで良かったのだ。肉厚もイマイチだ。今度は自分で揚げて作ってみたい。(2018.12.8 記)

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追記3 そういえば、この店の奥さんらしい女性―券売機のメニューの紹介や買い方まで指南(前に来た時迷って希望通りのラーメンが出てこなかくて替えてもらったのを知ってか)―してくれたが、こちらから何も言わないのに排骨ラーメンの有名店らしい、渋谷の台湾ラーメン『亜寿加』で修行した人ですと言っていた。

追記4 作りました、作りました、排骨ラーメン。濃厚醤油スープに生麺を入れ、揚げた豚バラ肉をのせて。肉厚過ぎて揚げるのに一苦労した。初めてチャレンジした割にはま、星★の自己評価。『五ノ井』のは肉が薄かったのでその反動かも(笑)。渋谷の『亜寿加』には近いうちに行ってみたい。(2018.12.10 記)

2018/11/18

超人の面白ラーメン紀行 254 世田谷『麺屋 武一』

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『麺屋 武一世田谷店』の特製鶏鰹ラーメン(930円)。濃厚鶏そばがメインの店だが、あえてスッキリ味を選んだ。しかもつくねなどがトッピングされた特製を。本店は新橋。味はごく普通。土曜午後2時半頃だったからか客はほとんどいず。マレーシアなどアジア国々にも店舗があるみたい。

『麺屋 武一世田谷店』1.スープ★★2.麺★★3.トッピング★★4.接客・雰囲気★☆5.価格★☆

2018/11/17

超人の面白ラーメン紀行 253 元浅草4丁目製麺所『浅草 開化楼』

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よくラーメン店で見かける中華麺の浅草 開化楼。その有名な中華麺工場(製麺所)へ麺を買いに浅草まで出かけた。時々ラーメンを食べに行っている『神田勝本』には開化楼の箱がいつもぎょうさん積んである。この店はまだ開店して3年くらいだが去年のミュシュランで一ツ星を獲得、それ以後行列が絶えないのだ。さすがに最近は以前ほどでもなくなかった様子、それでも少しは並んでいる。ここでのこだわりはつけ麺のストレート系細麺と中太麺のダブル麺の絶妙な組み合わせ(合い盛り)に表現されている。麺の力、歯応え、食感を充分に堪能させてくれる。そこで使われている麺が浅草開化楼の麺である。

“製麺師”にお会いしてラーメン店『勝本』の話をした。
「『神田勝本』にはお世話になっています。そう、普通のものより配合が違うんです」と半ば嬉しいそうに話す“製麺師”。
冷蔵庫(中華麺貯蔵庫)には背の高さ以上に積み重ねた麺の箱がずらり、程よい温度で管理されている。100種類以上の麺の種類があるらしく、どの麺がいいかと訊かれたので醤油ラーメン用細麺と味噌ラーメン用中太麺をお願いした。箱には浅草 開化楼しか書いていない箱の中から職人技よろしく取り出してくれた。工場名の浅草 開化楼名しか書いてないのに箱で中身の麺が判るとは不思議。どうして判るとツッコミを入れると、すべて食べているからとの返事。実は取って置きの麺があるんだと言って“製麺師”が取り出そうとしたが、奥のほうにあるらしく何度か試みたができなかった。細麺と中太麺をゲット。

「いくらですか」とお勘定をたずねた。
「今日はお金はいらないよ」とこちらが出しても受け取らなかった。また電話して来いよと名刺を渡された。
今度は必ず電話で予約して取って置きの中華麺を買いに来たい。なかなか粋な“製麺師”である。

その中華麺は10日間もつそうで食べ方まで伝授された。事前に用意したスープに1分間麺を茹でて入れること、でないと麺がのびてしまうそうだ。この麺を使ってラーメンを食べた感想は【追記】で。乞うご期待。

_20181117_123045 右の写真の手前奥に中華麺の冷蔵庫(貯蔵庫)がある。実は”製麺師”に麺箱がぎょうさん積み重ねてある奥の冷蔵庫を撮影していいかと許可を乞うたが、ややこしくなるからと(殺到する?)NG。残念。

追記 おすそ分けした郡山の友人は、すでにこの麺を食べたとメールあり。美味しかったみたい。

追記3 仕事帰りに渋谷駅東急に寄った。ラーメン“小道具”をゲットするためだが。ちょうど製麺所試食コーナーがあって醤油と味噌スープを買い込んだ。札幌森住製麺所のもの。販売員に井上製麺所は知っていますかと訊いたら知らない、西山製麺所なら知っていると。そうです、そうです、筆者の勘違い!札幌に西山製麺所あり、あの黄色い麺だ。で、東京の開化楼の麺は知っていますかと販売員に訊いてみた。知らないとばっさり。そうそう、井上製麺所は尾道ラーメンの麺だった!

追記4 さて、試食タイム。上記「追記3」で触れた森住製麺所の醤油用のスープに煮干と鰹節を加えて煮立ちし、アレンジしたスープを作って開化楼製細麺を入れた。トッピングにもやし、玉ねぎ、ピーマン、ナルト、メンマ、少し厚手のチャーシューそれに韓国海苔をのせて半ば自家製の醤油ラーメンが完成。身内にもプレゼントした。麺がたっぷり、うまい、うまいとべた褒め。大盛だったのか腹一杯で動けないと(笑)。確かに細いにもかかわらず麺がしっかりしていて美味。
試食するのに夢中でカメラに納めることを怠り、あわてて一箸つけてから撮ったのが下記の写真。

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うまか麺
啜るにつれて
秋深し

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追記 右は開化楼製中太麺にチャレンジしたもの。森住製麺所の味噌ラーメン用スープに多少アレンジしたスープ、トッピングはチャーシュー、キノコなどが入った野菜炒め用もやし、ピーマン、ホウレン草、コーン、刻みネギ、くずれ気味のゆで卵、メンマ。細麺の醤油ラーメンとはまた違った味わい。うまか。(2018.11.19 記)

2018/11/16

クロカル超人が行く 220 山梨県立文学館で「草野心平展」、美術館でミレー作「落穂拾い」や新着「角笛を吹く羊飼い」などを鑑賞

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10月上旬に山梨県立文学館で開催中の「草野心平展」と一度は観たいと思っていた美術館のミレー作「落穂拾い」を観に出かけた。良く晴れた日で甲州路の秋を少しばかり堪能した。文学館の「草野心平展」ではやはり同人誌『銅羅』の赤い表紙が目立ったほかは、山梨のシンボルの富士山と関連した心平詩などが展示されていたにすぎない。心平関係は少しは観てきたので何か目新しいものがないかと訪ねたのだった―。草野心平の中国留学や滞在での活動に関心大の筆者だが、資料提供者リストに名前のあった中国人心平研究者に注目したい(追記。それと、もう一つ重要なエッセイが図録にあった。それは草野心平が1940年代に中国滞在中に書いた小説に言及しているエッセイだ。それを読むはこちら↓
20181207190523_00001 先ほど亡くなられた詩人の入澤康夫は、岩波文庫版『草野心平詩集』の解説で心平の1940年代の中国滞在期間―汪兆銘南京政府の宣伝部顧問時―の行動が謎だと書いていた・・・)。
ついでに観た山梨ゆかりの多彩な作家たちのコーナーは意外と面白かった。そうか、この作家も山梨出身だったかと忘れていたことも。館内がいやに騒がしいなと思っていたら、どうやら子どもたちがスタンプラリーをしているらしく即席の回答求めて走り回っていたのだ。
マルシェ開催中の広場を通り向かいの美術館に出向いた。ここではフランスバルビゾン派のミレーの「落穂拾い、夏」(1853、油彩・麻布、38 .3×29.3)や9月に開館40年を記念して購入した「角笛を吹く羊飼い」(制作年不詳、油彩・板、38.1×27.9)などを鑑賞した。

ミレー作品収蔵数は今では70点、世界有数でその収集の根拠は、山梨とフランスの農村地帯がいずれもブドウ畑や気候が似ていることらしい(毎日新聞2018年10月31日)。

滞在時間わずか2時間、甲府駅近くでほうとうを食べて帰った。山梨でほうとうを食べたのは15年振りくらいだ。

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【写真: 『小作甲府駅前店』のほうとう定食】

2018/11/15

クロカル超人の面白読書 133 大矢悠三子著『江ノ電沿線の近現代史』

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藤沢と鎌倉を走る江ノ電は、走行距離10キロ、10駅約30分の短いレイルウェイだ。しかし、民家や海岸線をすれすれに走る緩い走りの車窓からは風光明媚な箇所がいくつもあり、一駅一駅降りては乗るを繰り返せば1日あっても時間が足りないくらいだ。筆者などは、春には鶴岡八幡宮での花見や江の島マリンタワーすぐ近くのイタリアンで誕生日祝いをしてもらうのが恒例だし、夏には海辺でシラスを食べ、秋には鎌倉山麓で紅葉狩りも。そして冬、鯵の干物買いついでに蕎麦を食べに出かける。混雑する観光シーズンはなるべく避け、土曜日などにふらっと出かけるのがいい。そんなとき車に乗れない筆者はいつも江ノ電を利用して移動している。そっと耳を傾ければ線路を走るガタコトガタコトという音が聴こえる、それが心地良いのだ。最近では中国からの若いカップルも多くなり、極楽寺駅(かつてはテレビドラマで脚光を浴びた)をはじめ江ノ電沿線の駅に甲高い中国語が飛び交う。これも古都鎌倉の新たな風物詩になりつつある。
そんな江ノ電利用者に待望の本が刊行された。藤沢市史に関わり、『湘南の誕生』の共著もある海水浴(そう、湘南の海水浴に触れた、タレントのタモリが主演のNHK番組「ブラタモリ #115 湘南~湘南の人気のヒミツは“いとしのヘリにあり”~」が10月13日に放映された!)やリゾート史に詳しい大矢悠三子氏の『江ノ電沿線の近現代史』、ここには今まで知らなかった事柄が分かりやすく書かれていて沿線の顔をリアルに浮き彫りにさせてくれる。目次は下記の通り。

第1章 江ノ電の開業―湘南トライアングルの形成
第2章 湘南の大都市・藤沢
第3章 憧憬の鵠沼―開発分譲型別荘地の嚆矢
第4章 大東京の風景地と湘南海岸
第5章 湘南ランドマーク―不思議アイランド・江の島
第6章 海岸線―「江ノ電のある風景」の変貌
第7章 鄙の地、聖地となる
第8章 鎌倉を愛した文士たち
第9章 由比ヶ浜に海浜院ありき
第10章 古都・鎌倉に遊ぶ、暮らす
あとがき、関連年表、参考文献

筆者としては特に江ノ電小史、藤沢駅と周辺エリアの盛衰、湘南海岸物語、鵠沼などの宅地開発、江の島アイランドストーリー、鎮魂歌であまりにも有名な逗子開成高校ボート水死事故の話、由比ヶ浜海浜院物語、江ノ電唯一のトンネル極楽洞の話(ツルハシで掘削)、戦後すぐ鎌倉文士によって開校した鎌倉大学校→鎌倉アカデミー、鎌倉文庫、いくつものテレビドラマの舞台そして数字で示してみせた観光のあゆみなどが著者の視点も見え隠れしていて興味を引いた。鉄道本にはビジュアル的なものが多いが、コンパクトに活字で読ませる本書には、電車で未知の旅に出るようなある種のワクワク感がある。今度の週末は本を片手に江ノ電乗車といきますか。窓外から見える沿線の景色が少し違って見えるかも。
A5判・177頁、定価本体1800円+税。2018年10月31日、クロスカルチャー出版刊。

追記 FMいわきの番組、「いわきの人、まち、文化」<文学散歩>でこの本が紹介された。2018年12月12日(水曜日)午前9時30分~9時59分。司会は馬場典枝さん、ゲストは鈴木英司氏。筆者はゲストから連絡を受けてインターネットラジオで聴取。録音がうまくできなかったのが残念。ユーチューブにあげてくれると嬉しいのだが・・・。ゲストは歴史や文学に造詣が深いだけに、自分の鎌倉旅行を含めてコンパクトに本の内容を伝えていた。CPCシリーズ、版元と著者紹介、湘南の由来、江戸時代の鎌倉、江ノ電唯一のトンネル、大仏、NHK大河ドラマ「もみの木は残った」、江ノ電のはじまり藤沢、鎌倉文学館、初めは棒を使って医療のための海水浴等々面白おかしく。歴史散歩のガイドブックとして最適と。(2018.12.13 記)

追記 図書新聞(2019年2月9日号)に書評が紹介されたみたい。その記事を読むはこちら→「20190201113018.pdf」

2018/10/09

クロカル超人が行く 219 【北欧最新情報】フィンランド・ヘルシンキ&スウェーデン・ストックホルムとウプサラの旅 余滴

ここからは「フィンランド・ヘルシンキ&スウェーデン・ストックホルムとウプサラの旅」にこぼれ落ちた写真を中心にアトランダムに取り上げてみたい。

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【写真: ①コペンハーゲン空港内にある人魚姫像とアンデルセンの婢 (観光地として有名)②アーランダ空港内にある『ポケットショップ』で購入した文庫本(昨年のノーベル文学賞受賞者カズオ・イシグロの本がベストテン入り)】③スウェーデン国会議事堂 (2018年9月8日の総選挙で左右政党がほぼ拮抗状態。9月下旬、現ロヴェーン首相の信任得られず退陣、混迷を深めるスウェーデン議会)④スルッセンやセーデルマルムへの方向を示す標識(このエリアを歩けたことはある意味で非常に良かった。ノーベル文学賞受賞者のトーマス・トランストロンメル氏の『わが回想』に出てくる重要な地名だからだ) ⑤衛兵交代時間に遭遇(ラッキー!)】

2018/10/02

クロカル超人が行く 219 【北欧最新情報】フィンランド・ヘルシンキ&スウェーデン・ストックホルムとウプサラの旅 35 最終回

コラム「フィンランド・ヘルシンキ&スウェーデン・ストックホルムとウプサラの旅」も今回で最終回。まだまだ書きたいことは山ほどあるがこの辺で一区切りをつけたい。
本で読んだりテレビの旅番組では知ってはいたものの、実際行ってみるのとは大きく異なる。当たり前のことだがこの当たり前のことに気づくことが大事である。旅人はしばし待て、考える旅人よ、国の、街の匂いを嗅ぎ取ったか、胸に手をあてて考えるがいい。あの膨大な羊皮紙の書棚は王様のものだった、貴重書も元を正せば戦利品ともいわれているが、それはともかく、ヘルシンキにしてもストックホルムやウプサラの図書館にしても、それが国立か市立かは問わない、この膨大な本を前にしてただ撮影許可をもらったから写真に収めるだけでは余りにも短絡的で実利すぎる。やはり街の匂いには本の匂いが大いに関係しているのだ。何故なら人間の営みの基本形がここにあるからに他ならない。人はなぜ収集するのか。その問いに向き合いながら、収集したものを整理(修復、保存)し、研究に役立て、市民に開放し知的循環を心地よいものにしていくには図書館人の不断の努力なくしてありえない。私たちはこれらの人々に感謝しなければならない。ウプサラ大学図書館では年間20万冊をデジタル化、電子資料に変換していると言っていたが、果たしてこの試みが人類にとって吉と出るか筆者には分からない。「紙」側の人間の少なからずの抵抗があるのかないのか―。確かにデジタル資料は重たくはないが。そして、この北欧図書館研修・見学ツアーは、短期間でいろんな研修を行って知識や技術を学んだが、それだけでない図書館人との距離を縮めまた、本の匂いを感得する大切さを教えられた旅でもあった。そして、この北欧図書館研修・見学ツアーを企画した人たちや参加者にも感謝したい。筆者は図書館研修・見学はもちろんのことプラスアルファの方にも大分興味をひかれた。例えば、優れた北欧建築、デザインそれに都市発展と政治、移民・難民受け入れ問題と極右政党の台頭、EU離脱問題、教育改革等々。ビデオを再生してみると再発見できて活字とはまた違った楽しみ方ができる。

クングスホルメン島のホテル近くで100年以上続く老舗のレストラン『Restaurang Löwenbrau』に2度ほど入ってビールを嗜んだが、それこそごく平凡な暮らしがそこにはあった。それも街の灯り、匂いの一つだろう。
アーランダ空港のポケットショップで村上春樹著『ノルウェーの森』やジョージ・オーウェル著『1984』のスウェーデン語訳のペーパーバックを買った。カズオ・イシグロの本がベストテン入りしていた。そして、コペンハーゲン空港を飛び立った飛行機から見た洋上風力発電、原発事故を体験した日本でこのような風力発電をもっと増やして環境にやさしい暮らしの実現を願いたい。また、そのすぐ近くにはデンマーク・コペンハーゲンとスウェーデン・マルメを結ぶエーレスンド橋がかかっている。その昔テレビで開通直後の様子をライブで見た。いつかは渡ってみたいとずっと思っている(このコラムでしばしば登場した“相棒”が、このツアー前に実際に電車で渡りマルメ市立図書館を見学してきたと言っていた。いとも簡単にやってのけたのだ。やはり好奇心の塊かつ行動的な人もいるもんだと感心した次第)。
旅はいろいろなことを教えてくれる。地球儀で日本を中心にして世界を見ていることに慣れている私たちだが、その地球儀を少しだけ回して視点を替えて例えば、フィンランドやスウェーデンの方から眺めればまた、違った世界を現出させてくれる、その視点、みえ方こそが大事なのだ。北欧特にヘルシンキ、ストックホルムそれにウプサラが少し身近になったことは言うまでもない。Tack så mycket. Hejdå.

2018/10/01

クロカル超人が行く 219 【北欧最新情報】フィンランド・ヘルシンキ&スウェーデン・ストックホルムとウプサラの旅 34 再びガムラスタンへ

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ガムラスタンへは地下鉄シスタ駅からブルーラインでクングストレドゴーデン駅(ガムラスタンに近い駅)で降り少し歩いて行けた。車内はちょうど金曜夕方のラッシュ時間帯、勤め帰りの年配の女性たち、片手に缶ビールを手に持ち飲んでいた外国人風の若者、若い女性たちそれにビジネスパーソン等で混雑していた。20分ばかりで目的地に着き、王宮近くのノーベル博物館前で1時間近く自由時間となり近くを散策、その後再集合して晩餐会会場へ。会場はドイツ教会近くのイタリアレストラン『Agaton』。入口のメニューを見ていたら雨が降ってきた。変わりやすい北欧の天気の実感だ。メニューは鮭の魚料理、地元のビールで乾杯しながらイタリアンを堪能した。しばらくするとすぐ近くのキッチンから日本語が飛び込んで来た。しかも砕けた日本語である。

「シェフはどこで日本語を習ったの?」と筆者が訊ねると、

「北海道にいるときだよ」

冗談が好きそうな明るいアジア系の男性だ。まさかストックホルムのど真ん中でしかもイタリアンで日本語が聞けるとはビックリぽんや!料理はハム&トマト系、次にメインディッシュの鮭料理最後にティラミスのごくカジュアルな料理だ。鮭は本場とあって美味。しかし、飲物は自腹の地元のビール(小瓶)を3杯も飲んでしまった。金曜日の夜はどこの国でも同じく賑やかだ。で、すでに帰ってしまった現地のガイドさんに教えてもらったラーメン店『Cafe Stierman』をどしゃ降りの雨の中訪ねたがすでに閉まっていた。時間も遅かった。仕方なくずぶ濡れになりながら地下鉄ガムラスタン駅からホテルに帰ったのだ(本当のところは庶民の日常に触れたいと思い老舗のレストランやホテルのバーを2軒ほどハシゴしたのだ)。
ストックホルムでは2年ほど前から日本の寿司やラーメン店が出来て流行っているらしい。しかし、味の保証はない。それはヘルシンキの『かもめ食堂』でも同じだろう。地元の人たちにも受けないとビジネスはやっていけないのだ。先ほどの現地のガイドさんが言っていたが、日本に行ったことがない店主は、ビジネスなどでスウェーデンで生活をしている人たちにアドバイスをもらって日々研鑽を積んでいるのでラーメンの味は良くなっているという。味噌ラーメン一杯、1700円ぐらいらしい。それはニューヨークで食べたMOMOFUKUラーメンとほぼ同じ値段だ。ラーメン好きの筆者としては食べたかった。残念である。今度行ったときにはぜひ試食したい。ついでにアジア料理について書けば、中華料理よりはベトナム料理やタイ料理がイケるらしい。筆者も詳しくは知らなかったのだが、タイはスウェーデンと経済的な結びつきが深く、スウェーデンの農業に従事しているタイ人労働者は多くまた、スウェーデンがタイに投資したり、工業製品ほかを輸出している。タイとの直行便も就航しているという。

さて、次回最終回はホテル近辺にある老舗のレストラン、アーランダ空港内、コペンハーゲン空港から日本向け飛び立った飛行機から見えた、環境にやさしい洋上風力発電Offshore wind powerやコペンハーゲンとマルメを結ぶエーレスンドの話を少し。

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【写真: ①ノーベル博物館 ②地下鉄シスタKista駅 ③イタリアン『Agaton』メニュー ④トマト&ハム ⑤サーモン ⑥ティラミス ⑦地元のビール ⑧ラーメン店『Cafe Tierman』。この店の詳細はこちら→https://www.tripadvisor.jp/Restaurant_Review-g189852-d2189992-Reviews-Cafe_Stiernan-Stockholm.html?m=19905

追記 今日2018年のノーベル生理学賞に京都大特別教授の本庶佑氏に授与すると発表された。NHKのインタビューで彼は教科書を疑えと言っていたことが印象的(2018.10.1 記)。

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